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日本で「中小企業」が激減している根本理由 「後継者がいない」だけではない

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/02/04 17:00 塚田 紀史
なぜ中小企業が激減しているのだろうか(写真:visualspace / iStock) © 東洋経済オンライン なぜ中小企業が激減しているのだろうか(写真:visualspace / iStock)

 1986年の87万をピークに製造業事業所数は今や半減。日本から中小製造業は消えてしまうのか。『日本の中小企業』を書いた明星大学経済学部の関満博教授に聞いた。

中小企業が激減

 ──長年現場を歩かれた実感は。

 とにかく事業者数の激減ぶりはすごい。とりわけ製造業は減少が止まらない。

 個別産業への訪問をずっと続けているが、最近遭遇したのはたとえば糸染めや印刷製本関連の打ち抜き。糸染め業者は30年前に全国に1000以上を数えたが、今80。東京に限っていえば、90あったものが今や8にとどまる。装置産業の糸染めは、海外にミシンとともに出ればいい縫製と異なり、繊維関連でも国内に残った。残ったのはいいが、仕事は100分の1以下。儲からなくなって後を継ぐ人が極めて少ない。

 もう1つの打ち抜きは簡単にいえば厚い紙を打ち抜く作業を手掛ける。ピーク時、全国に100ぐらいあったのが、今は5~6。そのうち続きそうなのは1業者のみ。ここだけは後継ぎがいる。

 ──創業も少ない?

 国は新規創業を促そうと、各種の政策を打ち出している。ベンチャーキャピタルの創成やインキュベーター施設の開設もその一環。だが、それも閑古鳥。IT関係を含め創業意欲が非常に低下している。

 数が減る一途なのは初期投資額が大きすぎるから。まともなものづくりをするうえで特にそう。今や中古旋盤1台を50万円で買って始めるといったのでははなからダメで、高額のマシニングセンターや放電加工機を入れないとスタートできない。それだけで1億円かかる。30代前半以下の男に1億円用意しろと言ってもそれは無理だ。とても始められない。

 ──飲食店や介護福祉では創業が目立ちます。

 今、創業でいちばん目につくのは女性が手掛けるカフェ。数百万円つぎ込む。ただこれも、開業から短期で消えていくか、「居抜き」で誰か代わりの人が入る形が多い。創業が旺盛といえるのは介護福祉のみだ。ケアマネジャーや訪問看護の人が常駐して、住宅街のガレージを改修して事務所が作られる。この業種は増えているが、儲かる商売ではない。介護保険制度の中でやっているのだから、事業ともいえない。ほとんどボランティアみたいなものだ。

 事業所は減り、新規創業は芳しくない。この面でも一つの時代が終わりつつある感じがする。

日本での承継の難しさ

 ──後継ぎが確保できないから?

 よく知らない人は「親子でなくても継げる技能のある人がいればいいのでしょ」と言うが、仕組みのうえで事実上日本では無理なのだ。第三者が継ぐのを金融機関が認めない。たとえオーナー社長が指名しても、その人は代表権を持てない。貸金を保証する能力がないからだ。最近、名刺に社長とあるが、代表取締役と書いていないケースをよく見掛ける。オーナーの債務の保証がないかぎり、事実上承継にならない。

 社長指名を受けても自身の妻から断られるケースも少なくない。「このちっぽけな住まいも担保に入れるぐらいなら、定年までサラリーマンで十分。あとは年金をもらって小さく生きましょう」と。

 ──M&A(企業の合併・買収)がよくいわれます。

 これもまた難しい。そもそもまず儲かりそうもない会社は誰も買わない。少し儲かりそうだとしても、日本の会社の場合は社長に価値のある場合が多い。あの社長だからこの会社はもっていると。日本の中小企業の価値は、突き詰めれば社長であったり特定の技術者の価値であることも多い。現場に行くと日本での承継の難しさをしみじみ感じる。

 ──製造業は中国の印象が強い。

 中国の深センに行きその熱気にくらくらした。もう民間企業が3万社を超え、その多くがまず外資に勤めての独立組。開発部隊を含めて、M&Aが盛んなのもいいところだ。たとえば医療機器を手掛ける友人は2年前に、何社か買うことになろうと言っていたが、この間訪れたら、すでに5社買ったという。一つのビルに集合させて、開発から組み立て加工までを手掛けている。

 「待ちの企業買収」ではない。売り案件ではなく、自ら欲しい会社、ギンギンに光る会社を探し出し、話をつける。しかも、出資比率51%以上は必須で、社長も替える。事業は新社長に任すが、マネジメントは手放さない。そういう社会を見ると、日本の状況はいかにも寂しい。

 ──ただ、この本の半分以上は日本での起業・承継の成功例です。

 全国を見て、模範的な起業・承継をしているケースを盛り込んだ。勇気を持って進めてほしいとの願いを込めている。日本国内で創業してほしいし、承継もできる環境にしてほしいが、一気にはできない。そこで、足で歩いて収集した際立った例を取り上げた。

 中小企業・地域産業には「外から所得をもたらす機能」「人々に就労の場を提供する機能」「人々の暮らしを支える機能」の3つが求められる。成熟し、人口減少、高齢化に向かう日本社会だが、中小企業・地域産業の担うべき役割はいまだ大きい。

後継ぎとしての覚悟を決める

 ──後継者塾もやっていますね。

 少しでも事業撤退を止められないかと。事業所が減っている理由はほとんどが後継者問題なのだから、人づくりをきっちりやれば、「減るのが減る」のではないかと手掛けている。

 ──始めて20年とか。

 全国の塾数は現在20近く。1年制で会員は各10~15人。OBの参加も自由。よくある経営セミナーのような生産、財務、人事の管理論やマーケティングがテーマではなく、後継ぎとしての覚悟を決めることが主眼で、内容はこれに尽きる。スタートした20年前から数えて卒業生は2000人を超えた。塾の名前はいろいろだが、○○立志塾というのが多く、いい感じで後継者が育ってきている。

 塾で最初に何代目かを聞き、これから先30年経営者をやりきれるかと問う。親の事業は30年前、一昔前の事業だから時代が変われば変わる。最大の資産は親が築いてきた信頼と、事業家の家に生まれた可能性。それをベースにして新しい枠組みの中で可能性を追求できる事業に劇的に変えていくことだ。これはサラリーマンではできない。事業家の家に生まれたからこそできると鼓舞している。

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