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次亜塩素酸「水」と「ナトリウム液」の違いに要注意 誤って有毒ガス発生の危険も

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2020/06/21 17:00
次亜塩素酸水を加湿器などで噴霧する学校もあったが、4日、文科省は学内での噴霧をしないよう注意喚起した (c)朝日新聞社 © AERA dot. 提供 次亜塩素酸水を加湿器などで噴霧する学校もあったが、4日、文科省は学内での噴霧をしないよう注意喚起した (c)朝日新聞社

 ワイドショーなどで新型コロナの情報過多になり、少々疲れ気味の人も多いのでは。そんな折にわき上がった「次亜塩素酸」騒動。うっかり間違えないように注意しよう。AERA 2020年6月22日号は、殺菌用途の違いや使用時の注意点などを紹介する。

*  *  *

 消毒用アルコールの品薄が続いている。アルコールを代替する消毒液としてにわかに注目を集めているのが「次亜塩素酸水」だ。次亜塩素酸水は、塩酸または食塩水を電気分解することで作られる、酸性の殺菌力の強い液体。安全性の高さから食品添加物にも使用されている。

 よく名前が似ているため混同されがちなのが「次亜塩素酸ナトリウム液」だ。

 こちらは家庭用の台所やお風呂の漂白剤の主成分であるアルカリ性の液体で、やはり殺菌効果を持つ。どちらも中に含まれる「次亜塩素酸」がウイルスや菌のタンパク質を酸化・変性することで、病原体を不活化する。

 しかし、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム液は性質が大きく違うため、使い方には注意が必要だ。

 消毒用に使われる次亜塩素酸水は肌と同じ弱酸性のため、手指が触れても大きなダメージを受けることはない。一方、次亜塩素酸ナトリウム液は強いアルカリ性のため、皮膚に触れるとタンパク質を溶かしてしまう。家庭用の塩素系漂白剤に直接手が触れるとヌルヌルするが、それは皮膚が溶けているため。手袋の使用が必須だ。

 また一般に、消毒用に用いられる次亜塩素酸水は薄いため、有機物に触れるとすぐにその殺菌効果を失ってしまう。そのため消毒したい対象にスプレーで直接塗布したり、装置からじゃぶじゃぶとかけ流すような使い方をするのが望ましい。アルコールと同様に手指の殺菌や、食器類や子どもが口にする可能性がある玩具などの殺菌にも向いている。

 これに対して次亜塩素酸ナトリウム液は、薄めた液を布などに浸して拭くことで、不特定多数の人が触れるドアノブや手すり、便座などを消毒するのに向いている。市販もされているが、家庭用の塩素系漂白剤5ミリリットル(キャップ1杯分)を500ミリリットルの水と混ぜ、約0.05%に希釈すれば代替できる。成分に含まれる界面活性剤も殺菌効果を持つため、ウイルスをやっつける効果は高い。

 注意すべきことがある。次亜塩素酸ナトリウム液に酸性の液体やアルコールが混ざると、有毒なガスが発生する。使用時は必ず換気をするとともに、他の液体と混ざらないようにすることが肝心だ。

 次亜塩素酸水を巡ってはこの4月から6月にかけて混乱が起こっていた。栃木県や山梨県では、公共施設や小中学校、バスの車内などでいっとき「空間の除染」を目的に次亜塩素酸水の「噴霧」を実施。しかし世界保健機関(WHO)が空間噴霧の効果について否定的見解を示したため、相次いで中止となった。5月29日には独立行政法人「製品評価技術基盤機構(NITE)」が「次亜塩素酸水が新型コロナウイルスに有効か、現時点で確認されていない」と中間発表を行うと、これに対してメーカーや大学研究者からなる団体が「明らかな誤報」と反論、6月11日に記者会見を実施した。

 疫学を専門としWHOにも勤務した経験を持つ玉城英彦・北海道大学名誉教授は、こう言う。

「NITEと同様の条件で実験したところ次亜塩素酸水はコロナウイルスを30秒で不活化した。同様の実験結果は帯広畜産大学でも出ている。安全で手に入りやすくアルコールよりも皮膚に優しい次亜塩素酸水は、手指用の消毒液として推奨できる。一方、次亜塩素酸水の空間噴霧はエビデンスがないため慎重な検討が必要だ」

 厚生労働省や家庭用漂白剤のメーカーは「次亜塩素酸ナトリウム液の噴霧を吸引すると、嘔吐などの症状を起こす危険がある」と注意を呼びかける。コロナ予防の前に、きちんとラベルを見て成分を確認することが大切だ。(ライター・大越裕)

※AERA 2020年6月22日号

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