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北欧キャッシュレス最新事情「デンマーク:コペンハーゲン編」:モバイル決済最前線

Engadget 日本版 のロゴ Engadget 日本版 2018/09/29 13:30

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▲「北欧のキャッシュレス最新事情」を探るため、デンマークの首都コペンハーゲンとスウェーデンの首都ストックホルムの2都市をまわって取材してきた。写真はストックホルムの旧市街区ガムラスタンを丘の上から臨む

「キャッシュレス」を合い言葉に国内での現金決済比率を下げるべく、各社がこぞってスマートフォン決済(スマホ決済)サービスを日本国内に投入しているのは多くが知るところだ。キャッシュレス先進国として、QRコード決済が盛んな中国のほか、「北欧」での事例がよく紹介されている。

だが北欧でのキャッシュレスの実際について、その詳細を把握している人はそれほど多くないと思われる。そこで今年2018年9月後半に無理矢理日程を捻出し、北欧4ヶ国(アイスランドを含めると5ヶ国)でも特にキャッシュレスが進んでいることで知られているスウェーデンとコペンハーゲンをまわり、その実情を取材してみた。いろいろな偶然が重なり、非常に密度の濃い1週間となったが、今回はそのうちデンマークはコペンハーゲンでの模様を紹介する。

北欧キャッシュレス取材はまだ継続中で、次のスウェーデン編に続き、フィンランドやノルウェー、アイスランドの事情も含めて紹介していく予定だ。

デンマーク滞在を現金なしで乗り切れるか

デンマークの首都コペンハーゲンでの滞在は3泊、筆者にとって初めての滞在となる同国の印象は小綺麗な欧州都市といったところだった。パリなどにみられるような5-6階程度の石造りの建物が整然と並び、ゴミも比較的少ない綺麗な街並みだ。主たる通勤手段は自転車のようで、朝夕のラッシュ時になると道に広くとられた専用レーンを大量の自転車が行き交い、かつての中国を彷彿とさせる。そのせいか冷涼な気候と合わせて空気も綺麗で、物価の高さを考えなければ生活にはいいのではないかという感想を抱いた。

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▲早朝のラッシュ時に大量の自転車が行き交うコペンハーゲン。油断して交差点を歩いていると追突されて怖い

いつも筆者は外国の街に降り立つと、まず最初の行動に必要な最低限の現金をATMでキャッシングするようにしている。基本的にこれが手数料やレートの面から一番損が少なく、現地ATMで現地通貨を引き出すのが手っ取り早いからだ。だが今回の滞在では「ATMから現金を引き出さない」という目標を立て、どこまでやっていけるのかチャレンジしてみた。

いうまでもなく、コペンハーゲンの街はMcDonald'sからコンビニ(7-Eleven)、広場のカフェまであらゆる場所にカード決済端末が設置されており、それこそ100~200円程度の単価の商品でも問題なくカード決済が行える。使えるカードも磁気ストライプからICカード、Apple Payのような非接触決済まですべて対応。特に非接触決済が使えるのは大きく、VisaカードではないクレジットカードをApple Payに登録しているユーザーであれば、そのまま端末をかざすだけで支払いが行えるのは便利だ。

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▲海外に行ったら、まず現地のMcDonald'sを訪問するのはモバイル決済取材の基本

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▲McDonald'sのレジカウンターにある決済端末。Apple Payが使えるが、MobilePayという気になる表記が......

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▲コペンハーゲン中央駅には7-Elevenのキオスク店舗がある

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▲ここにもIngenicoの決済端末のほかにMobilePayが......

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▲7-Eleven店舗の中にはこのようにセルフレジが設置されたところもある

さて、お気付きかもしれないが、街の決済端末にはクレジットカードだけでなく、「MobilePay」の表記がある。このMobilePayは2013年にデンマークのDanske Bankがスタートしたスマホ決済サービスで、デンマーク国内発行のクレジット/デビットカードと住民番号があれば利用できる。送金サービスのほか、店舗決済にも利用でき、写真にあるような「MobilePay」のマークがついた"箱"に端末をかざすことで利用できる。

仕組みとしてはBluetooth Beaconを使用しており、"箱"はバッテリ駆動。数年単位で交換なしの継続利用ができる。何らかの理由でBluetoothが動作していなくても、QRコードや番号を利用して直接支払いが可能だ。スウェーデン編で登場する「Swish」と合わせ、スマートフォン普及率9割といわれるデンマークでキャッシュレスを後押しした成功例として、MobilePayはよく紹介されている。

なお、Danske Bankはバルト三国やフィンランドなどにも進出しており、同種のサービスを展開しているという話も聞く。このあたりは追って調べていきたい。

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▲ある街の商店の入り口にはMobilePayのアクセプタンスマークがあることが確認できる。JCBも利用できる点に注目

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▲観光スポットにあるホットドッグ屋に行ってみた

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▲ここにもMobilePayの表記がある

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▲ただしクレジットカードは利用できないという。MobilePayを使うか、現金のみ

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▲ワゴン販売をしているアイスクリーム屋でもクレジットカード決済が可能。スマートフォン(iPhone)を操作してiZettleの端末で決済を行う。Apple Payも利用可能

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▲MobilePayのステッカーがあるので、こちらで決済することも可能

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▲街のケバブ屋でもクレジットカード決済のほか、手書きのMobilePay番号が記された決済が利用できる

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▲ドラッグストアの「Matas」では、決済端末の画面にMobilePayのアクセプタンスが表示されている

観光もすべてキャッシュレスで

このように、コペンハーゲン市内ではほぼすべての場所でカード決済またはスマホ決済が可能なため、現地通貨を持たない外国人旅行客でも、ATMに行くことなく観光を楽しめる。

フードマーケットでのつまみ食いや、欧州特有の有料トイレなど、普通であれば現金がなくて躊躇してしまうような場所でも、問題なくカードやスマートフォンさえあれば移動できるのだ。店員側も慣れており、複数人で食事をした場合、料金の分割を手持ちのモバイル決済端末で素早く行ってくれるため、現金の受け渡しが発生しないのもありがたい。

デンマークではチップの習慣があり(10%程度といわれる)、レストランで各人がワリカン決済する際に金額の入力を求められるが、これはチップを含めた金額を入力することで食事料金に上乗せできるというもの。旅行する際には覚えておきたい。

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▲中心部のフードマーケットにやってきた。ここでもすべてクレジットカード決済が可能

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▲フードマーケットで導入されている決済端末は店によってすべてバラバラで、筆者が買い物した場所はIngenico端末だった

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▲観光地のカフェでApple Pay決済

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▲地下鉄やバスもすべてキャッシュレス決済。デンマークはドイツなどと同様に地域交通でも信用乗車システムを採用しているため、出入場ゲートのようなものは特にない。交通系ICカードを持っている客は出入り口にある管理端末にカードをタッチすることで検札を行い、筆者のような旅行者は24時間有効などの紙のトラベルパスを自販機で購入して常に携帯する

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▲コペンハーゲン中央駅のトイレもキャッシュレス

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▲複数の手段で支払ってトイレの中に入る。今回はApple Payを使った。男女共用の個室タイプなので入り口は一緒。欧州でよくあることだが、小銭が手元になくてトイレに入れずに悔しい思いをすることがないのはいい

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▲運河の街コペンハーゲンを効率よくまわれるボートツアーに参加してみた。チケットの購入はキャッシュレスだが、ボート乗り場付近にいる飲み物売りの露天もすべてキャッシュレス対応なのでApple Payで支払っておいた

© AOL Inc. 提供 ▲コペンハーゲン有数の観光スポットであるニューハウンの夜景。レストランが連なる食事スポットでもある

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▲コペンハーゲンのレストランは意外にも(失礼)レベルが高く、ニューハウンでの食事は大満足だったと付け足しておく。支払いはカードで

キャッシュレス社会における「CASH ONLY」

さて、こんな北欧周遊取材でも、2回だけ現金に触れる場面があった。1つは観光スポットである「ローゼンボルグ城」のコインロッカーを利用する場面、そしてもう1つが「宿」だ。

今回、Booking.comで宿を手配したのだが、これは予約代理店を使っただけの個人運営の所有物件を貸し出すというもの。そのため、清掃以外の備品の補充や宿代の受け渡しはすべてオーナーが行っており、ここで宿代を現金で支払う必要があった。オーナーに現金のみの理由を尋ねたところ「法人組織ではない個人運営の宿なので、カードを取り扱うための審査が......」ということで、現金しか扱えないとのこと。

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▲外国人観光客も多数行き交うコペンハーゲン中心部の目抜き通り

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▲このエリアはATMも数多い。現地通貨のデンマーククローネ(DKK)のほか、ユーロ(EUR)にも対応しているのに注目

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▲今回の旅程で唯一「CASH ONLY」をうたっていた看板を見かけたのが、この繁華街の中心部にある中華料理屋。「クレジットカードを使いたければ店前のATMを使うように」という指示が割り切った印象を与える

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▲今回の旅程で数少ない現金を使う場所となったローゼンボルグ城

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▲博物館となっているローゼンボルグ城内に入るには荷物をロッカーに預ける必要があるのだが、そのロッカーを利用するにはコイン(20デンマーククローネ硬貨)が必要。入館チケットを買う際にロッカーを使用する旨を伝えると、なんとコインをクレジットカードで買える。ロッカーをクレジットカード対応のハイテク化にはせず、受付でコインを渡すという発想が面白い

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▲そして今回現金を使う必要があったのが「宿」。旅行代理店のサイトで申し込んだのだが、宿そのものは個人経営で管理されているため、支払いでカード処理を受け付けることができないという(審査が必要なため

ところで、今回はたまたま滞在日程が一緒になった同業者と宿をシェアした経緯もあり、宿賃は折半だったのだが、同宿者が計算を間違えて支払うべき宿賃を少なく見積もってしまい、到着日に用意していた現金では足りず、急遽ATMを利用する必要があった。

ところが、宿のある周辺は非常に景色がいい反面、観光エリアからは若干離れており、そのせいか周囲にATMが全然ない。後で調べてわかったのだが、観光客の多いエリアには1ブロックごとにATMを見かけるくらい大量設置されているのに、地元民中心のエリアには銀行支店どころかATMもほとんど見かけない。

実際のところ、今回のコペンハーゲン滞在では現金決済の場面に何度も遭遇しているのだが(比率でいえば現金とキャッシュレスで半々くらい)、このATMの設置傾向を見る限り、地元民はATMをあまり必要としていないようだ。

この興味深いATM利用傾向の話は、次の「スウェーデン:ストックホルム編」で改めて検証していきたい。

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