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プラスチック汚染が人類の未来に影落とす根拠 代替品使用で始める「脱プラ生活」のすすめ

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/06/07 13:00 高田 秀重
身の回りにあふれるプラスチック製品。プラスチック汚染が現実に起きている中で削減のために日常生活でできることがあります(写真:Estradaanton/iStock) © 東洋経済オンライン 身の回りにあふれるプラスチック製品。プラスチック汚染が現実に起きている中で削減のために日常生活でできることがあります(写真:Estradaanton/iStock)

プラスチックによる海洋汚染、魚介類のプラスチック汚染は、大きな社会課題として取り上げられるようになってきた。しかし、ペットボトル、カップ麺の容器、コンビニの弁当箱、コップなどのプラスチック製品を飲食に使用する際に、私たちが有害化学物質にさらされていることへの関心は高いとは言えず、使い捨てプラスチックの使用削減の動きは遅い。

その状況に警鐘を鳴らしている、環境保護ビジネス起業家のシャンタル・プラモンドンらが書いた、生活のあらゆる場面でプラスチックを減らすためのガイドブックが『プラスチック・フリー生活』だ。

プラスチック問題の第一人者で、同書に解説を寄せている東京農工大学・高田秀重教授に現状とこれからの課題について解説してもらった。

プラスチック問題は世界的にみると、解決の方向に動き出したと感じています。とくに、2017年にニューヨーク国連本部で開かれた「国連海洋会議」で、使い捨てプラスチックの使用削減について各国が具体的な行動をとるように呼びかけられました。

 2018年5月には欧州委員会から使い捨てプラスチックの使用規制案が出たり、同年6月にはカナダで行われたG7で、海洋プラスチック憲章が署名されたりしたことが大きいと思います。さらに、今年5月初めに、国際条約でプラごみの輸出入が原則禁止されました。

 日本においても、ようやくプラスチック製のストローから紙製や生分解性プラスチックなどの代替品に切り替える飲食店が出てきています。その流れは重要なはじめの一歩といえます。しかし、行政機関は「プラごみは燃やして処理するのがよい」と考え、消費者は「リサイクルされている」と誤解しています。

プラスチック汚染は将来への負の遺産

 また、プラスチックを飲食に多用すると、有害化学物質にさらされることが、ほとんど意識されていない点、報道されない点も大きな問題だと思います。その点で、プラスチックに含まれる化学物質について触れた本書の出版はタイムリーだと思います。

 プラスチック汚染でいちばん問題なのは、プラスチックが生物によっては分解されずに、細かくなり数を増やしながら、環境中に数十年以上残留する、将来の世代への負の遺産であるという点です。若い世代、そして彼らの先の世代の問題なのです。

 もう1つは、プラスチックが有害化学物質の運び屋になる問題です。フィールドで調査を重ねたり、実験を行うたびに、プラスチックから生物への有害化学物質の移行・蓄積を示す事例が増えていきます。

 この分野の研究者の中には、彼らのこれまでの考え方では、プラスチックの運び屋としての役割は説明できないとする人もいますが、大事な点はフィールドで、プラスチックが有害化学物質の運び屋となっているという事例が出てきていることです。事実を説明できるように考え方や見方を変える必要があります。

 プラスチック問題について、私たち人間に与える影響についても無視することはできません。最近ヨーロッパでの大規模な疫学調査の結果が報告されました。ヨーロッパの成人男子の精子数が40年で半減しているという深刻な報告です。原因は特定されていませんが、プラスチックに含まれる化学物質も1つの要因として考えられます。

プラスチック添加剤は生殖に影響を与える

 プラスチック汚染のことを医学関係者に講演すると、最近子宮内膜症や乳がんの方の割合が増えているが、それとプラスチックの添加剤の問題が関係しているのではと懸念される方もおります。

 プラスチックに生殖に影響を与える添加剤が含まれているのは確かです。100歩譲って、それらが飲み物には溶け出してこないとしても、ごみとして捨てられ、微細化して、魚介類の体内に入ると、それらの添加剤は溶け出して、魚介類に蓄積し、その魚介類を人間が食べることによって、添加剤にさらされることがあるというのが、マイクロプラスチックの危険性です。

 プラスチックによる健康被害が本当にあるのか、懐疑的な考え方をもつ人もいます。私はそもそも「健康被害」という言葉自体が適切ではないと考えています。「健康被害」というと使ってすぐ症状がでるものを連想しがちですが、環境ホルモンの影響は長い年月を経てのものになります。健康被害というよりも健康レベルの長期的な低下というほうがよいと思います。

 そのように直接あるいは間接的にわれわれの生殖能力や免疫力の低下の原因になる物質がプラスチックには含まれているのです。予防的な視点で避けられるものは避けるほうがよいと思いませんか? 目先の便利さでプラスチックを使い続けて、将来の世代の健康や環境を悪化させてよいのでしょうか?

 プラスチックを使った以上リサイクル(マテリアルリサイクル)することは必要なことだと思います。しかし、リサイクルにも費用がかかり、環境負荷が大きい場合もあり、実際にはリサイクルされずに燃やされているプラスチックも多いです。

 燃やせば温暖化が進みます。燃やさざるをえないようなプラスチックは削減していくべきだと思います。自分が出したプラごみが本当にリサイクルされているのかどうか、ごみの行方を想像していただきたいと思います。

バイオプラスチックは根本的な解決策?

 昨今では、バイオプラスチックが1つの解決策となる、と言われています。バイオプラスチック開発をビジネスチャンスとして、力を入れている企業も散見します。この流れは評価できます。しかし、バイオプラスチックが環境問題全体にプラスになっているのか、よく考える必要があると思います。

 例えば、バイオマスから作るプラスチックはカーボンニュートラルということで、温暖化につながらないようにもできるのですが、無尽蔵に増やせば食料生産を圧迫したり、森林破壊につながってしまう可能性もあります。全体のプラスチックの使用量を減らしていかないといけませんね。

 生分解性のプラスチックも、きちんと集めて堆肥化装置で分解すればよいのですが、環境に飛散してしまい、海に入ると生分解されずに、残留してしまう場合もあります。バイオプラスチックについてもその行方を想像してほしいですね。

 経済活動と環境保護(脱プラスチック)を調和させた循環経済(サーキュラーエコノミー)とう考え方が欧州発で始まり、世界的な流れになっています。日本だけが使い捨ての経済(一方通行の経済)というわけにはいかなくなります。日本の産業界も非科学的な抵抗や火消しはやめて、事実を直視して、脱プラスチックの国際的なルール作りの中に入っていかないと今世紀後半には国際的な経済活動が立ちゆかなくなると思います。

 温暖化のことを考えると、使い捨てプラスチックは今世紀後半以降なくさざるをえないです。プラスチックはナフサという原油の中の一成分で作られています。プラスチックを作る側のこれまでの言い分は、原油からガソリンや重油やアスファルト等をとる際に出てくるナフサを有効利用してプラスチックを作っており、プラスチックだけを作ることをやめることはできないというものでした。

2050年以降、産業が成り立たない可能性も

 ところが、パリ協定を遵守すれば、今世紀後半以降、石油を燃やすことはできず、地下に原油が埋蔵していても採掘して燃料として利用することはできなくなるのです。そうなると、逆に、プラスチックを作るためだけに原油の採掘もできないということになります。

 バイオマスプラスチックへの転換やプラスチックを使わない生産・流通の仕組みを作らなければいけない時代になります。あと30年でそういう時代が来ます。ヨーロッパはそこに向けて舵を切りました。日本もそのような転換を行わないと、2050年以降、産業自体が成り立たなくなります。

 プラスチック汚染を食い止めるためには、消費者、産業界、行政の協働が必要だと思います。

 市民が使い捨てのプラスチックを使わないようにしたり、プラスチック製容器入りの製品を選ばなくなることにより、プラスチック汚染を実際に減らすことができると思います。

 一方、生鮮食料品のパッケージ等、消費者の努力だけでは減らせない部分も多く、生産や流通の業界が素材を変更することも必要になると思います。さらに、そのようなプラスチックを減らす取り組みの公的枠組みを作る行政の役割も不可欠だと思います。みんなで協力することが必要です。

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