古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

すれ違いざまにビンタ、高卒と同時に捨てられ「虐待サバイバー」になった青年

週刊女性PRIME のロゴ 週刊女性PRIME 2019/01/07 21:00 週刊女性PRIME [シュージョプライム]
こうきさんが描く自分の内面。憎しみが爆発しそうになることも © 週刊女性PRIME こうきさんが描く自分の内面。憎しみが爆発しそうになることも

 イラストレーターのこうきさん(25)も、母親に筆舌に尽くしがたい虐待を受けた過去を持つ。現在はクラウドファンディングで集まった資金で絵本を出すなど、「小さいころから好きでした」という物語を作り出す世界に自分の居場所を確保できているが、

「嫌い、あんな最低な人」

 と今も母親(52)への嫌悪感がわだかまる。

虐待の“近所バレ”を気にする母

「僕の中には消化できていない怒りや憎しみのパワーが常にあって、それを抑えられているのは、僕を応援してくれた人を裏切っちゃいけない、悲しませてはいけないという思いがあるからです」

 こうきさんは5年前から、東京・新宿のバー「A Day In The Life」で働いている。作家の伏見憲明さんが経営する店で、裏切れない人々とはここで出会った。

「専門学校へ入学する準備をするためレストランで働いていたんですが、そこでもいじめられていました。居場所がなくて……伏見さんの店に飛び込みました。

 僕に大学進学をすすめてくださったり、僕が胃腸炎になったときに伏見さんが病院に付き添ってくださったり、父親ってこんな感じなのかなと思いました。店にはマスコミの人たちも多く来るのでイラストの仕事をくださったり、僕のことを面白がってくれたり」

 そこで、こうきさんは自身の虐待経験をポツリポツリとしゃべるようになったという。

「幼稚園のころから、とにかく母は僕を怒鳴りつけましたね。家の外に出されていたんですが、虐待の“近所バレ”を気にしたのか、押し入れに閉じ込められるようになりました」

 だがそこは、こうきさんをむしろ安堵させたという。

「暗くて怖かったけど、ぶたれないですむ安心感もありました」

高校卒業と同時に追放

 家族は、母親(52)、再婚相手の義父(50代)と義姉(29)と義弟(21)。こうきさんは物心ついたときから近くに住む祖母の家で暮らしていた。小学校入学と同時に4人の暮らしが始まったが、

「地獄でした。すれ違いざまにビンタ。タバコの火を背中に押しつけられる、蹴られるが、日常でした。父親は基本的に僕とは口をききませんし、目も合わせません。僕をいないものとして無視します」

 母親は義弟を可愛がり、こうきさんをあからさまに差別した。

 義弟に肩をもまれて喜んでいる母に同じようにしようとすると、「触らないで!」。義弟が食べ残したものは“しょうがないわね”と食べる母が、僕が残すと、“なに残してんの?”と不機嫌に捨てる。

「僕の唯一の友達」というセキセイインコのピピを、当時4、5歳だった義弟が踏みつぶして死なせてしまった際も、母親は義弟をかばった。今でもこうきさんが「許せない」と憤る出来事だ。

「終始、母は汚いものを見るような感じで僕と接しました。笑顔を向けられたこともない、手を握ったことも1度もない」

 小学校3年から6年まで、こうきさんは、祖母の家に預けられる。中学生になると義父が購入した一軒家で暮らすようになるが……。

「僕の部屋は、動物好きの母が飼っていたうさぎやモルモット、うずらがいる動物部屋。すごく臭くて、学校では“おまえ臭い”といじめられました。母からは言葉の暴力、僕のメンタルを傷つける発言をいっぱいされました」

 高校時代には、母に言われるままホームセンターでアルバイトを始め、手取り月給約3万円の半分を搾取されたという。高校の卒業式の日、帰宅すると、こうきさんの荷物がすべて捨てられていた。「ひとりで生きていけ」と母親に追放されたという。

「自分なんてどうなったっていいんだ、みたいな気持ちになったんですよね」

 という自暴自棄の先に光明となったのが、前出・伏見さんとの出会いだったという。

 人との出会いで救われ、虐待サバイバーとして自分を取り戻しているが、昨年3月、東京・目黒で起こった虐待事件の被害者の5歳の女の子は、自分を助けてくれる誰かに出会う 年まで生き延びることができず、命を落とした。

 真冬のベランダに放置されたり、食事も満足に与えられず、「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」とひらがなで書いた反省文を残し、義父と母に命を奪われたのだ。

 '18年上半期(1月~6月)、全国の警察は、3万7113人の18歳未満の子を虐待のおそれがあるとして児童相談所に通告した。生命の危険があるとして警察が緊急で保護した子どもは2127人。過去7 年の調査で初めて2000人を超えた。

 どこかで救いの手を差しのべる誰かと出会える希望を捨てずに、彼らが虐待サバイバーになることを願う。

週刊女性PRIMEの関連リンク

image beaconimage beaconimage beacon