古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

社会常識と存在感がない安倍首相の"迷言"

プレジデントオンライン のロゴ プレジデントオンライン 2019/07/01 18:45 沙鴎 一歩
20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で行われたデジタル経済に関する首脳特別イベントであいさつする安倍晋三首相(中央)。左は米国のドナルド・トランプ大統領、右は中国の習近平国家主席=6月28日、大阪市[代表撮影](写真=時事通信フォト) © PRESIDENT Online 20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で行われたデジタル経済に関する首脳特別イベントであいさつする安倍晋三首相(中央)。左は米国のドナルド・トランプ大統領、右は中国の習近平国家主席=6月28日、大阪市[代表撮影](写真=時事通信フォト)

エレベーターを付けたことを「大きなミス」

6月28日から2日間にわたって大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)。28日の夕食会で、議長の安倍晋三首相が、大阪城にエレベーターを付けたことを「大きなミス」と発言したことが波紋を広げている。

今回は安倍首相の“大阪城エレベーター発言”から話を始めよう。

安倍首相は、夕食会のあいさつの冒頭で、会場の「大阪迎賓館」(大阪市中央区)からよく見える大阪城の歴史を説明した。

「150年前の明治維新の混乱で、大阪城の大半は焼失しましたが、天守閣は今から約90年前に、16世紀のものが忠実に復元されました」

問題の発言はこの後だった。

「しかし、ひとつだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまで付けてしまいました」

なぜ、こんな発言をしてしまうのか。

普通の人たちの生活の実態がわからない

安倍首相は「もっと忠実に再現すべきだった」とユーモア感覚で指摘したつもりだったのだろう。だが、「大きなミス」という言葉は不適切だ。近くに車いすやベビーカーを使う人がいれば、こうした言葉が出てくることはないだろう。普通の人たちの生活の実態がわからないから、こうした発言が飛び出すのだと思う。つまり安倍首相には社会常識がないのである。

おそらくあいさつの原案を作ったのは首相官邸の役人で、問題の部分は後から安倍首相自身が入れたのだろう。霞が関の官庁から引き抜いた、忖度のできる役人が“エレベーター発言”のようなドジを踏むはずはない。安倍首相自身から率直な反省の弁が聞きたい。

「『ミス』というセンスと感覚が理解できない」

どんな批判の声が上がっているのか。

立憲民主党の枝野幸男代表は6月30日の街頭演説で「江戸時代に作られた建造物に、現代の技術で何かを追加するのはどうかという議論はあるかもしれない」と前置きしたうえで、「大阪城は昭和に作られた。『誰でも利用できるように』とエレベーターがあるのが当たり前だ。『ミスだった』というセンスと感覚が全く理解できない」と訴えた。

国民民主党の玉木雄一郎代表は30日、福島市で記者団に対し「障害者も健常者もともに生きていける共生社会を作っていくことが世界で求められている。G20という大きな国際舞台で、総理大臣が発言する内容としては不適切で、配慮を欠いている」と断罪した。

野党からこうして揚げ足をとられるのは仕方ないだろう。

だれでも天守閣の最上階に行けるように設置された

夕食会に出席した各国の首脳やその関係者らから直接の批判はなかったというが、ネット上には「本当に悲しくなる」とか、「安倍首相にはバリアフリー、共生社会といった考えや姿勢がない」、「なぜこの発言がうけると思ったのか」といった書き込みがあふれた。

大阪城の天守内には2基のエレベーターがある。1931年の再建当初からあり、そのうち1基が1997年にバリアフリー化で8階の最上階まで延長された。障害の有無にかかわらず、だれでも天守閣の最上階にまで行けるようにエレベーターが延長されたのだろう。安倍首相はその知識がなかったのである。安倍首相は社会常識に欠けるだけでなく、背景の理解にも欠けている。

6月30日付の朝日新聞の社説の見出しは「大阪G20閉幕 安倍外交の限界見えた」である。

朝日社説は「直面する課題に確かな処方箋を示せたのか、首脳外交の華やかさに目を奪われることなく、その成果を冷徹に問わねばならない」と書き出し、「採択された首脳宣言は、08年のG20サミット発足以来、明記されてきた『反保護主義』への言及が、昨年に続いて見送られ、『自由、公平、無差別な貿易と投資環境を実現するよう努力する』と記された」と指摘する。

これでは安倍首相はトランプ氏のかわいい“イヌ”だ

そのうえで朝日社説はこう書く。

「首相は閉幕後の記者会見で、『自由貿易の基本的原則を明確に確認できた』と強調したが、米国への配慮は明らかだ」

「『米国第一』を譲らず、国際秩序を揺るがし続けるトランプ米大統領の説得を、最初からあきらめていたのではないか」

「アメリカへの配慮」を行い、「トランプ氏への説得」をあきらめる。朝日社説の指摘の通りで、安倍首相はトランプ氏のかわいい“イヌ”と化している。日本の首相としての存在感のかけらもない。

さらに朝日社説は指摘する。

「一方、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談は見送られた。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席には『永遠の隣国』といって近づきながら、重要な隣国である韓国との関係悪化を放置するのは、賢明な近隣外交とは言いがたい」

安倍首相としては、調整役として激しい貿易摩擦を繰り返してきたアメリカと中国の間に入って、自らの存在感を示したかったのだろう。

「長期的な戦略より政権維持の思惑が優先される」

中断していた米中貿易協議が再開されることになり、アメリカは中国に対する制裁関税を当面引き上げず、トランプ氏は中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」への米国製品の輸出を容認する考えも示した。

それなりの成果だが、これらは安倍首相の調整でうまくいったわけでない。商売上手なトランプ氏のやり方であり、それを学んだ習氏の対応ぶりが良かったからここまで成果を上げたのである。安倍首相の存在感は薄まるばかりだ。

朝日社説は書く。

「安倍政権で目立つのは、国内世論の受けを優先させる姿勢だ。G20サミットは例年、G7サミットの後に開かれてきた。今回、G20議長国の日本が慣例に反し、G7の前に開催したのは、参院選の直前に『外交の安倍』を世論にアピールする狙いとみられている」

「いったい、何のための外交なのか。長期的な戦略より政権維持の思惑が優先されるなら、その行き着く先は危うい」

安倍首相の思惑は参院選での勝利であり、その先には悲願の憲法改正がある。

プーチン氏との会談でも何も生み出せない

7月1日付の毎日新聞の社説は、安倍首相と大阪G20サミットで来日したロシアのプーチン大統領との会談を取り上げ、こう厳しく指摘する。

「北方領土返還で重大な方針転換を行い、譲歩を重ねたものの、何も生み出すことができなかった」

安倍首相は昨年11月のシンガポール会談を踏まえ、6月29日のプーチン氏との会談で、北方領土の返還を含む日露平和条約の大筋合意を目指していた。

「しかし、結果はロシア側が求める経済協力の推進などに限られ、平和条約の核心である北方四島の帰属問題は先送りされた」

ここでも安倍首相の存在感は薄まるばかりだ。毎日社説は書く。

「リスクを日本政府はどこまで見越していたのか」

「ロシアは、北方領土を『合法的』に占有しており、ロシアの主権下にあると日本が認めることが平和条約締結の絶対条件と主張した」

「プーチン氏の人気が経済低迷でかげり、北方領土返還への反対デモも起きた。強硬姿勢を取らざるを得なくなったのだろう」

「米露関係の悪化も交渉を困難にした。日本に領土を引き渡した後、米軍が展開することへの懸念にプーチン氏は繰り返し言及した」

こう書いた後、毎日社説は「こうしたリスクを日本政府はどこまで見越していたのだろうか」と日本側の姿勢を疑問視する。

残念なことに、安倍首相には交渉相手のプーチン氏の胸の内を理解する力がないのだ。

安倍首相よりもツイッターのほうが役に立つ

トランプ氏と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との電撃的会談で、安倍首相の存在感はさらに薄くなった。

トランプ氏は6月30日午後、韓国と北朝鮮の軍事境界線の真上に位置する共同警備区域の板門店(パンムンジョム)で、金正恩氏と対面して握手を交わした。しかもトランプ氏はその後、軍事境界線を越えて北朝鮮側に入った。アメリカの現職の大統領が北朝鮮側に入るのは初めてだ。2人の会談は昨年6月にシンガポールで、今年2月にベトナムで開かれた会談に続いて3回目となった。

NHKのライブ映像を見ていたが、トランプ氏と金正恩氏との対面のそばには笑顔の韓国大統領の文在寅氏の姿があった。文氏は調整役を買って出たのだ。

安倍首相は金正恩氏との会談を希望している。だが、金正恩氏は「うん」と言わない。トランプ氏にとってはそんな安倍首相よりも、文氏のほうが、利用価値が高いのである。安倍首相は文氏に出し抜かれた格好だ。

トランプ氏は29日にツイッターを通じて「会いたい」と金正恩氏に呼びかけた。金正恩氏はこれを見ていた。トランプ氏との対面時に「ツイッターに驚いた」と記者団に明かしていた。

まさにツイッター外交、ツイッター政治だが、トランプ氏にとって日本の安倍首相よりも、ツイッターのほうが役に立つのである。

金正恩氏には制裁解除へと持ち込む絶好のチャンス

「米朝首脳会談 『非核化』はどこへ行った」(見出し)と訴えるのが7月1日付の産経新聞の社説(主張)である。

産経社説は「米国と北朝鮮との緊張緩和ばかりが強調され、東アジアの平和にとって最大の懸案である非核化が置き去りにされないか強い不安を覚える」と書き出し、こう指摘する。

「2人の良好な関係をアピールするには格好の舞台となった。トランプ氏は『歴史的な瞬間』、金氏は『平和の握手だ』と語った」

「だが、米朝交渉の目指すところは北朝鮮の完全な非核化であり、この点で実質的な進展があったのか、極めて心もとない」

産経社説の指摘は正しい。北朝鮮の非核化が実現されないと意味がないのである。今回の会談は、トランプ氏にとっては大統領選挙を戦う好材料となり、金正恩氏には制裁解除へと持ち込む絶好のチャンスである。

制裁堅持による北朝鮮の非核化こそが重要だ

さらに産経社説は指摘する。

「だが、いま求められているのは、北朝鮮による非核化に向けた具体的行動である。核物質、核兵器、関連施設の全てを申告し、検証を受け入れ、生物、化学兵器、弾道ミサイルを含め、いつまでに廃棄するか工程表を示す。それが制裁緩和の大前提だ」

非核化がすべてである。

「トランプ氏は2~3週間以内に、米朝間で実務協議を開始するとも述べた。首脳会談が、実質的な非核化交渉の契機となれば、評価されよう」

「非核化に向け、圧力維持を貫徹しなければならない」

沙鴎一歩も国際社会が制裁を堅持し続け、北朝鮮にミサイル・核の開発と保有を中止させることこそが重要だと主張したい。

(写真=時事通信フォト)

PRESIDENT Onlineの関連リンク

プレジデントオンライン
プレジデントオンライン
image beaconimage beaconimage beacon