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古賀茂明「日本の英語力はベトナムより下という惨状」

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/10/29 07:00
古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など

 日本人の英語力の低さはかなり前から問題視されてきた。日本の国際競争力の向上を妨げる要因としても頻繁に話題に上る。

 最近も気になる報道(日本経済新聞)があった。

 日本の法令で英訳されているのは全体のわずか1割で、最近の法令でも英訳公開まで平均3年以上かかっているという。このペースでは、すべての法律の英訳が終わるには気が遠くなるような時間が必要だ。しかも、「2020年度」にも海外に職員を派遣して、迅速な翻訳技術やデータベースの仕組みの習得にこれから乗り出すという「スピード感」には呆れてしまった。

 お隣韓国では9割以上が英訳済みで、毎年3割改正される改正法も成立から3カ月以内に翻訳される。19年3月からは中国語への翻訳も始まった。日本は周回遅れ、それも2周遅れだ。中国でも多くの法律が、成立から2週間以内に英訳されるという。

 日本への海外からの投資を増やしたいと安倍総理は言うが、どんな法律があるのかを知ることさえ困難という現状は、外国企業を排除しようとしているようなものだ。

 しかし、実は、こうしたお役所仕事のおかげで、能力のない経団連企業の経営者たちが外資から守られているという隠れた効果があることに気づいている人は少ないのではないか。

 日本人の英語力のなさは際立っている。国際教育企業EFによる英語能力指数2018年版では、英語を母国語としない88カ国および地域中49位。5段階のうち、先進国で唯一下から2番目の「低い」グループに分類される。アジアでも、ベトナムより下の11位だ。さらに、外国人が驚くのは、6年間も英語教育を受けてなおかつ話せないという事実。もちろん、英語教育がお粗末だからというのは自明だ。

 これについて、経団連企業のお偉方は、ことあるごとに文部科学省の英語教育の失敗を非難してきた。しかし、私から見ると、経団連企業は文科省のおかげで生き延びているように見える。グローバリゼーションの波は労働市場にも及んでいる。世界の先端企業は、優秀な人材を集めるために、国境の壁を超えてリクルート活動を行い、IT系の工学部新卒に1千万円超の年収を提示する企業はざらだ。

 一方、日本では一流大学の新卒が一斉に経団連企業に就職する。労働条件を海外の大企業と比べれば、薄給なうえに残業も多く、転勤もあるし、セクハラ・パワハラも日常茶飯事。ブラック企業と言っても良いくらいだ。しかも、多くの企業は、将来の成長の源となる新規事業も見つけられず、史上最高益を出しても無駄金をため込むだけ。普通なら若者からそっぽを向かれても仕方ない。

 それでも、ある程度優秀な学生を集められるのは、日本の若者が英語を話せないからだ。もし英語に不自由しなければ、優秀な若者は経団連企業など見向きもせず、海外に大量流出してしまうだろう。

 法律の英訳の遅れも英語教育の稚拙さも、意図されたものではない。

 官僚の能力不足と怠慢ゆえに起きた政策の大失敗であるが、そのおかげで、やはり実力のない経団連企業の無能な経営者も生き残ることができる。

 かくして、日本の経済は、ガラパゴス化しながらじり貧の道を歩んでいるのだ。

 このままでは、経団連企業と一体化した「沈みゆく官僚国家日本」の再浮上を期待するのは難しそうだ。

※週刊朝日  2019年11月8日号

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