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芥川龍之介は藤の花を見て地震予知 植物学者の見解は?

NEWSポストセブン のロゴ NEWSポストセブン 2018/06/07 16:00
地震の予兆でなければいいが… © SHOGAKUKAN Inc. 提供 地震の予兆でなければいいが…

 文豪・芥川龍之介がある植物の“異常”から地震を予知した──そんな記録がある。

 1923年8月、鎌倉の別荘で、本来4~5月に咲くはずの藤が季節外れの花を付けているのを目にした芥川は、〈どうもこれは唯事ではない。「自然」に発狂の気味のあるのは疑ひ難い事実である。僕は爾来人の顔さへ見れば天変地異が起こりさうだと云つた〉と手記に残している。関東大震災が起きたのはそれから間もない9月1日のことだった。

 昨年も全国各地で8月に藤の開花が観測されている。今年は東京・亀戸天神社など藤の名所で例年より10日も早く開花し、ゴールデンウィークまで続く「藤まつり」の期間中、花が保つかが危ぶまれた。

 だが、甲南大学特別客員教授で植物学者の田中修氏は、

「藤には『二度咲き』といって、数年に1度、夏にも花をつける習性がある。塩害などでも季節はずれの時期に花が咲くことがありますし、早咲きや遅咲きは気候の変化によるものでしょう」

 と、地震との関連を否定する。科学的には芥川の“予知”は“当てずっぽう”という見解のようだ。

 地下水や井戸水と地震の関連も古くから伝えられている。昨年から今年にかけて、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている埼玉県秩父市の「妙見七つ井戸」が立て続けに涸れた。

 江戸時代後期の武士・池道之助は、1854年に起きた安政南海地震に際して、〈大地震の前には急に井の水へる物なり、へらぬ井戸は濁る物なり。(中略)大揺りには井を見るべし〉と手記に残している。

 1970年に刊行された吉村昭の『三陸海岸大津波』には、明治、昭和の三陸地震で、いずれも井戸水の渇水や濁りなどの異常が報告されたとある。1978年1月の伊豆大島近海地震の前にも、井戸の水位の変化などが伝えられていた。海洋地質学に詳しい地球物理学者の島村英紀氏がいう。

「地震発生前の地殻変動が地下水に影響を及ぼし、井戸や温泉が涸れたり、逆に新たに湧き出たりすることがあります。ただし、地下水はかなり離れた場所でも影響を受けるので、大量の汲み上げなど、人為的な作用が原因であることも多い」

 ただの迷信と切り捨ててよいものか──。地震学者による「予知」がなかなか成果を残せない中、地震大国に住む我々にとって、警戒すべき兆候ではありそうだ。

※週刊ポスト2018年6月15日号

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