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老後資金どうしよう…50歳以降に迎える「収入ダウンの4つの崖」

ZUU Online のロゴ ZUU Online 2020/12/12 20:30
老後資金どうしよう…50歳以降に迎える「収入ダウンの4つの崖」(画像=THE21オンライン) © 老後資金捻出,水上克朗 老後資金どうしよう…50歳以降に迎える「収入ダウンの4つの崖」(画像=THE21オンライン)

企業にもよるが、50代に入ると、定年まであと10年を切ってくる人が多いだろう。気になってくるのが、老後資金だ。どう対策すればいいのかを、老後資金捻出のプロフェッショナル・水上克朗氏に教えてもらった。(取材・構成:長谷川敦)

※本稿は、雑誌『THE21』2020年10月号より一部抜粋・編集したものです。

■50代半ばから、収入は下がり始める

一般に会社員の収入は、50代前半をピークに、その後は下がっていきます。ところが、「これから下がっていくんだろうな」ということは何となく意識していたとしても、具体的に、いつ、どれぐらい下がるかを把握している人はほとんどいません。

これでは老後の資金計画はままなりません。私はいつも、50代以降の収入には「4つの崖」があるという話をしています。まず1つ目の崖は、55歳頃に訪れる「役職定年の崖」です。

人事院の調査によれば、500人以上の企業の約3割が役職定年を導入しています。役職定年によって収入がいくら下がるかは、企業やその時点での職位によって大きく違ってきますが、だいたい2~3割下がると考えていいでしょう。

読者の皆さんの中には、「自分が勤めている会社には役職定年がないから大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、役職定年の制度がないからといって、安心していいわけではありません。

今50代前半の会社員が入社したのは、平成初めのバブル期です。そのため、この世代の社員数が他の世代の社員数の倍以上に達している企業も少なくありません。

高収入の50代前半の社員が数多く在籍していることは、企業にとって大きな負担です。そこで現在、多くの企業が、この年代層の社員をターゲットにした給与体系の見直しを行なおうとしています。

難しいのは、多くの場合、人事評価制度の内容を細かく改訂しながら給与体系の見直しを行なっているために、「勤務年数が何年で、どの職位にある人が、どんな評価をされたときに、どれぐらい給料が下がるのか」がわかりにくいということです。

計算が複雑なので、自分の給料がこれからどうなりそうかを把握できている人が少ないのです。「気がつけば収入が下がっていた」ということになりかねません。

自分が勤めている会社に役職定年がないからといって、55歳前後に訪れる収入ダウンの1つ目の崖をすり抜けられるかというと、そんなことはないと考えておくべきでしょう。

■再雇用後の賃金は、定年前の60%以下!?

収入ダウンの2つ目の崖は、60歳のときに訪れる「定年の崖」です。定年後の選択肢としては、(1)継続雇用してもらう(2)他の会社に転職する(3)独立・起業する(4)引退して老後を過ごすの4つが考えられます。

退職金が十分にもらえるのであれば、「引退して老後を過ごす」という選択肢もアリでしょう。事実、昔はそういう人がたくさんいました。しかし、厚生労働省の調査によると、2018年に大卒の定年退職者に企業が支払った退職金の平均額は1788万円。

これは、約20年前の1997年と比べると、1080万円も減少しています。「退職金があれば、老後は何とかなる」という時代ではなくなっており、今では多くの人が定年退職後も働くことを選択しています。

高齢者雇用安定法が施行されたことによって、本人が希望すれば、企業は65歳まで社員を雇用することが義務づけられています。

企業によっては定年を65歳にしたり、定年制を廃止したりするところも出てきていますが、多くの企業が導入しているのは、60歳定年制は維持したまま、希望する社員に対しては再雇用を行なうという形です。

現状では、60歳で定年を迎えた人の8割以上が、会社と再雇用契約を結び、継続して働くことを選択しています。確かに、継続雇用であれば慣れ親しんできた職場で働き続けることができるわけですから、精神的にはかなりラクです。

ただし、収入が落ちることは覚悟しなくてはいけません。労働政策研究・研修機構の調査によれば、継続雇用を選択した場合、約4割の人が、定年前と比べて賃金が60%以下になるということです。また、同機構の別の調査によれば、平均年収はフルタイムで働いたとしても374.7万円です。

■「健康」でさえあれば何とかなることは多い!

収入ダウンの3つ目の崖は、「年金生活の崖」です。再雇用が65歳で終了すると、そこから年金生活がスタートします。もし新たな稼ぎ口を見つけなければ、収入源は年金のみになります。

厚生年金の受給者の平均受給額は、男性の場合、基礎年金と合わせて年間約200万円。女性は、専業主婦の期間が長い場合は80万円前後。夫と共働きで働いてきて、厚生年金に入っている場合は、120万~180万円前後というのが一般的です。

ただし、この受給額をずっと維持できるわけではありません。収入ダウンの4つ目の崖が待ち受けているからです。その崖とは、「配偶者死別の崖」です。

例えば、現役時代に平均年収500万円だった夫と専業主婦の妻の家庭で、夫が先に亡くなったとします。すると、夫が受け取っていた年間約188万円の年金が支給されなくなります。

遺された妻には、遺族年金として年間約83万円が支給されるとはいうものの、夫が存命中にその世帯が受け取っていた支給額と比べると、約105万円もの収入減になります。

ここまでが、会社員が50代以降に経験することになる収入ダウンの4つの崖です。実は、これ以外にも、「見えざる2つの崖」があります。「病気の崖」と「介護の崖」です。

歳を取ってからも、働き続けることで収入を得ようと考えていたとしても、長期療養を要する病気に罹ったり、介護が必要な状態になったりすると、収入の確保が困難になります。

逆に、健康でさえあれば、老後の生活は何とかなるものです。よく「老後資金は2000万円必要だ」と言われますが、定年退職後からでも2000万円を確実に確保する方法があります。

それは時給1013円(東京都の最低賃金)の仕事を、夫婦2人で1日4時間、週5日、10年間続けることです。健康であれば、これができます。そういう意味では、健康を失うことが収入ダウンの一番のリスクだと言えます。

■予想外にかさみがちな出費には、上限額を設定

では支出面で、50代以降に新たに増えるものとしては、どのようなものがあるのでしょうか。大きいのは、やはり介護費と医療費です。生命保険文化センターが介護経験者を対象に調査した結果によると、一人当たりの介護費用は約500万円です。

介護が育児と違うのは、いつまで続くかがわからないことです。1年未満で終わることもあれば、10年以上続くこともあり、当然、必要となる費用も、介護期間によって大きく違ってきます。

ですからシミュレーションをするのが非常に難しいのですが、少なくとも、平均とされる500万円程度は準備しておきたいところです。また、介護費用をシミュレーションする際には、親の介護費と、自分(自分たち夫婦)の老後の介護費の両方を考える必要があります。

できれば、親の介護費については、親自身の資産の範囲内で賄いたいものです。そのためには、親の理解を得たうえで、親の資産状況をしっかりと聞いておくことが大切になります。

もし自分たちがある程度負担しなくてはいけない場合は、兄弟姉妹間でよく話し合い、お金だけではなく、実際の介護についても、誰がどれだけ負担するかを明確にしたほうがいいでしょう。

そうしておかないと、相続でもめる原因にもなります。一方、医療費については、厚生労働省によれば、65~89歳までの自己負担額の平均は191.5万円となっています。一人当たり、だいたい200万円と考えればいいでしょう。

医療費と介護費以外で、50代以降、予想以上にかさみがちな出費としては、家のリフォーム代やクルマの買い替え費用、子供の教育費、子供の結婚資金援助、子供のマンションの購入費の援助などが挙げられます。

これらの出費は、上限枠を設けておかないと、どんどん財布から出ていくことになります。親が子供のマンションの購入費を援助するのは、「今援助しておけば、老後になったときに、今度は子供が自分たちの面倒を見てくれるのではないか」という期待があるからかもしれません。

でも、子供は子供で、自分たちのことで精いっぱいなもの。子供に過剰な期待をせず、自分たちの生活を守ることを最優先に考えたうえで、「何にどれぐらい使うか」をあらかじめ決めておくことが大切です。

■50代以降の収入と支出の収支を算出してみよう

生命保険文化センターの調査によれば、夫婦二人の老後の生活費は、最低限必要な生活費で暮らす場合は月22万円、ゆとりのある生活がしたければ月36万円が必要になるということです。

これ以外に、ここまでお話ししてきたように、介護費や医療費を準備しておくことや、家のリフォーム代などの出費にも備えておく必要があります。こうした月々の生活費と、それ以外に必要になる出費を合わせれば、老後にいくらお金が必要になるか、おおよその額を算出することができるはずです。

一方、これからの人生で収入がいくら見込めるかについても、前述した収入ダウンの「4つの崖」を経て、今後、収入がどう変化していくかを予測することで、おおよその額が掴めるはずです。

役職定年や再雇用時に収入がどう変わるかや、退職金がいくらになりそうかは、自分が勤めている会社に問い合わせれば教えてもらえます。また、年金の支給額については、日本年金機構から誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」に見込額が記載されています。

ただし、この見込額は、50歳未満の人については、これまで払い込んできた金額で、いくら受け取れるかを算出したものなので、あまり参考になりません。50歳以上の人については、60歳まで同じ給与水準のまま働き続けると仮定したうえで、将来受け取れる見込額が記載されています。

こうして50代以降の大まかな収入と支出の総額、さらには現在の資産額(貯金など)と負債額(住宅ローンなど)が掴めれば、「自分たちには、老後を安心して暮らせるだけのお金の余裕はありそうか」「余裕がないとすれば、いくらぐらい足りないか」が見えてきます。

もし足りないことがわかったとしたら、今のうちから何らかの対策を講じておく必要があります。株式や不動産投資などの勉強をしたうえで、資産運用でお金を増やしていくというやり方もあるでしょう。

定年退職後や再雇用の終了後も働き続けることを選択するのなら、組織に頼らなくてもお金を稼げるだけの強みや特技を作っておくことが大切になります。

水上克朗(ファイナンシャルプランナー)

(『THE21オンライン』2020年10月14日 公開)

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