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日本人観光客が知らないハワイの非常事態 カンニング竹山「ハワイ好きならTMT問題に目を向けて」

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/08/14 11:30
カンニング竹山/1971年、福岡県生まれ。お笑い芸人。本名は竹山隆範(たけやま・たかのり)。2004年にお笑いコンビ「カンニング」として初めて全国放送のお笑い番組に出演。「キレ芸」でブレイクし、その後は役者としても活躍。現在はお笑いやバラエティー番組のほか、全国放送のワイドショーでも週3本のレギュラーを持つ(撮影/小原雄輝) © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 カンニング竹山/1971年、福岡県生まれ。お笑い芸人。本名は竹山隆範(たけやま・たかのり)。2004年にお笑いコンビ「カンニング」として初めて全国放送のお笑い番組に出演。「キレ芸」でブレイクし、その後は役者としても活躍。現在はお笑いやバラエティー番組のほか、全国放送のワイドショーでも週3本のレギュラーを持つ(撮影/小原雄輝)

 日本やアメリカなどがハワイ島マウナケア山に建設しようとしている天体望遠鏡「TMT(Thirty Meter Telescope)」に対する抗議運動が激化し、33人の逮捕者が出たことで、ハワイ州のデービッド・イゲ知事は7月、非常事態宣言を発令。混乱が続いている。かつてハワイでかき氷店を営んだこともあるカンニング竹山さんがこの夏、現地で見聞きしたことからTMT問題を考える。

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 今年もたくさんの日本人観光客がハワイを満喫している時期ですよね。オアフ島のワイキキ周辺でビーチに行ったり、買い物したり、食事したりしているだけでは目につかないかもしれませんが、ちょっと車で走ったりするとデモに遭遇することもあると思います。それは、日米中とインド、カナダがTMTという巨大な望遠鏡をハワイ島のマウナケアに建設しようとする計画に反対するデモ。日本ではなかなか報道されていないので、知らない人が多いと思います。

 TMT国際天文台のホームページなどによると、この望遠鏡は鏡の大きさが幅30メートルで、ハッブル宇宙望遠鏡より12倍以上の解像度になるんだそうです。建設予定地はマウナケアのてっぺんから1キロ以上離れていて、神殿の跡地とかお墓が無いところ、動植物や水質、景観への影響が無いところを選んでいるらしい。それでもハワイ島の14%の土地からこの望遠鏡が見えることになり、ペンキで反射しないようにしたりして、なるべく景観が崩れないように努力はするんだそうです。

 既に山頂近くには13基の望遠鏡があって、それを壊して作ったらいいんじゃないかっていう意見もあるかもしれないけど、それは自然への影響が大きくて、山を削ったりしなきゃいけなくなるから、別の場所に新たに作ることになっているらしい。建設に18億ドルかかり、日本はその5分の1を負担するようです。

 経済的な面で言うと毎年100万ドルのリース料のほか、約140人の雇用に毎年2600万ドルが支払われたりもするから、ハワイにとってはメリットもある。ところが、なぜ反対しているのか?

 それはマウナケアという山はネイティブ・ハワイアンの聖地だから。日本人の感覚で言うと、伊勢神宮とか富士山の山頂に国際組織が巨大ビルと建てるようなものなんだと思います。ただ、彼らの怒りはこの一つの望遠鏡に対するものじゃなく、長い歴史の積み重ねなんです。

 ハワイという土地にはもともとネイティブ・ハワイアンが住んでいて、そこにアメリカが進出し、我々のような外国人がどんどん入っていったわけです。つまり、ハワイ諸島全体の土地を外国人が奪っていった。ホテルの土地なんかも軍隊が奪ったものだったりするし、例えばオアフ島のワイキキは、昔は水田や農地だったんだけど、税金をバカみたいに上げて農民を追い出したりしたわけです。そのときに反対運動した人が強制的に刑務所に入れられた歴史もあって、だからハワイアンにしてみれば、マウナケアという自分たちの聖地を侵すことだけは許さないという最後の砦なんですよね。だから是が非でも守りたいわけです。それに「13基まで」という取り決めもあり、それ以上は許さない、またデカいものを作るなんてとんでもない、となっているんですよね。

 先住民を守り伝統を残していくためにハワイには、その子孫のための学校もあるんですよ。何親等までという決まりがあって、純粋な日本人とかは入れないようになっているらしい。だから、今回のこともハワイアンの土地を残そうという意味で多くの人が反対し、最近ではハワイに関係する芸能人も抗議活動に参加しています。

 そもそも山頂付近に13基の望遠鏡ができた経緯はというと、1960年のチリ地震でハワイ州で2番目に大きな街であるハワイ島・ヒロに津波が来て60人以上の死者・行方不明者が出たのがきっかけだったらしいんです。(ちなみにその津波は日本にも来て、139人が犠牲になりました。いまもヒロには津波博物館があります)

 それによって観光や経済が崩壊したハワイに事業を誘致しようと、ハワイの商工会議所のアキヤマ・ミツオさんという日系人の方が日本やアメリカの大学とかに手紙を出して、マウナケア山頂での天体観測を提案したわけです。それから、ハワイ大学、イギリス、NASAなど各国が望遠鏡を作り、日本の「すばる望遠鏡」も1999年に試験観察が始まりました。

 TMTは反対運動によって、いまのところ2年間は工事が止まっていますが、今後どうなるかはまだわかりません。

 ここが難しいんですが、この望遠鏡がものすごく悪いものなのかというと、人類の宇宙開発のためにはものすごく役に立つもの。大西洋のスペイン領カナリア諸島という代替案も出ているんですが、標高などの条件がマウナケアより悪く、ここに作った方が良いということらしい。

 実際、先週までハワイに滞在していて、現地のニュースとか友人に聞いたり、街を歩いたりした肌感覚では、ハワイに住む人たちはTMTのことを知っていて、ネイティブ・ハワイアンとかしっかりハワイに根付いている人、ハワイが好きな人たちは反対している。ただ、意外とみんながめちゃくちゃ反対しているかというと、そうでも無さそう……という感じです。いくつかの世論調査では賛成6割~7割ぐらいで、反対3割弱ぐらいという状況。現地でアメリカのニュース番組も見ていましたけど、ハワイ版のニュースではTMTもやるけど全国版では流れていないようでした。

 ただ、僕が聞いた感じだと、若い人とかハワイに住んで短い人とかの間では、デマというか誤解も結構あるのかなと。実際より多くお金が入ると思っていたり、日本単独のプロジェクトだと思っていたり、マウナケアの山頂は旗が立っていて霊峰みたいになっているんだけど、そこに建てようとしているとか。そういうことも意外とあったのが現状でした。

 個人的にどう考えるかはすごく難しくて、というのも僕は宇宙も好きだから、ハッブル宇宙望遠鏡より何倍も見えるものができるとなると、「すごい! 良いな!」と思う気持ちもあります。ただ、ネイティブ・ハワイアンの人たちの気持ちもわかるなと思う。それはお金で測れないことだし、本当に世界中でここしか無いのか!?とも思う。だから日本でももっと報じられてほしいと思います。

 だって、日本人もハワイは大好きで、みんな「ここにパワースポットがある!」とか言って行くじゃないですか。その最高峰がハワイ島のマウナケアですからね。そこで日本が関わる事業に反対運動が起きているわけです。ネイティブハワイアンの土地が奪われた歴史の中には、欧米人だけじゃなく、日系移民も入っているかもしれない。その人たちも当初は外国人として移住してきて畑をやったり、事業で成功した人もいるわけだから。複雑ですよね。

 ハワイに行きたい、マウナケアの山頂ツアーに行ったことがあるという人もいるかもしれないけど、今のハワイの本当の問題という一面を考えてみてはいかがでしょうか。ハワイが好きならちゃんと知っていても良いニュースなのかなと思います。

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