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宝塚・殺人事件以降、売上増のボーガン 今度は夫を撃った妻が殺人未遂で逮捕

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2020/08/01 17:05
ボーガンのイメージ=(C)朝日新聞社 © AERA dot. 提供 ボーガンのイメージ=(C)朝日新聞社

 今年6月に兵庫県宝塚市で二十代の男に家族と親族計4人が殺傷され(3人死亡)、その怖さが注目されたボーガン(洋弓銃)。今度は神戸市で事件が起きた。

 兵庫県警兵庫警は7月26日、樽井未希容疑者(33)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。

 調べでは、樽井容疑者は同日早朝、神戸市兵庫区夢野町の自宅アパートで就寝中の夫(36)をめがけてボーガンを撃ち、外れた矢が頭をかすめて目を覚ました夫を包丁で襲った疑い。揉み合いになり夫が包丁を取り上げ、樽井容疑者自ら「夫を刺した」と警察に電話したという。夫は首を切られるなど重症だが命に別状はない。同容疑者は夫と子供二人の4人暮らし。同署は殺意を抱いた理由などについて調べている。

「クロスボウ」とも呼ばれるボーガンは小型の弓に矢をつがえてフックにかけ、水平に構えて引き金を引く。スポーツ競技では頑丈な手袋をして両手で弓をつかみ、背筋力を使って引っ張ってフックにかけ的を射る。威力のあるものは百メートル先の的を射抜くことができ、至近距離なら頭骨を貫く殺傷力がある。

 銃は火薬爆発の反動が激しく訓練していないと狙いが定まらない。だが宝塚市の事件で犯人は4人を相手に短時間で1本も外さずに頭や首を射抜いている。銃声もなく「サイレント殺人」も可能な不気味さだ。

 それでも現状では銃刀法の対象外で所持には免許も登録もいらない。販売側にも規制がないため通販でも数万円程度で手に入る上、大きな洋弓(アーチェリー)と違い、隠し持って運べる。競技大会に持参するなど正当理由がなく持ち歩くと軽犯罪法違反になり、ボーガンを使って山野などで「狩り」をすれば狩猟法違反になるが規制はその程度だ。

 日本では古来、ボーガンが戦いの武器として使われなかったせいかなじみは薄いが、西洋や中国などでは武器として使われた。スイスの伝説の英雄「ウィリアム・テル」が息子の頭上に乗せたリンゴを射抜いたのもボーガン。「超弩(ど)級」の「弩」は中国語でボーガンの意味である。

 宝塚市と神戸市の事件を受け、兵庫県の井戸敏三知事は27日、「新規購入者だけでなく所有者にも届け出を義務付ける規制の条例を9月議会で成立させたい」などと会見した。

 しかし、宝塚の事件以後、興味本位か、ボーガンの売り上げが急増しており、今後もボーガンを使う殺傷事件が起きる可能性は増している。

 6月の宝塚市の事件直後、菅義偉官房長官は定例会見で「クロスボウなどの弓矢にさらに規制を設けることは、その使用実態や事件の発生状況などを踏まえながら必要に応じて検討を行っていく」と述べたが具体的な規制には触れなかった。

 政府はもはや「静かな殺人武器」の規制を自治体条例に任せず、銃刀法の対象にすべきではないか。

(ジャーナリスト・粟野仁雄)

*週刊朝日オンライン限定記事

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