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官房長官は立腹、同業者も目の敵 望月記者の原動力は

神戸新聞NEXT のロゴ 神戸新聞NEXT 2019/07/28 11:00 神戸新聞NEXT/神戸新聞社
東京新聞社会部記者の望月衣塑子さん=東京都千代田区(撮影・永見将人) © Copyright(C) 2019 神戸新聞社 All Rights Reserved. 東京新聞社会部記者の望月衣塑子さん=東京都千代田区(撮影・永見将人)

 ここ数年、政権にまつわる疑惑が生まれては消えてきた。森友・加計学園、公文書改ざん…。国民は不都合から目を背けさせられていないだろうか-。東京新聞社会部記者の望月衣塑子(いそこ)さん(44)は、菅義偉官房長官が「あなたに答える必要はない」といら立つほど、官邸の記者会見で質問を重ねる。時に「空気を読まない」と、同業者から目の敵にされることも。望月さん、官邸で何が起きているのですか。(山崎史記子)

 -官房長官会見に通っていますが、政治担当ではないのですね。

 「きっかけは、2017年2月に発覚した森友問題です。大阪の国有地売却を巡る疑惑で、安倍晋三首相夫妻の関与が疑われました。当時の編集局長に『財務省本省も絡んでくる』と直訴し、取材チームに加わりました。その後、森友問題に続いて加計問題も浮上します。官邸は政治部がメインですが、前川喜平氏(元文部科学事務次官)ら関係者の取材を重ねる中で、全てにつながる官邸を取材したいと思い、政治部にお願いして会見に参加するようになりました」

 -官房長官会見は基本的に平日2回。官邸ホームページでも公開されています。

 「初めて出席したのは2年前の6月6日。様子見のつもりでしたが、淡々とした質疑に納得がいかず、10分以上続けて質問を重ねました。2度目は37分間に23問。その日は、会見後に官房長官が担当記者相手に行うオフレコ取材がなかったそうです。しつこく聞かれ、ご立腹だったのでしょうか」

 「2カ月後の8月末からは、質問数が制限されたり、質問途中に報道室長に妨害されたり…。今は私だけ2問までの制限付きです。それまでは、官房長官会見は記者の手が下がるまで指し続けるというルールでした」

 -会見での質問に、官邸詰めの記者から注文が付いたとか。

 「『長い』と言われ、短く要点を絞って聞くようにしました。オフレコ取材は菅氏の本音を聞ける大切な場なので、望月のせいでその機会を失いたくないという本音があるのだと思います。ただ、情報を得るために、記者が権力側の顔色をうかがうのはおかしい。官邸は政治家と官僚の人事を掌握し、権力を集中させている。さまざまな問題が起きているのに、情報をえさに記者たちが利用されているように感じます」

 -官邸の対応を巡り、全国の新聞社労組が加盟する新聞労連が抗議声明を出しました。

 「新聞労連が官邸記者クラブの記者を対象に、アンケートをしました。私に対して『決め打ちだ』『事実誤認』などの批判もあり、今は専門家にアドバイスをもらって、事前にチェックしてもらうなど注意を払っています。『ICレコーダーを袋に入れ、忠誠を誓ってオフレコ取材する』と回答した記者もおり、情報を取るためとはいえ、そこまでする状況に何とも言えない気持ちになりました」

 -批判は今も続いています。頑張り続けられる力の源は。

 「『望月さんを守ってあげて』『新聞取ります』『もっと質問して』など、会社に寄せられるたくさんの応援の声です。編集局の幹部が、読者からの要請がある限り私を会見に行かせよう、と背中を押してくれていることも大きい」

 -女性だから一層、風当たりが強かったとは思いませんか。

 「どうでしょう。ただ、当初、一緒に厳しく質問していた男性記者たちは、異動でいなくなってしまいました。稲田朋美元防衛大臣の南スーダン日報隠し疑惑で、しぶとく詰め寄る男性記者たちが、同じテンションで官房長官会見に臨んでくれればいいのに、と思ったことはあります」

 -今月、ニューヨーク・タイムズ紙電子版が、官邸会見の質問制限を批判する記事を掲載しました。

 「官邸はメディアの分断を進めていると感じます。政権に批判的なテレビ番組が終わり、キャスターやコメンテーターが次々変わっています。記者として、官邸や政権の扉をたたき続けなければと思います。やり方は人それぞれ。記者として、当たり前のことを当たり前に続けていきたいです」

【もちづき・いそこ】1975年東京都生まれ。慶応義塾大法学部卒。千葉、横浜支局や本社社会部などで事件を主に担当。半生を書いた著書「新聞記者」は公開中の同名映画の原案となった。

◇記者のひとこと 「アメリカだったら、あなたのような記者は普通よ」。ニューヨーク・タイムズ紙の記者にそう言われたという。権力者の意をくんだ同調圧力。私たちのまわりにも、はびこっていないだろうか。

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