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AIで女性の顔の“魅力”も数値化――東大で研究中の「魅力工学」とは?

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2018/06/06 09:00
東京大学の山崎俊彦准教授。2018年5月に行われたMicrosoftの年次イベント「de:code 2018」で、研究内容を紹介するセッションを行った © ITmedia エンタープライズ 東京大学の山崎俊彦准教授。2018年5月に行われたMicrosoftの年次イベント「de:code 2018」で、研究内容を紹介するセッションを行った

 人工知能が女性の顔の“魅力度”を判定し、最も魅力が高まるような化粧を推薦してくれる――そんな研究が東京大学で行われているのをご存じだろうか。

 2018年5月に開催されたMicrosoftの年次イベント「de:code 2018」では、東京大学で研究を進める山崎俊彦准教授が、研究内容を紹介するセッションを行い、「魅力」という言語化しにくい“感覚”を数値化する挑戦について語った。

●自分の顔が「魅力的」になる化粧を提案するAI

 山崎氏の研究室では、映像や写真といったマルチメディアデータに人工知能を用い「心に刺さる」「映える」といった魅力を定量化し、その要因を解析したり、増強したりする方法を研究しており、この研究分野を「魅力工学」と名付けている。

 セッションでは、研究室で女性の顔の“魅力度”を予測する人工知能を開発したことを紹介。さまざまな人に多くの顔画像を見てもらい、それぞれの魅力度を1点から5点で評価してもらった数値を教師データとしており、実際に人間の評価と比べても、非常に強い相関が見られた(相関係数0.85程度)という。

 「女性の顔については、古今東西、大体同じ評価尺度が存在することが、心理学の分野で判明している。一方、男性の顔の魅力については、複数の評価尺度があるといわれている。現段階では、数値化の精度を高めるのは難しい」(山崎氏)

 この研究は、魅力度を予測するだけでは終わらない。その後、彼女らの“すっぴん”の画像も登録し、「画像に多少のフィルタをかけるだけで、魅力度を最大にする」という問題を人工知能に解かせる。これによって、自身の魅力が最大になる化粧の方向性が分かるというわけだ。

 実際に「本人が化粧をした顔」と「AIが提案した“化粧”を施した顔」の両者を並べ、人間に比べてもらったところ、AIが考えた化粧の方がいいと答える人が多かったという。

●プレゼンの「魅力」もAIがアドバイス!?

 AIが魅力を判定するのは「顔」だけではない。プレゼンテーション用のスライドの出来栄えについても教えてくれる。顔の魅力度を予測するAIと同じく、大量のスライドおよび人間による評価を教師データとし、デザインの良さを点数化する人工知能を開発したのだ。

 山崎氏は「AIにスライド作成を支援してもらうことで、スライドの魅力が高まらないか」と考え、生まれて初めてPowerPointを触ったという主婦に、Wikipediaにあるアルベルト・アインシュタインの項目を1枚のスライドにまとめてもらうという実験を実施した。

 被験者に課題を出したところ、最初は文字が並んだだけのスライドが出てきた。まずは、人間の目線がスライド内のどの部分に行きやすいかをヒートマップで示す「Visual Importance Map(VIM)」を使い、被験者にその結果だけを渡して、修正をしてもらった。

 そして1回目の修正後に、人工知能にスライドのスコアを100点満点で判定してもらった。このシステムは点数化に加えて、スライド内で改善すべきポイントを、ぼんやりとヒートマップで表してくれる。この結果を先述のVIMの結果とともに被験者に渡し、2度目の修正を加えてもらうのだ。

 その結果、3度目に出てきたスライドは写真も入り、人工知能によるスコアも大幅に高まった。この他にも、同様の実験を「じゃんけん」の説明といったお題で行い、いずれもスコアが高まったという。「全くの素人でも、AIによる恩恵を受けられることが分かる事例」と山崎氏は強調する。

 この他にも、CTRが高まるような“刺さる”Web広告を判定する人工知能を開発したり、InstagramなどのSNSに投稿した写真に対して、反応が良くなるようなタグを自動で選ぶ人工知能を考えたりと、多岐にわたる分野で研究を行っている。とはいえ、ディープラーニングを中心とした人工知能は、得点化はできても、その要因まで導き出すことができないのが現状だ。今後は理由の解明に向けた研究も進めていくという。

●大学生が「ディープラーニング」を学ぶ時代

 山崎氏の研究室には、博士課程の学生から学部生まで幅広い年代のメンバーがいるが、最近では、大学生がディープラーニングを学ぶ姿も珍しくなくなってきたという。

 「最近では大学3年生が『ディープラーニングを教えてほしい』と言ってくる。私自身、マイクロソフトなどの協力を得て、人工知能開発の授業を行っているが、電気電子工学科3年生の120人のうち、約半数が志望したので驚いた」(山崎氏)

 授業の中では、学生自身に課題を設定して解かせるような演習も行っているとのことだが、FXでもうけるためのAIや、タレントの画像を基にして新たな“美女”の画像を生成するAI、自然言語処理を使い、文章から自動でQ&Aを生成するAIなど、非常に高度なAIを開発してくるそうだ。

 彼らの多くは、Microsoft Azureのディープラーニング仮想マシン(DLVM)を利用している。学生向けのプランであれば無償で使える機能も多く、設備投資にかかる費用もゼロで済む。その上、「Azure ML以外にも、ChainerやTensorflowといったOSSライブラリも使えるところがうれしい」と山崎氏は話す。もちろん、Amazon EC2やGoogle Cloud Platformなども使っているとのことだが、特に予算がひっ迫しがちな場面でAzureは有用なのだという。

 山崎氏は大学生だけではなく、中学生や高校生に向けたAIのワークショップも行っているとのこと。このように人工知能教育の場が広がっていけば、“AIネイティブ”といえるような世代が登場する日も遠くないのかもしれない。

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