星野リゾートが2020年1月から運営する「ザ サーフジャック ホテル & スイム クラブ」の名物プール。サーフジャックは1室2万円台で宿泊できる、ホノルル市内で人気ランク5位のホテルだ(写真:星野リゾート) © 東洋経済オンライン 星野リゾートが2020年1月から運営する「ザ サーフジャック ホテル & スイム クラブ」の名物プール。サーフジャックは1室2万円台で宿泊できる、ホノルル市内で人気ランク5位のホテルだ(写真:星野リゾート)

 「アメリカで初めての運営拠点。1960年代のミッドセンチュリーハワイアンな雰囲気をすごく出している」

 高級ホテル・旅館を運営する星野リゾートの星野佳路代表は、世界的リゾート・ハワイへの進出に期待感をにじませた。

 10月9日、星野リゾートはアメリカのハワイ州ホノルル市街の人気ホテル「ザ サーフジャック ホテル & スイム クラブ」の運営に乗り出すと発表した。星野リゾートにとって、アメリカで初めてのホテル運営となる。

古き良きサーフィンカルチャーを体現

 サーフジャックはワイキキビーチから徒歩圏内の好立地にある。館内には地元のアーティストが手がけた装飾を随所にちりばめ、「古き良き時代のサーフィンカルチャー」(星野代表)をコンセプトとしている。アイコンはフォトジェニックなプールで、多くの利用者がインスタグラムに「#surfjackhotel」とハッシュタグを付けてプールの写真を投稿している。

 館内のダイニング「マヒナ&サンズ」でも、ホノルル出身のシェフがハワイ産のオーガニックな食材を厳選し、「アイランドスタイル」というハワイ特有の料理を提供。星野リゾートが重視する「ご当地感」に富んだホテルだ。

 ホテルは2020年1月15日に「星野リゾート サーフジャック ハワイ」へブランドを変え、現在の従業員を引き継いで再開業する。客室数は112室で、公式サイトにおける宿泊料金は1室約2万円(2019年11月)となっている。

 世界有数のリゾートであるハワイはここ10年、観光客数を右肩上がりに増やしている。2018年には989万人が訪れ、うち15%を日本人が占めている。ハワイ人気を受け、全日本空輸が今年5月、520席の大型旅客機をハワイ路線のためだけにウミガメの特別塗装で投入するほどだ。

 こうした勢いを背景に、ハワイ州にあるホテルの平均客室単価は約278ドルとニューヨークを追い抜いた。日本の大手バス会社・国際興業傘下の京屋グループが進める「シェラトン・プリンセス・カイウラニ」の再開発や、今年10月の三井不動産による「ハレプナ ワイキキ バイ ハレクラニ」のリブランドオープンなど、大型の改装・開発が目白押しだ。

ハワイのリピーター客が主要顧客に

 サーフジャックが主要顧客とするのは、ハワイへのリピーター客だ。ハワイの観光客は60%超がリピーターで、星野代表は「何度もホノルルに行く人々の目当てはワイキキビーチだけでなく、アロハなカルチャーや人間関係、夜のエンターテインメントを楽しめる都市機能そのもの」と強調する。このようなリピーターのニーズを満たすべく、サーフジャックのプール周辺では映画の上映、DJが懐かしいヒット曲をかけるパーティー、ハワイアンカルチャーのワークショップなど、さまざまなイベントを実施している。

 実は星野リゾートがサーフジャックに求める役割は、1ホテルとしての収益貢献にとどまらない。真の狙いは星野リゾートが抱く北米進出、さらには全世界展開という野望の実現だ。

 星野リゾートは以前から、地域依存リスクを低減するために、世界展開のビジョンを描いている。星野代表は「近年、訪日外国人の増加と比べて、20代を中心に日本人による旅行が減少し、観光消費額が何度か減少している。

 こうした日本観光の『不都合な真実』を踏まえ、国内マーケットへ依存することにリスクを感じている。国内でホテルを増やしたほうが楽な時期に海外へ進出し、アメリカ・ドルやユーロでも稼げる運営会社にならないと、いざというときに手遅れになる」と危機感を募らせる。

 これまで星野リゾートが海外で運営してきたホテルは3つある。2015年4月から2019年5月まで運営を受託していた「星野リゾート Kia Ora ランギロア」(フランス領タヒチ)、2017年1月開業の「星のやバリ」(インドネシア)、2019年6月開業の「星のやグーグァン」(台湾)だ。

 今回のサーフジャックは、日本人の集客が見込めるアジア・太平洋における戦略の延長線上にあるように見えるが、これまでの海外3ホテルとは異なり、北米進出の足がかりという重要なミッションを担っている。

 ハワイは観光客の43%を西海岸、22%を東海岸のアメリカ人が占める。そんなハワイのサーフジャックを傘下に収めることで、「アメリカの旅行代理店とつながることや、現地のスタッフを星野リゾートらしい仲間に育てていくことで、アメリカに打って出るためのノウハウを蓄積する拠点」(星野代表)となりうる。

中国、ヨーロッパへの進出も検討

 アメリカ進出の形態は現時点で、温泉リゾートホテルを考えているようだ。星野代表はアメリカでの開業について、「ロサンゼルスやニューヨークではないと思う。山脈地帯など、アメリカにある温泉地のどこかではないか」と語る。

 星野代表によれば、アメリカのみならず中国でも具体的な運営案件が存在し、ヨーロッパへの進出も目指しているという。これまでの世界展開を第1段階とするなら、サーフジャックは星野リゾートにとって第2段階の試金石なのだ。

 それだけに、サーフジャックで実績を残すことがアメリカ本土進出の最低条件となる。課題はアメリカ本土からの集客だ。

 「顧客の20%を占めるオーストラリアやニュージーランドからの集客は『星野リゾート トマム ザ・タワー』が人気のため、現地のエージェントとの関係を生かせる。だが、アメリカ本土からの集客は、これまで運営を担ってきたアメリカのアクア・アストン ホスピタリティーが強かった。この水準をどれくらい維持できるか」(星野代表)がカギとなる。

 星野リゾートの高いブランド力を生かし、サーフジャックを日本人観光客で埋めることもできる。ただ、星野代表は「一時的には日本人でカバーするが、(恒久的に)日本人ばかりにするのはよくない」と、より難易度の高いアメリカ本土からの集客維持に挑む姿勢だ。

 そのためには、アメリカ本土において、現地代理店との関係深化や一層のブランド訴求、認知度向上が欠かせない。逆にこれが実現すれば、念願のアメリカ本土進出が成功する公算も大きくなる。

 「世界の星野」の実現には、楽園・ハワイでの成功がカギを握っている。

この記事内のリンクから商品を購入されるとマイクロソフトはアフィリエイト広告収入を得ることがあります
フィードバック

興味のあるストーリーが見つかりましたか?

Facebook で「いいね」を押すと、似たようなストーリーをご覧いただけます


MSN にご意見ご感想を送信します

ご入力いただき、ありがとうございました!

サイトの全体的な評価をお聞かせください: