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年々ド派手に大型化するパチンコ機が、ホールにとっては悩みの種でもあるワケ

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2021/02/09 08:33 ハーバー・ビジネス・オンライン
※写真と本文は関係ありません。 photo by 栄華 © HARBOR BUSINESS Online 提供 ※写真と本文は関係ありません。 photo by 栄華

 パチンコ機の大型化が止まらない。

 先日パチンコ遊技機メーカーである藤商事が発表した「P緋弾のアリア~緋弾覚醒編~」や2月上旬に全国のホールに導入される平和の「P JAWS3 SHARK PANIC-深淵-」は、既存のパチンコ機のフォルムの常識を大きく覆す形になっているのだ。

 そして今、このパチンコ機の大型化が、業界内に様々な物議を醸しだしている。

パチンコ機の「大型化」とは?

 パチンコ機の縦幅と横幅は決まっている。島と呼ばれる遊技機の設置台の大きさは昔からどこのホールも同じだからだ。大型化と言っても、だからパチンコ機そのものの大きさが変わった訳では無い。要は島からせり出している「前飾り」と言われる台枠部分が近年大きく変化したのだ。

 その端緒と言われているのが、サンセイR&D社の「牙狼~GARO~」である。チャンス時や大当たり時には「フェイスオブガロ」と呼ばれる、等身大とも思しきキャラクターの顔が遊技台からせり出してくる。当時はその斬新な台枠演出に業界関係者は驚嘆し、ホールに導入後もファンたちの度肝を抜いた。

 そこからパチンコ機の台枠の大型化が始まる。京楽産業の「AKBシリーズ」や「必殺仕事人シリーズ」の台枠は業界関係者から「仏壇」と呼ばれるほど四角四方にあらゆる飾りが備え付けられ、またそれが遊技機の演出上の大きな役割を果たした。

 パチンコ機の大型化は、ほとんどの遊技機メーカーが拠る戦略となった。あそこのメーカーがあれくらい大きな台を作ったのだから、我々はより大きな台を。メーカー間による競争意識が高まり、遂には冒頭に紹介したような遊技機まで出されるに至る。

新規ファンやメーカーにはメリットも

 メーカーの視点で言えば、遊技機の大きさは遊技客の「アイキャッチ」としての役割を十分に果たしている。パチンコ店に入った人ならば分かるのだろうが、通路から約40台前後のパチンコ台が設置されている島を見ると、どこに何の遊技機が設置されているのかがよく分からない。そのような場所で、ひと際目を引く大型パチンコ機があれば一目で「あれだ」と分かる。それがパチンコ機の稼働に繋がる。

 また大型パチンコ機は液晶画面以外の様々な個所の演出が施されており、遊技客を飽きさせない工夫も凝らされている。往年のパチンコファンであれば、パチンコは玉の動きを楽しむものだの、演出はシンプルなほうがより楽しめるだの、郷愁を滲ますかのような思いを吐露するのだが、ライトユーザーや新規ユーザーは、バラエティに富んだパチンコ遊技機を選択する可能性が高い。

 この20年間右肩下がりのファン減少に歯止めをかけるために、少しでもパチンコ機に興味を持ってもらうために、メーカー側は様々なアイデアを捻りだし、昔からはとうてい考えも及ばなかったようなパチンコ機を作っているのだ。

 しかし、実際にそのパチンコ機を設置し、ファンを呼ぶ側のホールは、パチンコ機の大型化を必ずしも歓迎していない-。

ホール側が「大型化」を嫌う3つの理由

 パチンコ店の側からは、パチンコ機の大型化に対して賛意よりも反発の声が大きく聞こえる。

 その理由は3つだ。

 一つは、パチンコ機の大型化が遊技機価格の高騰に直結しているという点。パチンコ機・パチスロ機問わず、遊技機の購入価格は年々高騰している。ほんの10年ほどまえでは1台35万円程度であったものが、今では1台50万円もする。パチンコ人口は減り続け、来店客が目に見えていなくなり、売上も大きく下がった現状で遊技機価格だけが高止まりの気配も見せない。パチンコ機の大型化は部品の大量利用の他、様々な機能が付加されており、それが遊技機価格の高騰の原因であると、少なくともホール側は思っている。そんな大きな台はいらない。その分価格を下げて欲しいというのがホール側の本音だろう。

 次の理由は、入替時の業務負担である。パチンコ店は平均的に月に2回~3回のパチンコ機の入れ替えを実施する。その際にパチンコ機の取り付けはホールスタッフ、もしくはホールが依頼した専門業者が行うのが常だ。昨今の大型パチンコ機の重量は50キロ以上になるものもある。とうてい一人の力では島への設置は勿論、持ち運びすら出来ない。そのため人を多く雇うか、より長い時間を掛けるしかなくなり、ホール側の金銭的な負担も嵩む。

 パチンコホールの組合である全日本遊技業協同組合連合会(全日遊連)も、このパチンコ機の大型化に関して、ホールの金銭的な負担、スタッフの労働の負担の両側面から、メーカー側に再考を促す声明も出されるほどだ。

 3つ目の理由は、パチンコ機の大型化により、パチンコ機の上に設置されているデータ機器が見えなくなること。ホール側にすれば、そのパチンコ機のデータを一目で確認することの出来るデータ機器にも多額の資金を費やしている。お客さんの多くは、その大当たりデータを参考に自分が打つ遊技台を選ぶからだ。しかしパチンコ機の大型化によって、そのデータ機器が大きな飾りつけに遮られ視認出来ないのだ。何のために高いお金を払ってデータランプを取り付けているのか。ここからもホール側の嘆息が聞こえる。

パチンコ機大型化の本質的理由とは?

 パチンコ機が大型化に舵を切った理由は何なのか。パチンコホールという空間において、何社ものメーカーのパチンコ機がびっしりと並べられる。客は減る一方。ホールに資金が潤沢にある訳でもない。そのような点を考慮すれば、マーケティングの観点からもまずはお客さんに遊んでもらうための動機付けが必要になるし、そのためのアイキャッチの役割を果たす豪華な飾りつけは必要なのだろう。

 しかし筆者は、パチンコ機の大型化の理由の本質は別のところにあると思っている。

 一言で言えば「規制」だ。政府によるギャンブル等依存症対策の流れの中で、パチンコ業界は様々な内外の規制を受けることになった。遊技機の射幸性の抑制がその最大の規制であるが、それと同時に、パチンコの遊技性も大きく規制されてきた。出玉の幅だけではなく、遊びの幅までも、昔とくらべ大きく縮められてしまったのである。

 出玉と遊技性。いわゆるパチンコ機の内部仕様に関わる点が大きく規制されてしまっては、残すは外部を変えるしかない。結局は、そのパチンコメーカーによる、外面の豪華さを競う戦いが激化した結果、パチンコ機は滑稽なほど肥大化することになった。

 ただこれが「希望」なのか「諧謔(かいぎゃく)」なのかは分からないが、コロナ禍で不況に喘いだパチンコ業界の中で、抜群の稼働結果を残し、大勢のお客さんの支持を得て、今ではどこのパチンコ店もこぞって導入に走るパチンコ機が、結局は外面に何の飾りつけも無い、「P大工の源さん 超韋駄天」という、普通の大きさのパチンコ機であったことを最後に付記しておく。

<文/安達夕 写真/栄華>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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