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コロナ感染「ファクターX」を主張していた人たちが反省すべき現実

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2021/05/25 06:00 原田 泰
入国管理は一番効率的な隔離策なのに、マスコミは水際対策の失敗を批判しない Photo:PIXTA © ダイヤモンド・オンライン 提供 入国管理は一番効率的な隔離策なのに、マスコミは水際対策の失敗を批判しない Photo:PIXTA

日本の新型コロナウイルスの感染状況は、欧米と比べて良い結果だと言われてきた。だがアジア・オセアニアの先進民主主義国と比べるとむしろ悪く、ワクチン接種も遅れるありさまだ。「ファクターX」の議論もあったが、もっと根本的な対策をおろそかにしてはいないだろうか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

 新型コロナウイルスの第4波が深刻な状況になって、最近はあまりはやらない言葉となったが、日本での感染者数が欧米に比べ少ない要因について「ファクターX」という説が昨年、よく取り上げられた。

 日本が、大規模なロックダウン(都市封鎖)となどの思い切った対策を取っていないのに感染者や死亡者が少ないのは、何か未知の要因Xがあるのではないかという意味で使われた。

キスやハグの文化がない、言葉の発音…

ファクターXの要因が語られたが

 まず事実を確認しよう。下図は、主要先進7カ国(G7)の感染者数を見たものだ。現在は増加しているが、それでも日本の成果は素晴らしい。ワクチン接種が成功したイギリスとほぼ同じ水準だ。

“ワクチン敗戦”という言葉もあるが、極めて少ないワクチンの接種率であるにもかかわらず、ワクチン接種が進んでいる国と同じだけの“成績”を現在示している日本国民は、大変素晴らしいといえる。もちろん、ワクチン入手に遅れた日本政府は無能だということだ。

 では、なぜか高い成果を示したファクターXとは一体何だろうか。さまざまな人が指摘したことを挙げれば、握手&ハグ&キスの文化ではなくお辞儀文化だからだ、よく手を洗いうがいをするし、衛生観念が強いからだ、高温多湿の気候だからだ、日本語は英語のp、t、kなどのように息を強く吐き出す発音が少ないからだ、中国語では、さらにq、c、chの後に母音が来るとそういう発音になる、結核予防のBCG接種が効果を上げている、などといった説が流れた。

 しかし、日本は不思議と感染者が少ないというのはG7各国と比べたときで、アジアの民主主義の先進国と比べるとそうではない。

アジアの先進国と比べると日本は劣等生

島国ならではの対策を怠った結果だ

 下図は台湾、ニュージーランド、オーストラリア、韓国と日本を比べたものだ(この図は、原田泰『「ゼロコロナ」をほぼ実現すれば、経済活動は元通りにできるのか』2021.3.25でも用いたグラフを改訂したものである)。

 これを見ると、日本は決して成績が良いとはいえない。台湾が特別の優等生であることは知られているが(台湾はグラフが見えなくなってしまうので、10倍にした数値を示している。最近は台湾でも感染が再拡大しており、この感染症の困難さを象徴している)、日本はこの5つの国・地域中では劣等生となる。

 そもそも、ニュージーランドやオーストラリアも、南米や南欧ほどではないが、握手&ハグ&キスの文化である。もちろん、英語を話す。台湾人も、p、t、kに加えてq、c、chで息を強く吐き出す。台湾と韓国はBCG接種をしているが、ニュージーランドとオーストラリアはしていない。

 日本が劣等生ということは、これら4カ国はG7と比べての超優等生ということになる。

 では、何がこれら4カ国(日本を含めて5カ国)の特徴かといえば、島国であるということだ。オーストラリアは大陸だが島国、韓国も北朝鮮との軍事境界線で遮断されているので島国とみなすことができる。

 島国であれば、感染者を入国させなければ、感染が広がることはない。台湾、ニュージーランド、オーストラリア、韓国、日本の順に入国規制が厳しかった。なお上図には、各国が入国禁止措置を取った日付も示している。

 台湾は2020年2月6日に対中国の、3月19日に対世界の入国禁止措置を取ったのに対し、ニュージーランドが対中国、対世界への入国禁止措置を取ったのは3月19日、オーストラリアは3月20日、韓国は3月29日、日本は4月3日である。そして、この順と逆の順に感染者数が多い。

 日本はG7と比べて優等生であると自認し、または、ファクターXでよく分からないがコロナに強い国民と思っていたようだが、それは島国という検疫に有利な体制のたまものにすぎなかったのではないか。

入国管理は一番効率的な隔離策なのに

水際対策の失敗を批判しないマスコミ

 これを認識していれば、もっと効果的な対策が取れたのではないだろうか。コロナ感染を抑えるのはコロナウイルスとの接触を避ければよいので、人との接触を避けるのが手段である。

 もちろん、最初から台湾のように動けばよかったのだが、その後であっても、変異ウイルスを避けるために入国審査を厳しくすればよかった。

 2020年12月までにイギリス型、2021年5月までにインド型変異株が日本に入り、すでに市中感染が確認されている。他にも、南アフリカ型、ブラジル型、フィリピン型の変異株がすでに確認されている。

 これら変異株が入らないようにするためには、入国者を2週間、隔離さえすればよい。ホテルを用意して宿泊させ、外出や他の部屋への移動を禁じる。部屋の映画は見放題にする。ゲーム機やパソコンやランニングマシンを配布してもいい。

 隔離させるための費用を含めて、ホテル代は1日1万円でいいだろう。どうしても高級ホテルに泊まりたい人がいれば、追加の自己負担で泊まれるようにしてもいい(高級ホテルが、感染可能者宿泊施設になることを了承してくれればの話だが)。

 なんなら、1日当たり1万円の待機手当を払ってもいい(最終日にまとめて14万円払った方がいい)。1人1日2万円で、14日間隔離する費用は28万円である。どれだけの入国者がいるかといえば、昨年4月3日に全世界からの入国禁止措置を取ってからの日本への入国者数は、2020年4月~2021年3月で、30万6340人である。これに28万円を乗じると約858億円だ。

 もちろん、各国での感染や変異株の状況に応じて早めに対応すればいいだけであるので、すべての国からの入国者に2週間の完全待機を求める必要もない。これは最大限必要となる予算である。

 一方、2020年度のコロナ対策の3回の補正予算の合計額は、実に77兆円だ。858億円で変異株の流入を防げることができれば、随分安いものではないか。変異株の感染者を見つけて、そのクラスターを探すという作業よりも確実である。

 韓国は、なんとか感染者の激増を抑えている。韓国でも変異株は流入しているようだが、その規模は日本よりずっと小さいようである。2021年5月4日の韓国・聯合ニュースによれば、「新型コロナ変異株3種の新規感染者97人 累計632人」とのことである。

 日本で厳しい入国管理ができないのは、憲法で基本的人権が保障されているからだという議論がある。しかし、日本国憲法第22条第1項には、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」とあるだけだ。公共の福祉を拡大解釈されてはかなわないが、自由に移転してコロナウイルスをまき散らすことは公共の福祉に反するといえるだろう。

 しかも、2週間と限定しているし、移動を制限する場所はホテルである。憲法があるから入国管理できないというのは、何もしないことの言い訳だ。

 また、マスコミが入国管理の失敗を批判しないのも不思議なことだ。政治家の言葉尻や、首長のワクチン接種の“横入り”を非難するのも結構なことだが、首長が横入りしても、本来ワクチンを接種できる人が1人後回しになっただけである。入国管理の失敗はおびただしい数の感染をもたらした。批判のバランスを失しているのはなぜだろうか。

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