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昭和の長寿研究書の食と寿命が分析した「白米の大食で早死に」

NEWSポストセブン のロゴ NEWSポストセブン 2018/08/09 16:00
絶版となった後も専門家の間で愛蔵されている © SHOGAKUKAN Inc. 提供 絶版となった後も専門家の間で愛蔵されている

 絶版となった後も、専門家の間で愛蔵され、語り継がれる一冊の本がある。食生活と長寿の関係に詳しいイシハラクリニック院長の石原結實(ゆうみ)医師も、その本を大切に所有する1人だ。

「医学生の頃に手に取った名著です。今でも私の知識の根本にあって参考にしています。全国各地に先生自ら足を運び、そこで発見、考察した“食生活と寿命の関係”には鋭い先見の明があり、現代にも通じる知恵であふれています」

 その本は、1972年に初版が発行された『日本の長寿村・短命村』(サンロード出版)。著者は東北大学名誉教授で医学博士だった近藤正二氏(1893~1977年)である。

 衛生学を専門とする近藤博士は食生活や生活習慣が寿命に与える影響に大きな関心を持ち、1935年から1971年の36年にわたり、北海道から沖縄の八重山諸島に至るまでの全国津々浦々990か所を、自らリュックを担いで訪ね歩いた。場合によっては1つの村に2か月もの間、長期滞在し、綿密に調査を行った。

 近藤博士の研究には、随所にこだわりが見られる。その1つが、「平均寿命という数字を使わないこと」だ。

 たしかに、その村の住人の死亡年齢を単純に平均すれば、「村の平均寿命」は導き出すことができる。ただし、それでは「長生きする村民がどれだけいるか」がわからず、それこそが重要な点だと、博士は考えた。

 そこで博士は「人口における70才以上の高齢者の割合(長寿率)が高い村」を《長寿村》と呼び、「若年死が多く、70才以上の高齢者が少ない村」を《短命村》と定義した。1950年当時の全国の平均寿命は男女ともに60才程度。現在よりも、女性でいうと25才以上も短い。そんな時代に「70才以上」といえば、かなりの“ご長寿さん”だ。博士は、「どうすれば長寿になれるか」に徹底的にスポットを当てたという点で、当時から異色の研究だった。

◆今も色あせることはない

 最終的に近藤博士が口述したものを編んだこの本は、発刊後、十数度の増版を重ね、一部の研究者の間で“伝説の一冊”と知られるようになった。1991年には『緑黄野菜・海藻・大豆の食習慣が決める 新版 日本の長寿村・短命村』として生まれ変わったが、現在は出版元が閉じるなどし、残念ながら絶版となってしまっている。

 視線を現代に戻そう。ここ数年、医師による食事解説本が一大ブームになっている。そのブームに先鞭をつけ、計64万部を売り上げている『医者が教える食事術 最強の教科書』(牧田善二著・ダイヤモンド社)では、その序章で近藤博士の『日本の長寿村・短命村』を紹介した。《近藤博士のフィールドワークと最新データには驚くべき共通点がある》とし、《内容は今も色あせることなく、現代に生きる私たちに非常に重要な示唆を与えている》と高く評価している。

 また、発売10日で10万部という驚異の売り上げを記録した『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)の著者、UCLA助教授で医師の津川友介医師も「同じ日本人であっても、住んでいる場所によって寿命が異なることに注目した研究が、当時行われていたことは興味深い」と話す。

 博士の情熱は、あなたのこれからの人生に大きな影響を与えるはずだ。本記事では、紙幅の関係上、著書の内容をすべてお伝えできないのは残念だが、そのエッセンスをお届けしたいと思う。

 近藤博士が見出した「長寿村・短命村」に共通するルールとは一体どのようなものなのか。

◆白米の大食で早死に

 消化もよく、食物繊維も含まれるため「白米は食べるべき」だとされていた当時、近藤博士は衝撃的な発見をした。

 東北地方の米どころ、とくに秋田県の村では、成人が1日に6~7合という大量の白いご飯を食べる習慣があり、おかずとして、大根やなすのみそ漬けなど塩気があるものを添えていた。これらの村では稲作は盛んだが、畑を作らないので野菜はほとんどない。そのように米を大量に食べ、野菜をとらないという食事を若いときからしている村では、40才頃から脳溢血で倒れる村民が多く、亡くなったり、後遺症を抱える人の割合が高い短命村であった。

 同様に、三重県の南島町(現在の南伊勢町)の漁民集落や須賀利(同・尾鷲市須賀利町)、桂城(同・紀北町)、石川県輪島など白米を大食する地区で短命の傾向が見出されている。

 一方、多くの長寿者がいる村では米をあまり食べていないという傾向に、博士は気づいた。代表的なのは、島根県の隠岐島や鹿児島県の沖永良部島。70才以上の長寿率が通常4%程度のところ、7~8%もあったのだ。沖永良部島での調査で興味深いのは、島内で唯一田んぼを持ち、米を偏食する後蘭(ごらん)集落だけが短命であったことだ。

 厚生労働省と農林水産省は共同で、健康的な食事の指標として「食事バランスガイド」を制定している(2005年)。それによれば、1日に茶碗3~5杯のご飯を食べることが推奨されている。

 しかし、前出の津川医師はこう話す。

「白米の摂取量はできるだけ減らした方がいいことを示すエビデンス(科学的根拠)がいくつも出ています。世界的権威のある英国の医学雑誌に、白米の摂取量が1杯(158g)増えるごとに糖尿病リスクが11%上昇したという結果があるほか、日本人を対象にした研究でも、白米をとればとるほど糖尿病になる可能性が高くなることが明らかになっています」

 ただし、これが玄米であれば違ったはずだ、と津川医師が続ける。

「白米や小麦粉のような精製された白い炭水化物は血糖値を上昇させ、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化による病気のリスクを高めることがさまざまな研究によりわかっています。ただし、玄米や全粒粉などの精製されていない茶色い炭水化物は逆に心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などのリスクを低下させると報告されています。1日50gの白米を玄米に置き換えると、糖尿病のリスクが36%下がると推定されています」

 最先端の研究結果を踏まえても、白米の摂取量は減らした方がいい。今から50年以上前に、常識を疑い、警鐘を鳴らしていた博士の研究には驚嘆するばかりだ。

※女性セブン2018年8月23・30日号

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