古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

GW10連休に"休めない"大学生が続出!? その理由とは?

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/04/27 08:00
ゴールデンウィークの授業日を伝える大学からの案内文 © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 ゴールデンウィークの授業日を伝える大学からの案内文

 今年のゴールデンウィークは暦の上で10連休となる。4月27日(土)~5月6日(月・振り替え休日)の10日間。これほど休みが続くのは、5月1日が「即位の日」として祝日(休日)になり、祝日法に基づいてその前後の4月30日、5月2日が休日となったことによる。

 大学生はゴールデンウィークでいっぱい休めると思いきや、いくつかの大学の学生は喜んでいない。連休中でも授業を行う大学があるのだ。たとえば、南山大は6日間、龍谷大は5日間、立教大は4日間、一橋大は3日間、休日にもかかわらず出席しなければならない。これは大学によってかなりバラツキがあり、早慶上智は1日だけ授業を行う。東京工業大、津田塾大などは暦通りの10連休になる。

 どういうことだろうか。大学の授業時間数について、「大学設置基準」にこう記されている。

「第二十一条  各授業科目の単位数は、大学において定めるものとする。

2  前項の単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。

 一  講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。」

 大学関係者のあいだでは「15週ルール」「15時間ルール」と呼ばれている。1単位を構成するためには最低15回(15週分)の授業が必要と受け止められているからだ。それゆえ、多くの大学は半期で15回の授業を行えるようなスケジュールを組むこととなった。

 ところが、ゴールデンウィークで休日が多くなると、15回を確保するのが困難となる。そこで、休日に授業を実施するという措置が講じられることとなった。大学にすれば、大学設置基準を厳守しなければ、文部科学省からペナルティーを科せられるかもしれない、という思いを抱く。たとえば、私学助成の打ち切りだ。

 大学関係者は頭を抱えた。「15週ルール」を守るためには、祝日授業、あるいは、補講を増やすしかない。いつ授業を行うかは、個々の大学の判断に任される。それゆえ、連休中の祝日授業扱いにバラツキが見られるのだ。

 たとえば、京都大はこう記している。

「4月30日(火曜日・休日)及び5月2日(木曜日・休日)は授業日程の確保及び学内行事の都合上、授業実施日とする」(大学ウェブサイト)

 休日を「確保」して、大学設置基準を順守するわけである。

 おもな大学の学年暦(2019年度の授業スケジュール)を調べてみた。ゴールデンウィーク期間中の授業実施日は次のとおり。

●6日間

南山大(4月29、30日 5月1、2、3、6日)

●5日間

龍谷大(4月29、30日 5月1、2、6日)

●4日間

国際基督教大(4月29日 5月3、4、6日)

立教大(4月29、30日 5月4、6日)

●3日間

東京大・教養学部<駒場キャンパス>(4月27、30日 5月2日)

一橋大(4月29、30日 5月6日)

立命館大(4月29、30日 5月2日)

学習院大(4月29、30日 5月2日)

中央大・文系学部、国際情報学部<多摩、市ケ谷田町キャンパス>(4月29、30日 5月6日)

甲南大(4月27、30日 5月2日)

福岡大(4月29、30日 5月6日)

●2日間

京都大(4月30日 5月2日)

東洋大(5月4、6日)

駒澤大(4月29日 5月6日)

●1日のみ

東京外国語大、お茶の水女子大、横浜国立大、神戸大、青山学院大、慶應義塾大、上智大、専修大、法政大、明治大、早稲田大、中京大、同志社大、関西学院大(すべて5月6日)

●なし

東北大、東京工業大、金沢大、名古屋大、広島大、首都大学東京、大阪市立大、北星学園大、東北学院大、津田塾大、西南学院大

「15週ルール」を守るための連休対策は、次のように分類される。

(1)休日にできる限り授業を行う(休日授業日が3日間以上)。補講や他の曜日への振り分けを減らす。

(2)休日に授業を実施する回数を抑える(同・1、2日間)。補講や他の曜日への振り分け、あるいは、本来は休日である土曜日への振り分けを行う。

(3)休日に授業を行わない。補講、他の曜日への振り分けを最大限に増やして、15週の帳尻を合わせる。たとえば、大阪市立大は5月6日(月=休日)を暦通り休みにして、この日の授業を5月8日に充てている。

 大学関係者(学生、教職員)のあいだでは、こうした「15週ルール」厳守の評判は良くない。

 専修大法学部の岡田憲治教授は、半期15コマ厳守が大学にとって大変な負担になることについて、次のように話す。

「教員にはこれに『追試採点』や『オープンキャンパス』などが加わり、夏休みは研究をする期間としてはギブアップする皆さんが多いです。一方、前期15コマを厳守しないで、現場の実情を考えて上手に弾力的運用をしている大学もいくつかあります。それなのに、やはり多くの大学では、ひたすら『何か』におびえて忖度し、教務課の職員は疲弊します。『補助金を減らされる』ことへの恐怖を通じた、自発的服従です」

 いま、大きなテーマになっている「働き方改革」に逆行するという声も出ており、法令を改正するなどして、「15週ルール」をもっと柔軟に適用できないかと望む大学教員は少なくない。毎年、月曜日は本来の祝日に加えて、日曜日と重なった祝日の振り替えで、休みの日となるケースが多い。それゆえ、月曜日に授業を入れることを好まない大学教員もいる。補講などがイレギュラーに行われ、スケジュールを立てにくいからだ。

『大学図鑑!』監修者で学生の意識、動向に詳しいオバタカズユキ氏はこう話す。

「学生はいまとても忙しい。それは授業のコマ数が多すぎて、しかもみんなまじめに出席するからです。厳しい経済状況にあって、多くの学生はアルバイトでクタクタになりながら、授業に出ています。サークル活動とか、飲み会とかに参加する余裕もなくなった。授業のコマ数を思い切って減らして、学生がもっと自由に学生生活を送れるようにしたらいい。学生が予習・復習含めそんなにたくさん勉強をこなせるものではないことを、大学教員は知っているはず。もっと緩くていいでしょう」

 今回のようにゴールデンウィークをつぶすような「15週ルール」が改められる動きはない。大学はお上の言うことには逆らえず、従うばかりだ。

 大阪市立大はウェブサイトにこう記している。

「近年、祝日の増加・変更や大学行事に伴う休講措置等により、授業・試験にあてることのできる日数が減少しています。そこで、本学では振替授業(・試験)日を設けるとともに、さらに回数が不足する場合は、休業期間や研修期間に授業・試験を実施する場合があります」

 2020年になると、関東圏の大学ではゴールデンウィークが例年以上につぶれてしまう可能性が高い。東京オリンピック開催への対応である。

 明治大はこんな恐ろしい告知を出した。

「2020年度学年暦【春学期】の主な変更点

 東京オリンピックの開催期間中(2020年7月24日から同年8月9日まで)は授業及び定期試験を実施しないで済むよう以下の変更を行います。

1.全体の授業スケジュールを東京オリンピック開催期間と重複しないよう繰り上げます。

2.ゴールデンウィーク中の全ての祝日において休日授業を実施します。」(大学ウェブサイト、2018年7月26日)

 東京オリンピック期間中に授業、試験を行わないのは、オリンピックのボランティア参加者への配慮である。国、東京都、JOC(日本オリンピック委員会)は若い人たちにボランティア参加を求めているが、大学もそれに対応した形だ。こうした動きについて、筑波大を例に引き、神戸女学院大名誉教授の内田樹氏がツイッターでこう批判した。

「東京五輪優先主義で各大学が学年暦を作成し始めています。筑波大では原則として大会期間中は授業・試験なし。学期の開始日を早め、5月の連休も土曜日も授業。大会中に授業・試験があった科目に欠席したボランティア学生は大学に対し特別な配慮を求めることができる。『学徒動員』ではないですか」(2019年3月16日)

 オリンピックへの対応で、「15週ルール」をこれだけ強引に、いや柔軟に運用して、ゴールデンウィークをつぶすことができるのだから、反対に、ゴールデンウィークを暦通りに休みとすることもできるはずだ。

 大学は文科省と話し合い、「15週ルール」によって休日に授業を行わざるを得ない現状を改善すべきである。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)

AERA dot.の関連リンク

image beaconimage beaconimage beacon