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貿易戦争の波紋、中国で米系自動車メーカーが涙目に

JBpress のロゴ JBpress 2018/11/08 06:00 花園 祐

(花園 佑:中国在住ジャーナリスト)

 今年(2018年)の上半期(1~6月)まで、中国の自動車市場は安定成長していました。ところが、9月における中国の自動車販売台数は239.4万台で前年同期比11.6%減となりました。乗用車販売台数もここ3カ月連続で前年割れが続いています。9月は前年同期比12%減の206万台と落ち込み、単月としては2012年以来7年ぶりとなる下落幅となりました(いずれも中国汽車工業協会のデータより)。

 このように中国の自動車市場は突如変調をきたし、業界が騒然としています。その理由として様々な要因が挙げられていますが、今のところ決定的な要因は特定できていません。

 今回は中国の自動車市場に何が起きているのかを報告したいと思います。

「ブラックセプテンバー」の衝撃

 下のグラフは今年1~9月における中国の乗用車販売台数をまとめたグラフです。

2018年1~9月の中国における乗用車販売台数推移 © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 2018年1~9月の中国における乗用車販売台数推移

 今年上半期においては、春節(旧正月)の影響を受け営業日数が前年に比べ少なかった2月を除き、毎月、プラス成長を維持していました。しかし7月以降は3カ月間連続でマイナス成長が続いています。特に9月は中国で「金九銀十」(金の9月、銀の10月)と称されるほど消費が活況となる月にもかかわらず12%減という大幅な落ち込みぶりで、市場関係者に大きな衝撃を与えました。

 車形別販売台数をみても、9月はどの車形も落ち込んでいます(下の表)。特にこれまで2桁超の高い成長を維持し、消費をけん引してきたスポーツタイプ多目的車(SUV)も販売台数が減少する結果となりました。こうした結果を受け、市場では「今年は『金九』ならぬ『黒九』(ブラックセプテンバー)だった」という声も聞かれるほどです。

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急減した原因は今なお不明

 一体なぜ中国自動車市場は今年第3四半期に冷え込んだのでしょうか。

 多くの現地メディアやアナリストは、小排気量車(1.6リッター以下)の購入税減免政策が今年になって終了したことを指摘しています。中国政府は、消費拡大を目的に、小排気量車の購入税減免政策を施行してきました。

 しかしこの政策は今年1月1日時点で廃止となっています。それに対し、前述の通り上半期まではプラス成長が続きました。前年比マイナスに転じたのは7月以降です。つまり、落ち込みの影響要因としては時期的にずれており、販売台数急減の主原因としては見ることはできません。

 このほかには、長らく中国自動車市場をリードしてきたSUV人気の低迷を理由とする声も聞かれます。しかし、こちらもすでに見た通り、9月はSUVに限らずどの車形も販売台数が減少しています。

 このように、第3四半期に入ってからなぜ販売台数が急減したのかについて、中国国内でも原因を特定しあぐねているのが現状です。

米中貿易摩擦が米国系メーカーを直撃

 続いてメーカー別販売台数を見ていきましょう(下の表)。

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 1~9月の販売台数順位は上半期の累計と比べて大きな変動はありません。上位は依然として独フォルクス・ワーゲン(VW)系列の上汽大衆と一汽大衆が1位、2位を占め、米ゼネラルモーターズ(GM)系列の上汽通用が3位と続いています。

 日系では日産系列の東風日産が最も上位の6位につけ、続いて一汽豊田(9位)、広汽本田(11位)、東風本田(13位)、広汽豊田(14位)という順番になっています。

 注目すべきは、このところ加熱している米中貿易摩擦が米国系メーカーに与える影響です。直近の9月単月で見ると、GM系列の上汽通用が前年同月比18.4%減、上汽通用五菱が同24.4%減と急減しています。これは、対米感情悪化の影響を受けたとみられています。

 また、上の表には入っていないものの、米フォード系列は、長安フォードの9月販売台数が同55%減、輸入車を含めたフォードブランドの中国販売台数が同43%減とGM以上に惨澹たる結果となりました。

 ただし、中国国内のメディアは、フォードが落ち込んでいるのは、近年モデルチェンジが少ない上にリコールが相次いでいるなど単純に競争力の低下が原因であって、米中貿易摩擦だけの影響ではないと指摘しています。確かにこのところ街中でフォード車を見かける機会はめっきり減っているように感じられます。実際に、フォード車の人気は以前よりもかなり低下しているようです。

逆風下で日系メーカーが躍進

 一方、日系メーカーは第3四半期に比較的好調を維持しました。

 9月単月をみると、日系シェアトップである日産系列の東風日産が前年同月比0.4%減と微減で持ちこたえ、ホンダ系列の東風本田(同8.3%減)、広汽本田(同3.6%減)も、市場全体に比べると低い下落幅に留まっています。

 トヨタ系列に至っては、一汽豊田が同0.6%増、広汽豊田に至っては36.5%増と大幅なプラス成長を達成してみせました。

 この絶好調の背景には、昨年末にモデルチェンジした看板車種「カムリ」が好調を維持していることに加え、今年7月に輸入車関税が引き下げられたことが大きく貢献したと指摘されています。実際に、中国では輸入販売しか行っていない「レクサス」ブランドの9月販売台数は同36%増の1.6万台と急増しており、トヨタ系は関税引き下げの恩恵を最も受けるメーカーとなりました。

 結果的に中国乗用車市場の1~9月における国別シェアは、米国系が前年同期比1.5ポイント減の10.7%に落ち込んだのに対し、日系は同0.7ポイント増の18.5%のシェアとなりました(ドイツ系も1.1ポイント増加し、シェアは21.7%となりました)。

 日系自動車部品メーカー関係者からは、「米国系メーカーのシェアは今後も落ち込むだろう。日系にとっては追い風が吹いている」との見方が出ています。

中国乗用車市場の国別シェア © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 中国乗用車市場の国別シェア

日産「シルフィ」が2位を維持

 最後に、第3四半期のセダン販売台数の統計を見てみましょう。

© Japan Business Press Co., Ltd. 提供

 9月単月を見ると、日系車は東風日産の「シルフィ」が2位、一汽豊田の「カローラ」が6位にそれぞれつけています。「シルフィ」は年間を通じて好調を維持しています。フォルクス・ワーゲン系列の上汽大衆の「ラヴィーダ」とともに3位以下を突き放し、年間2位の地位はほぼ固いでしょう。

 米中貿易摩擦の影響が懸念され、今期に入ってから落ち込みを見せた中国自動車市場ですが、このパラダイムの中で日系メーカーはシェアを伸ばせるのか? 今後の注目点と言ってよいでしょう。

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