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小学校の運動会中断、父親の命救う連携 思い出へ再開

朝日新聞デジタル のロゴ 朝日新聞デジタル 2019/10/01 14:44 朝日新聞社
翌日に再開された運動会。児童たちが騎馬戦に奮闘した=2019年9月26日午前、栃木県日光市藤原、友田陽子さん撮影 © 朝日新聞社 翌日に再開された運動会。児童たちが騎馬戦に奮闘した=2019年9月26日午前、栃木県日光市藤原、友田陽子さん撮影

 栃木県日光市藤原の鬼怒川小学校(武田幸雄校長、92人)で9月25日に開かれた運動会で、児童の父親が突然意識を失い、倒れる出来事があった。居合わせた看護師らが蘇生措置を施し、救急車で病院に運ぶ一方、学校側は運動会を中断し、無事を祈った。一命を取りとめた父親は「卒業する子どもたちに思い出を作ってほしい」とメッセージを寄せ、翌日、運動会は再開された。

 父親が倒れたのは午後2時前。20種目のうち18番目の競技で、保護者らによる「大玉おくり」に参加し、退場するときだった。看護師資格を持つ大島由子(よしこ)・養護教諭(59)や観戦していた看護師ら数人が素早く会場外に運び出し、ブルーシートで囲んで救命措置に入った。

 心筋梗塞(こうそく)の疑いがあると感じた大島教諭らは、元消防署長でスクールガードリーダーの沼尾成孝さん(71)に、備え付けの自動体外式除細動器(AED)で心臓に電気ショックを与えてもらい、看護師らが心臓マッサージを続けた。治療に当たった医師が「本来なら後遺症が出てもおかしくなかったが、初動の救命措置が見事だった」とたたえるほど手際の良い措置だった。父親は細い血管が詰まっていたという。

 中断した運動会で残った2種目は、4~6年生が紅白に分かれて争う騎馬戦「決戦!たかはら山」と、「紅白リレー」。地域住民と一つになって盛り上がる最大のイベントだった。武田校長はこの運動会で、仮装して大型バイクで登場するなどムードを盛り上げていたが、父親が搬送される事態にいったんは中止しようと決めた。PTA役員らを集め、「命に関わる重大なことが起き、児童の心のケアに務めると同時に、みんなで無事を祈りたい」と呼びかけた。

 会場を片付け、安否を気遣って待機していた職員室に夕方、父親が回復したとの連絡が入った。父親からの言葉は「これで運動会が中止になったら心苦しい。来春の卒業生に思い出を作ってもらえませんか」。

 その後の職員会議では、涙を浮かべる職員もいて、児童全員の参加で運動会を再開することを決めた。職員が夜通し総掛かりで、テントや看板など元の通りに設営した。ただ、万国旗の掲揚だけは専門技術が必要であきらめたという。

 翌朝、前日と変わらない約200人の地域の人々が運動場に集まった。そこには、秋風にたなびく万国旗も。校長の依頼で専門職の住民が引き受けたという。

 開会式も仕切り直しした。ステージには上がらず、整列する児童らの前に立った校長の背中が震えていた。「みんな、見てごらん。昨日と全く変わらず万国旗もある。こんなに集まってくれた保護者の方は日本一のお父さん、お母さんだ。君たちは何も心配することはない。残りの2種目。全力で立ち向かって下さい」(梶山天)

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