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症状の改善1日早める新型コロナ薬「ゾコーバ」 緊急承認の背景

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2022/12/06 08:00
新型コロナウイルス感染症の治療薬「ゾコーバ」を製造する様子(photo 塩野義製薬提供) © AERA dot. 提供 新型コロナウイルス感染症の治療薬「ゾコーバ」を製造する様子(photo 塩野義製薬提供)

 新型コロナウイルスの「第8波」が迫るなか、塩野義製薬が開発した感染症の経口薬「ゾコーバ」が緊急承認された。国産初の治療薬として期待がかかるが、どんな人が処方の対象になり、どのような効果があるのか。2022年12月12日号の記事を紹介する。

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 厚生労働省は11月22日、塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス感染症の経口薬「エンシトレルビル フマル酸(販売名・ゾコーバ)」を緊急承認した。重症化リスクが低く、比較的症状の軽い人が使える初の薬だ。

 軽症や中等症Iの感染者を対象にした経口薬はすでに2種類、点滴薬は4種類あるが、いずれも、高齢者や基礎疾患のある人ら、重症化リスクの高い人が対象だった。

 ゾコーバは症状が出始めてから72時間(3日)以内に服用を始め、1日1回、5日間続けて飲む。12歳以上が対象だが、妊婦や妊娠している可能性のある人は対象外だ。

 ゾコーバと一緒に飲めない薬が36種類あるので、持病ですでに服用している薬がある人は、飲んでいる薬の種類をもれなく医師に伝え、チェックしてもらう必要がある。

 緊急承認前の治験(臨床試験)では、発熱や倦怠(けんたい)感、せき、のどの痛み、鼻水や鼻づまりといった5種類の症状から回復する期間を、約8日間から約7日間に約24時間、短縮する効果があった。

 また、服用を始めて4日目の体内のウイルス量は、偽薬を投与されたグループと比較して約30分の1に減少した。

 塩野義製薬が承認申請をしたのは今年2月。同社の当初の臨床試験の実施計画では、頭痛や悪寒、息切れなども含めた合計12の症状について偽薬を投与されたグループと比較することになっていた。明確な差が出ず、同社は解析対象を5種類の症状に絞って比較し、効果があると主張した。

■初めての「緊急承認」

 6月と7月に開催された厚労省の専門家の会議では、この点などに批判が出た。臨床試験は開始前の計画通りに実施するのが原則で、途中で解析対象を変更することは通常、認められていない。そうでなければ、都合のいい結果が出るようにいくらでも操作することができるからだ。専門家会議では、「有効性を示すデータの信頼性が高くなく、効果が推定できるほどではない」として継続審議となった。

 その後、同社は、オミクロン株の流行により、感染時によくみられる症状が変化しているなどの理由で、計画を変更した上で臨床試験を継続。医薬品の審査を担う独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)も、オミクロン株の特徴を踏まえた計画変更は「一定の合理性がある」と認め、緊急承認に至った。

 これまでの新型コロナウイルス治療薬のほとんどは、海外ですでに承認されていることを条件に承認する「特例承認」だった。ゾコーバは、海外での承認を前提とせず、効果についても「推定」できればいいとされる「緊急承認」の制度で初めて承認された薬だ。承認期限は1年間で、その間に、有効性などに関する追加のデータを提出することが求められている。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2022年12月12日号より抜粋

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