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奇妙できな臭い関西生コンへの弾圧事件。労働問題なのにマル暴が前面に出ることの意味とは

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2020/02/01 08:31 ハーバー・ビジネス・オンライン
提供:全日本建設運輸連帯労働組合 © HARBOR BUSINESS Online 提供 提供:全日本建設運輸連帯労働組合

 述べ89人が逮捕され、武健一委員長、湯川裕司副委員長は2年続けて拘置所での年越しという事態になっている関西生コン(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)への弾圧事件。

 本サイトを含めメディアでも報じられている事件だが、なぜここまで関西生コンが狙われているのか。マル暴までも捜査に加わり、まるで「反社会的勢力」のように労働組合とその運動が取り上げられる理由はなにか。全国コミュニティ・ユニオン連合会(JCUF・全国ユニオン)会長、東京管理職ユニオン執行委員長で「中高年社員があぶない」(小学館101新書)などの著書がある鈴木剛氏に話を聞いた。

ストライキやコンプライアンス活動への弾圧

 関西生コンの組合員に対する今回の一連の逮捕劇は、2018年7月に大和ハウス工業の子会社であるゼネコン・フジタによる倉庫建設工事をめぐり、湖東生コン協同組合から生コンクリートを購入するように申し入れたことが恐喝未遂とされたことに端を発する。このとき捜査に当たった滋賀県警の組織犯罪対策課は、協同組合に加入する業者の理事までをも逮捕した。さらには関西生コンの組合員によるコンプライアンス活動(法令順守を申し入れる活動)をもまた恐喝未遂としたのである。

 また、セメント・生コン輸送の運賃引き上げを求めて近畿一帯で行われた2017年12月のストライキで、組合員が大阪府警に威力業務妨害容疑で逮捕されるなど、18件の逮捕事件が起こっている。京都府の加茂生コン事件では、継続して働いていた日雇いの運転手の正社員化を求めたことが強要未遂、恐喝未遂に当たるとして、組合役員、組合員ら5人、生コン業者団体の理事長ら2名が逮捕された。この事件では昨年12月に大阪府労働委員会が会社側の不当労働行為(団交を拒否したことなど)を認め、組合の勝利命令を下している。

捜査に乗り出すマル暴

 通常、労働組合は公安警察の担当だ。しかし今回の一連の事件では、京都・滋賀などでは暴力団を取り締まるマル暴(組織犯罪対策課)が捜査に当たっている。マル暴は、公安警察以上に労働三権についての基本的な遵法意識がない。

 労働関係の事件でマル暴が前面に出てくるというのは「あまり聞いたことがない」と鈴木剛氏は言う。なぜ今回はマル暴が捜査に当たっているのか。

「『ワシらは公安と違って甘くないからな』という発言は滋賀県警のマル暴によるものですが、彼らはまた、捜査の時点で『本庁の指示』といった趣旨の発言をしています。要するに、一府県の警察本部の意思を超え、警察庁の意思が働いているのではと考えられます」

 

生コン業界の労働者と中小企業を組織化

 なぜ執拗に関西生コンが狙われたのか。80年代には「関西生コン型の運動には箱根の山を越えさせない」と日経連会長などを務めた大槻文平氏に言わせたともされる関西生コンだが、この労組がなぜここまで警察に狙われることになったのだろうか。

「事件を見る上で抑えておいたほうが良い視点として、関西生コンが持つ独特といえば独特の性格があります。日本で一般的な企業別の組合とはかなり形が違っていて、ヨーロッパ型の労働組合として、スト権を背景に、生コン業界の労働者を企業の枠をこえて横断的に組織すると同時に、また労働者だけでなく、中小業者の協同組合への組織化を促進し、提携しています。

 この労働運動で特徴的なのは生コンの価格決定権の問題です。ゼネコンや大手セメントメーカーから価格決定権を取り戻すことに成功しているので、労働者の所得も保証されますし、中小業者の経営も安定することになる。実際、関西生コン型の運動が成立している大阪府は、生コン価格が日本一高く(1リューベあたり1万8000円前後、東京や名古屋は1万2000円前後)、これは運動の成果といってよいでしょう。関西生コンが作り上げたこの構図を崩したい、というのが事件の背景にあるのでしょう」(鈴木氏)

全湾港も狙われる危険が

 他にもマル暴が動いて弾圧されかねない組合はあるのだろうか。

「関西生コン型の事件化を警戒しているのは例えば、全港湾(全日本港湾労働組合)などがあります。日本全国の港湾産業、またその関連事業の労働者約1万名で組織される労組なのですが、全国単一組織という形をとっています」

 単一組織である全港湾は上部団体の全国港湾とともに昨年4月にも48時間のストライキを行うなどしているが、これに対して業者側がどう言っているのかが重要であるという。

「産別最賃協定(産業で統一された最低賃金をめぐる労使の協定)を港湾業界側は『独占禁止法違反』と言ってきています。中央労働委員会は独禁法違反に当たらないと言っているのですが、この主張には、関西生コンに対して「強要未遂」「恐喝未遂」と言ったものとかぶるものを感じます。要するに、正当な労働運動上の行為を刑事罰の対象であるかのように主張してくるのです」

 労働組合の活動は、労働組合法1条2項に「正当な組合活動は刑事罰の対象にしない」とある通り、ストライキや抗議行動などは刑事罰の対象にならないのだが、経営者側や警察は、それが例えば強要未遂であったり、また独占禁止法違反に当たるなどとして、刑事免責されない行為かのように扱っている。

 この間の捜査の動きなどを見ると、おそらく企業別組合ではなく、中立系、企業の枠を超えて個人加盟できる一業種を統一して動く労働組合の活動に対してマル暴なども含め、警察が介入し事件化したいという思惑があるのではないかと推察される。

「反社」というレッテル貼り

 またマル暴が捜査の全面に出ていることは、労働組合を「反社(反社会的集団)」として扱おうとしていることの表れなのかもしれない。鈴木氏は語る。

「積極的に活動する労働組合を『反社』と規定する。関西生コンの武建一委員長が、昨年9月に『1億5千万円を脅し取った』として恐喝容疑で逮捕されていますが、これは2013年の出来事ですし、企業閉鎖に対して闘って工場を占拠し、雇用の確保と10年越しの不当労働行為を追及した正当な活動で、5年後に逮捕されたのです。これでは恣意的に逮捕されてしまう。こういった捜査も、『反社』であれば仕方ないのだ、ということでしょう」

 反社という概念が恣意的に、いわばレッテルとして使われる事例もある。今回の一連の事件の前に、いわゆるレイシストと呼ばれるような潮流が先行して、関西生コンを「反社」と捉え、情宣や事務所への押しかけを行なっていたのである。

「レイシストたちは関西生コンを『反社』として批判しています。私も所属する東京管理職ユニオンでは、青林堂のパワハラ事件に関する労働争議(昨年7月19日に東京地裁で和解が成立、同社社長ら役員がパワハラ行為を認め謝罪、管理職ユニオンに対しても謝罪の上解決金を支払い、また同月23日には自社発行書籍での誹謗中傷も東京都労働委員会より出版自体を不当労働行為とする命令が出ている)も行なっていますが、それに対してレイシストが私たちの労組事務所前で抗議の街宣を行なっています。

 関西生コンの例を見ると、レイシストたちが登場し、労働組合に対抗してきて、その後に警察が登場したということもあり、労働運動に敵対するために最初にレイシストが登場、しかるのちに警察が登場するという形があるのではないか、と推察されます」

 レイシストにマル暴ら警察。さらには労働組合の活動を「恐喝未遂」「強要未遂」として報道する一部メディアの存在もあると鈴木氏は指摘する。いわば、レイシスト=警察=メディアの三位一体で、労働組合を攻撃する構図があるということだろうか。

 すでに述べたように、関西生コンの一連の事件では労働委員会での組合側の勝利命令も出てきており、また事態を危惧する労働法学会有志声明なども出ている。共謀罪の先取り型の捜査という指摘もある。事態の進行は今後も要注目だ。

<取材・文/福田慶太>

【福田慶太】

フリーの編集・ライター。編集した書籍に『夢みる名古屋』(現代書館)、『乙女たちが愛した抒情画家 蕗谷虹児』(新評論)、『α崩壊 現代アートはいかに原爆の記憶を表現しうるか』(現代書館)、『原子力都市』(以文社)などがある。

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