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100年後の世界はどうなっていると思う? “魔法のアイテム”スマホを握って未来を考える展覧会を見てきた

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2022/01/06 07:15
スマホを片手に巡る展覧会 © ITmedia NEWS スマホを片手に巡る展覧会

 スマートフォンは魔法のアイテムだ――いま僕たちが手にしているスマホを過去の人たちが見たら、きっとこう感じるだろう。スマホは、ポケットに入るサイズでありながら、テキストや画像、動画、音声コンテンツを見たり作ったりできる携帯端末だ。VRという次世代コンテンツを表示する力も秘めている。

 こうしたスマホの"パフォーマンス"を引き出しているのが高速モバイル回線の普及だ。5Gの整備が進む現在は、これまでより高品質なコンテンツを楽しめる。家電製品やさまざまなセンサー類がインターネットにつながり、集めた情報を瞬時に活用できる時代になった。数十年前には、こんな世界を誰も想像していなかっただろう。

 僕らは、テクノロジーの進化が人類にさまざま影響を与え、ライフスタイルとビジネスの在り方を変えていくと知った。これからの未来はどうなるだろうか。遠い未来である100年後など想像できるのだろうか。

 そこで、100年後を考えるためのヒントを得られる展覧会「2121年 Futures In-Sight」(2022年5月8日まで21_21 DESIGN SIGHT(東京都港区)で開催)をのぞいてきた。この展覧会では“魔法のアイテム”であるスマホを、未来を考える指針を示す「Future Compass」(羅針盤)として使う。

●10年先は想像できる。では100年先は?

 僕たちは未来を想像できるのだろうか。10年後はなんとなく想像がつく。SDGsの第一ゴール「貧困をなくそう」を達成し、先進国/途上国を問わず地域格差がなくなって教育レベルが高まっているはずだ。

 時代に取り残された企業の存在感が薄れ、最先端の道を切り開く開拓者たちが先頭に立ってテクノロジーの進化を推し進めて社会課題を解決していき、より良い生活を送れる日々が訪れるだろう。

 トヨタがEV戦略で「2030年までに350万台のEVを販売することを目指す」と発表したように、いつの時代でもビジネスを考えるには、10年後や20年後など将来の世界を想像して模索と挑戦を続けることが大切だ。

 では100年後の22世紀はどうか。情報デバイスはどうなっている? 衣食住は? そもそも22世紀に活躍している職業は何だろうか――僕を含めて、多くの人にとっては想像するのも難しいだろう。そこで、今回の2121年 Futures In-Sight展が未来を想像するヒントになる。

 この展覧会は、雑誌「WIRED」の日本版編集長である松島倫明氏がディレクターを務める。松島氏が選んだデザイナーやアーティスト、エンジニア、研究者などが、それぞれの目線で100年後の2121年を考えるヒントを展示している。その中でも気になったものを紹介しよう。

●音楽メディアやカメラの進化と、その先にあるもの

 平瀬謙太郎氏(クリエイティブディレクター)の「タイムモノリス」という作品は、長方形のガラスケースの中に人類が開発したデバイスを収めている。

 個人向けの音楽メディアは、1921年のレコードからスタート。1966年にカセットテープが、1982年にCDが登場し、2001年にはiPodに変わった。持ち運べるカメラ機材は1925年の「ライカA型」に始まり、1986年の「写ルンです」、1996年の「デジカメ(QV-10)」に移り変わっていく。1985年のショルダーフォンは、1991年の携帯電話「mova」など小型化が進み、1999年のiモードによってインターネットにつながった。

 そして、全ては2007年に生まれたiPhoneに集約された。このように、独立していた存在が融合する現象を「デジタルコンバージェンス」と呼ぶ。

 オーディオ好き、カメラ好きの人の中には、タイムモノリスが示す系統図に異論を唱えたくなる人もいるかもしれない。しかし、スマートフォンがいくつもの要素を集約して存在価値を示したプロダクトだということは理解できるはずだ。そしていまから100年後には、スマートフォンと何と何が1つのデバイスとなるのだろうか。

●未来の言葉をAIで作ってみる

 アーティストグループのQosmoと朝日新聞社メディア研究開発センターが展示したのは、未来に登場しているかもしれない新語とその意味を収録した辞書だ。作品名は「Imaginary Dictionary -未来を編む辞書」。

 辞書の言葉は過去の新聞記事データを学習したAIで生成。自然言語処理の「単語埋め込み」と呼ばれる手法や、言語モデル「GPT-2」を用いて、新語の推測と新語の生成、説明文の生成を行っている。

 例えば、「緑色植物」「ゾウリムシ」「多年生植物」といった既存の言葉から「植物言語」という新語を生み、「植物の派を主な成分とする言語。言語の分類の1つ」という意味などを作り出している。

 展示会場のアプリ上で「リニアな未来」もしくは「カオスな未来」を選ぶことで表示される内容が異なっていく。突拍子もない新語は少なく、この新語が使われている未来はどんな社会になっているのか想像がふくらむ。

●人々の体験は、その時代の最先端技術を用いている

 ベンチャー企業、H2L(東京都港区)の社長を務める、琉球大学の玉城絵美教授は過去の人々の体験に注目した。作品名は「かつて、人々は何を求めていたのか?」。

 人々は、その当時の最先端技術を用いて自身の体験を共有してきた。口伝や小唄から始まり、本や木版印刷を活用した浮世絵、ラジオ、テレビ、インターネット、ソーシャルメディア、そして今後はメタバースに広がる。

 それぞれの技術は時代を下るにつれて芸術や文学に分類されていく。しかし、これらは消えることなく残り続けている。技術革新や社会に大きな変化があっても、ある技術が完全になくなることなく、普遍的に残る方法を見いだせるかもしれない。

●“仮想標識”を通して未来の都市を考える

 木原共氏(インタラクションデザイナー)の作品は、架空の標識をARで表示する「Future Collider」だ。

 「プラスチック禁止地区 この先200m」「運転禁止地区 自動運転車のみ この先100m」といった仮想交通標識や、「ラボ直送 培養肉ランチ990円」「質 なんでもNFT化 手数料業界最安」といった標識や看板を、現実世界の空間にARで表示する。iPhoneから専用サイトにアクセスすれば、実際に試すこともできる。

 時代や表示方法が変わっても、人間は目にした標識や看板を読んで規律を守ったり欲が出たりするのだと感じさせてくれた。カテゴライズすることで未来の都市や暮らしを想像しやすくなる印象もあった。

●新しい技術のヒントは過去にある?

 内田友紀氏(都市デザイナー)はコラムを展示した。題名は「忘れられた過去は、いつ、新たな意味を獲得するのだろうか?」。

 筑後の馬場水車場(福岡県)で100年以上前から動き続けている水車を使って作っている線香をテーマにしたコラムだ。いまだ広く知れ渡っていない過去からの営みに学びがあることを指摘する。

 時代を重ねるごとに知見が集まり、同時に合理化が進むなら、古い時代から受け継がれている技術に大きなヒントが含まれていると考えることもできる。

●考え続けて共有し続けることが未来につながる

 2121年 Futures In-Sight展には、SFから生まれたもの、民俗学からのアプローチ、心を可視化できる時代の想像図、テクノロジーによる認知力や身体の拡張などさまざまな視点の展示品があり、いろいろなメッセージがあった。

 時間をかけて展覧会の会場内を見て回っても、まだ僕の中には100年後の未来を明確に想像する力は生まれなかった。しかし、10年先など近い未来から一歩先に進んだ世界ならイメージできるようになった気がする。これから普及するであろうVRやAIなどのテクノロジーを手掛かりに、次のステップを予想することで将来の可能性を思い浮かべることができる。

 2121年 Futures In-Sightを見たことで、未来の自分が、社会が、ビジネスが、生活がどう変わっていくのかを考えるきっかけになった。

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