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上島竜兵さん、渡辺裕之さん 続く60代の急死に精神科医は「老人に着地していくことも必要」

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2022/05/15 10:00
上島竜兵さん(左)と渡辺裕之さん © AERA dot. 提供 上島竜兵さん(左)と渡辺裕之さん

 ダチョウ倶楽部のメンバーで、お笑い芸人の上島竜兵さんが5月11日未明、死去したことがわかった。その約1週間前の3日には、俳優の渡辺裕之さんが、横浜市の自宅で急死したと発表されたばかり。

 10日、渡辺裕之さんの妻で女優の原日出子さん(62)は、所属事務所の公式ホームページを通じてコメントを発表した。

「(夫は)『眠れない』と体調の変化を訴えるようになり、自律神経失調症と診断され,一時はお薬を服用していましたが、またお仕事が忙しくなって、元気を取り戻したようでもありました。しかし、少しずつじわじわと、心の病は夫を蝕み、大きな不安から抜け出せなくなりました」

 なぜ、このような悲しいことが起こるのか。上島さんは61歳、渡辺さんは66歳。両者とも60代の男性で、仕事も続けていたなど共通点は少なくない。

 精神科医の片田珠美氏はこう語る。

「一般的に60代になると初老期うつ病を発症しやすいと言われています。これは50代から60代半ばの初老期に発症するうつ病で、何らかの喪失体験がきっかけになることが多い」

 喪失体験とは、本人が大切なものを失ったと感じて「自分はもうダメだ」と思い詰めるような体験だという。

「例えば、コロナ禍の影響で経済的損失があったのならば、それは喪失体験です。思い通りに体が動かせなくなったとか、理想とする体形ではなくなったとかいう場合も、喪失体験と受け止められやすい」(片田氏)

 精神科医の香山リカ氏も、「60代の初老期うつ病というのはけっこう起きやすいものです」と語る。

「60代で、それまで社会的にも活躍していたような男性だと、年齢的にも体力的にも、これからだんだんと高齢者になっていく中で、どのように自分を高齢者として着地させていくのかが大きな課題になります」

 周りから「明るくて元気でタフ」、「頼りがいがある」、「いつまでも若い」というイメージで見られている人ほど、「老いてきた自分をなかなかみせられない」という葛藤が生じやすいという。

「60代でも、まだまだ元気で若く、新しいチャレンジをするというのは理想の生き方としてありますが、60代なりの老いの兆候や体の不調というのは誰にでも出てくるもの。少なくない人が年齢に関係なく、若さを保っている時代だからこそ、自分のイメージと現実のギャップに、想像以上に苦しんでいる人がたくさんいると思います」(香山氏)

 老いるに老いられない時代。個人差もあるだろうが、「一生現役」と考える人も少なくない。

「老いの兆候があると、ものすごくショックを受けたり、それを自分で否定しようとしたりする人は少なくありません。そして、『いっそのことここで命を絶って終わりにしたほうがいい』『老いていく自分を自分で認められない』と考えてしまう」(香山氏)

 それではどうしたらいいのか。

「エイジング(加齢)によって、体に痛みが出てきて動かしにくくなる。元気で明るくと思っていても、気分が上向かないこともある。肉体は衰え、気力もなくなって、記憶も低下するというのは、ある意味では自然の摂理です。いつまでも若い時みたいに元気で明るくいられるわけではありません。難しいことですが、そういう現実を少しずつ受け入れていくことが大切だと思います」(片田氏)

 いくつになっても元気で若々しく美しい人というのはいるものだ。

「それは素晴らしいこととは思うんですけど、やっぱり60代、70代ということを自分で認めて、あんまり無理せずに老いていってもいいんじゃないかと思います。老いていく自分も面白いんじゃないの、と思います。うまく、老いというか老人に着地していくことも必要なんじゃないかと思います」(香山氏)

 今回は60代の芸能人の急死が続いたが、男女差はあるのだろうか。

「どんな国でも、どんな文化でも、どんな時代をとっても、男性の自殺率が女性よりたいがい高いんです。これは男性の方が喪失体験に対して脆弱だからです」(片田氏)

 厚生労働省が今年3月に公表した「令和3年中における自殺の状況」によると、昨年1年間に自殺した人は全国で2万1007人。これを年代別に見ると、50代が3618人と最も多く、60代は2637人、70代は3009人、80代以上は2214人だった。じつに、50代以上が1万1478人と、全体の半数以上を占める。男女別では、男性は1万3939人、女性は7068人と、男性の自殺者数が女性の2倍近い。

 ともに老いていく伴侶はどう対応したらいいのだろうか。

「元気で若いイメージのまま、ポキッと折れてしまう人もいるので、少しでも歳を感じさせるような行動とか、見た目を含めた兆候とか、足腰が弱くなるとかが出てきたら『一緒に老いるんだし、当然じゃないの』と受け止める。『まだまだあなたはできるはず』と励ますばかりではなくて、夫と一緒に少しずつペースを緩めて生活していくくらいがいいと思います。『老いたあなたもステキよ』と、変化を楽しむ余裕が必要です」(香山氏)

(AERAdot.編集部・上田耕司)

◆「日本いのちの電話」相談窓口◆

厚生労働省は悩みを抱えている人に対して相談窓口の利用を呼びかけている。

◆ナビダイヤル 0570・783・556(午前10・00~午後10・00)

◆フリーダイヤル 0120・783・556(毎日:午後4・00~9・00、毎月10日:午前8・00~翌日午前8・00)

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