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「N国党」の新会派名は「みんなの党」、彼らは一体何をしたいのか

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2019/08/07 06:00 室伏謙一
第199臨時国会が召集され、初登院する「NHKから国民を守る党」の立花孝志参院議員=1日、国会前 Photo:JIJI © Diamond, Inc 提供 第199臨時国会が召集され、初登院する「NHKから国民を守る党」の立花孝志参院議員=1日、国会前 Photo:JIJI

今回の参院選で1議席を獲得して話題となった「NHKから国民を守る党」、通称N国党の立花孝志代表は、元みんなの党代表で無所属の渡辺喜美参院議員とともに、参院で統一会派「みんなの党」を結成した。彼らはどういう政策を行うつもりなのだろう。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)

「NHKから国民を守る党」が

成功した作戦

「NHKから国民を守る党」、通称N国党、これまでも「NHKをぶっ壊す!」をスローガンに、国政選挙、地方選挙と候補者を立て、最近では地方選挙で首都圏を中心に29もの議席を獲得、ついに先の参院選において比例区で98万7885票を得て参議院に1議席を獲得するに至った。

「なぜこの党が?」といった疑問の声も聞こえるが、良くも悪くも立花孝志代表をはじめ、N国党関係者の地道な活動の結果と、それに基づいて練られた作戦の結果であることは間違いない(今回の参院選の政見放送、N国党のものは、今や港区議となったマック赤坂氏にならったのか、お笑いの域に達するような内容だったが、それが功を奏したのかYouTubeで拡散され、相当再生されていたようである)。

 その作戦とは、選挙区、特に候補者数の少ない選挙区に公認候補をできる限り立てて、選挙区での得票率で2%以上を確保しようというもの。

 政党助成法によれば、政党交付金の交付の対象となる政党は、(1)国会議員5人以上を有する政治団体、(2)国会議員を有し、かつ、前回の衆議院議員総選挙の小選挙区選挙若しくは比例代表選挙又は前回若しくは前々回の参議院議員通常選挙の選挙区選挙若しくは比例代表選挙で得票率が2%以上の政治団体、のいずれかに該当するものとされている。

 今回の選挙では比例区での得票率は1.97%と2%にわずかに届かなかったものの、全国を通じた選挙区での得票率は3.02%となり、作戦は見事に成功したわけである。その結果、政党助成法に基づく政党要件が獲得でき、政党交付金の交付を受けることができるようになった。

N国党の

肝心要の政策はどうなのか

 N国党の資金源については、不透明であるとか、外国勢力から資金提供を受けているのではないかといった話がまことしやかに流れているようであるが、彼らの選挙資金は借入金を中心に調達されているようであり、その明細もしっかりと公開されているようだ。ただし、借入金ということは返済をしなければならない。

 どうやらその返済に政党交付金を充てようという話のようで、こうなってくると、N国党は何のために選挙に出て、当選したのか訳が分からなくなってくる。そうしたことを踏まえて、N国党のやっていることは、「政党交付金商法だ」と揶揄(やゆ)する声まで聞こえてくる始末。

 だったら、肝心要の政策はどうなのか、そんなことは言わせないほどにしっかりしているのかと言うと、NHK問題というシングルイシューについて問題提起はしているものの、具体的な政策といえるものは、現段階ではNHKスクランブル放送の実現を目指すことぐらいしか見当たらない。

「受信料を払わなくていいようにすること」を目指している点についても、N国党のサイトには記載されているが、具体的にどのように実現するのか、そもそも受信料制度自体をどうするのか、公共放送と民放という放送の二元体制をどうするのかといった根本的な論点については触れられていない。

 放送政策を党の政策の「一丁目一番地」として掲げて活動する政党や政治勢力があること自体は否定されるべきものではないし、その主張の内容が個別具体的であるのであればなおさらである。しかし、N国党についてはそれがないか、少なくとも不明確である。

 また、N国党公認で今回の参院選で当選したのは立花孝志代表のみである。議員1人では会派を組むこともできず、国会活動は制限される(それでも質問主意書を活用して積極的な活動を始めていた山本太郎元参院議員のような例もあるが…。会派を組むことの意味、メリットについては、維新の党と民主党の統一会派を例に説明した拙稿「統一会派の先に本当に新党があるのか?―会派と政党の違いの整理から見てみると」を参照されたい)。

 そこで、衆参の無所属議員にN国党への入党や会派への参加を呼びかけることになったのはご承知の通り。

N国党は

別物にすり替わってしまった

 とにもかくにも“手当たり次第にとった”というところだったのだろう。結果的に入党してきたのは日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員、そして入党は断ったものの会派を組むことになったのは元みんなの党代表で、同じく日本維新の会を除名になった渡辺喜美参院議員。それでもこれで衆参両院に足場を築くことができたとともに、参院での国会活動が可能となったわけである。

 しかし、N国党の立花孝志代表と渡辺喜美参院議員による会派結成の記者会見から明らかとなったのは、「これから何をしたいのか分からない」「何をするのか具体的なことを考えていない」という同党の姿であった。

 しかも会派名は「みんなの党」。行き場を失っている渡辺喜美参院議員、3年後の改選を考えればN国党からの打診はまさに「渡りに船」だっただろう。

 つまりはN国党の方が立場上は優位なはずなのであるが、会派名とはいえ、彼らの哲学というか信条である「NHKから国民を守る」という名称をあっさりと捨ててしまった。

 むろん、渡辺喜美参院議員から「みんなの党という名称を」と強く要望されたのかもしれない。しかし、だからといって「みんなの党」では、「NHKから国民を守る」になんとなくでも期待をして投票した有権者を裏切ることになりはしないか。

 政策的にも同様で、「みんなの党」のアジェンダをそのまま取り入れるようである。「みんなの党」のアジェンダにはNHK問題は触れられていないし、放送政策についても主要政策には挙げられていない。現に渡辺喜美参院議員は記者会見の場で「NHK改革について深く考えたことはない」と明言している。これでは、院内会派として見る限り、N国党は別物にすり替わってしまったと言ってしまっても過言ではあるまい。

 しかも渡辺喜美参院議員が会派の代表であり、記者会見では「会派結成を第一歩としてみんなの党の復活を成し遂げたい」とまで発言している。ここまでくるともうN国党は、渡辺喜美参院議員の言うところの「みんなの党」そのものである(あえて「~言うところの」としたのは、今回の会派結成を巡る一連の動きを見た元みんなの党所属議員や関係者からは、「みんなの党の名称を使ってほしくない」「もう(自分自身は)元みんなの党だとは言いたくない」といった見解が聞かれたことによる。彼らの心中を察するに余りある)。

言ってみれば

「野合」ということ

 こうしたことから明らかになったのは、N国党は「NHKをぶっ壊す!」と叫んでみたはものの、これからしたいことが特にないということだろう。

 いや、NHK問題以外、これまで何も考えてこなかったので、「みんなの党」のアジェンダを取り入れつつ、関連政策も具体化、精緻化していくというのならまだ話は分かる。

 しかし、新会派の運営、「党議拘束はかけず、それぞれの立場で意見を言っていく」とのことであるから、政策や思想信条はそっちのけで、はっきり言ってどうでもよく、「とりあえず会派が組めればいい」と言っているに等しい。要は会派のための会派、言ってみれば「野合」ということである。

「みんなの党」、なんと予算委員会、財務金融委員会および消費者特別委員会の委員となった。本格的な論戦は秋に予定されている臨時国会からである。予算委員会と財務金融委員会で主に質疑に立つのは、渡辺喜美参院議員だろう。そして、当初はそれでなんとなく会派は回っていくのだろう。

 しかし、国会での「NHKをぶっ壊す!」を期待していた有権者からの違和感や不満の声が増えていけば、立花孝志代表も質疑の機会をより多く確保するように動かざるをえなくなる。とはいえ、個別の法案についての知見のない立花孝志代表には荷が重すぎるように思われる。

 そうなると、それを奇貨として渡辺喜美参院議員は自分の活躍の機会をより増やすようになり、ますます「みんなの党」色というより渡辺喜美色が強くなって、有権者の離反を招きかねない。

 そうなれば、もうN国党は存在しなくなったに等しい。

 N国党の地方議員の動きにもよるが、もし本当に「NHKから国民を守る」を信条にしているのであれば、「みんなの党」から「NHKから国民を守る」を守る動きが強くなり、最終的には分裂ということにもなりかねない。いや、その可能性が高いと考えた方がいいだろう。

 立花孝志代表は、本当に「NHKをぶっ壊」したい、「NHKから国民を守」りたいのであれば、早々にN国党としての放送関連政策を検討し取りまとめ、公表すべきであるのだが、これまでの動きを見る限りにおいては、望み薄か。

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