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「タバコの葉」でつくるインフルワクチン、2020年発売目指す

Forbes JAPAN のロゴ Forbes JAPAN 2018/04/07 12:30 Arlene Weintraub

© atomixmedia,inc 提供 米国で過去最多の感染者を記録したインフルエンザシーズンが到来する前の2017年9月、カナダのバイオテクノロジー企業「メディカゴ(Medicago)」は、タバコを使ってつくるインフルエンザワクチンについて、臨床試験の第3段階目を始めたところだった。

彼らは、その珍しい製造手法によってつくられたワクチンが、現状の手法に比べて少ないコストで大量生産できると示すこと、そして、多くの人々をインフルエンザから守ることを望んでいる。

メディカゴは、インフルエンザワクチンに革命を起こそうとしている企業のひとつだ。インフルエンザワクチンは、長年にわたって多くの改善がされてきたにもかかわらず、しばしばずる賢いウィルスにやられてしまう。簡単に言えば、インフルエンザの問題とは、ウィルスが素早く変異していくためにワクチンが対応できないサブタイプが生まれてしまうことだ。

さらに悪いことに、多くのインフルエンザワクチンは卵のなかで育てられるため、製造に時間がかかるだけでなく、その間にすでに広まっているウィルスはどんどん形を変えていってしまうことが研究で指摘されている。

FDA長官のスコット・ゴトリーブが声明で、ワクチンは正しく製造されていたと述べていたにもかかわらず、なぜ今年のインフルエンザワクチンがたった25%しか効かなかったのか。確かな理由は誰にもわからないが、FDAの科学者たちは何が間違っていたのかを解明するために、いくつかの研究結果を発表すると彼は語っている。また諮問委員会はミーティングを開き、来年も使うワクチンの品種を選び始めるという。

「FDAは今年のインフルエンザシーズンから得たすべての知識を用いて、来シーズンには最高のワクチンが利用できるようになることを保証します」とゴトリーブは声明のなかで語っている。

タバコは優れたバイオリアクター

メディカゴの科学者たちは、彼らのテクノロジーによって、たとえインフルエンザウィルスが変異してもそれを認識し、攻撃できるようなワクチンをつくれることを示そうとしている。

ワクチンを卵のでつくるときには不活性化されたウィルスが用いられるが、メディカゴはその代わりに「VLP」(virus-like particles:ウィルス様粒子)を使う。これはインフルエンザウィルスの構造をもちながら完全な遺伝子情報をもっていない粒子であり、彼らはこの粒子によってウィルスがどんなサブタイプに変異をしても、それに感染した細胞を排除できるような特殊な免疫細胞をつくることができると考えている。

しかし彼らは同時に、パンデミックを引き起こすような変異体がインフルエンザシーズンの最中に現れたときに備えて、即座にワクチンの構成要素を変えることのできるような余白も残したいと考えている。

数年間の研究を経て、彼らはベンサミアナタバコにたどり着いた。タンパク質を高速で生成する能力をもつタバコ属の植物である。メディカゴは卵を使った従来の手法では6カ月かかるワクチンの製作期間を、6週間にまで短縮した。 ワクチンはインフルエンザウィルスの遺伝物質を植物に導入することでつくられる。その後4〜10日かけてウィルスは増殖。植物は「ミニ・バイオリアクター」のように機能し、葉にVLPをつくるのである。

メディカゴの株の40%はフィリップ・モリスがもっている。タバコ市場の新しい可能性を探していたタバコ界の巨人は、10年前に初めて同社に投資を行い、そのバイオ技術に1500万ドル以上を注いでいるという。2013年、田辺三菱製薬が残りの60%の株を購入している。

ユニバーサル・ワクチンという聖杯

ほかにもいくつかの会社が、常識を覆すアイデアでインフルエンザワクチンを改善しようとしている。

2017年夏、イスラエルを拠点とするBiondVaxは、幅広いウィルスに対し長期的に機能することが期待される「ユニバーサル・ワクチン」の最終テストを行うために2200万ドルを獲得した。ユニバーサル・ワクチンは9つのインフルエンザの「エピトープ」(抗体が認識する抗原の部分)をもっており、それによって幅広いウィルスに対応することができると同社は考えている。

また今年1月、オックスフォード大学からスピンアウトしたVaccitechはシリーズA投資で2200万ドルを調達した。彼らは同じくユニバーサル・インフルエンザワクチンを発展させようとしており、インフルエンザAのすべての種類を認識・対応できるようにデザインされたワクチンをつくるという。

最終的にどのテクノロジーが普及するかを予測するにはまだ早いが、すべての人がよりよいインフルエンザワクチンを一刻も早く望んでいることは間違いないだろう。アメリカ疾病予防管理センターによれば、インフルエンザシーズンが静まり始めた2月下旬の週でも、米国では13人の子どもがウィルスによって亡くなっている。

「ユニバーサル・ワクチンは”聖杯”になるでしょう」と、Medicagoの科学・医療部門のシニアディレクター、ナタリー・チャーランドは言う。だが彼女は、ユニバーサル・ワクチンに取り組む企業たちは、規制を乗り越えるために法外な時間を要することになると予想する。Medicagoは、今年秋までに臨床試験の第3段階を終える予定だという。

ケベック・シティーを拠点にするメディカゴは、タバコの植物でいっぱいの施設をもつノースカロライナで臨床試験を進めている。第3段階で、彼らはワクチンをプラシーボ(対照実験用の偽薬)と比較し、ワクチンに対する抗体反応を見ることでインフルエンザの感染率を測定する。もしすべてがうまくいけば、メディカゴは2020年のインフルエンザシーズンにワクチンを発売するつもりだ。

「わたしたちは、需要に対して大きな遅れのあるいまのワクチンを改善しようとしています」とチャーランドは言う。「一般的にはあまりよく思われていないタバコという植物を使って、命を救いたいと思っています」

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