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あの美女も!北朝鮮ミサイル発射の陰で消えた幹部

JBpress のロゴ JBpress 2019/05/11 06:00 右田 早希
金正恩委員長の実妹で、実質的な「秘書役」を務める金与正・党宣伝扇動部副部長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ) © Japan Business Press Co., Ltd. 提供 金正恩委員長の実妹で、実質的な「秘書役」を務める金与正・党宣伝扇動部副部長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 この1年半、「休火山」だった「北朝鮮火山」の噴火が突如、始まった。5月4日に続いて、9日にも北朝鮮が、短距離弾道ミサイルを発射した。日本では、誰に気兼ねしているのか、「飛翔体」などと一部で表現されているが、私は周辺国の専門家に確認した上で、あえて「ミサイル」と書く。

 なぜ北朝鮮は、突然立て続けにミサイルを撃ったのか。これには諸説、飛び交っているが、私は最大の理由は、北朝鮮の苦しい国内事情にあると見ている。

大勢の餓死者が出た「苦難の行軍」の再来か

 先日、北朝鮮から戻ったばかりという中国人に話を聞いたら、「こんなに苦しい春は20数年ぶりに見た」という。

 北朝鮮では昔から、「春楽夏苦秋楽冬苦」だ。気温が零下20度前後まで下がる冬を、暖房なしで凍死せずに何とか耐えると、春を迎える。春には「太陽節」(4月15日の金日成主席の誕生日)があって、国民にごちそうが振る舞われる。ところが夏になると、前年に収穫したコメが底をついてきて、食糧難になる。だがそれを何とかしのぐと、収穫の秋を迎えるのだ。

 1995年から1997年まで、北朝鮮に「苦難の行軍」と呼ばれる飢饉が起こり、100万人以上が餓死した。前出の中国人によると、いま北朝鮮に「第二の苦難の行軍」が始まりつつあるという。

「すでに『革命の首都』平壌にも、スラム街ができているのだ。お上が『社会主義国の人民の権利』と喧伝している食糧配給は、完全にストップし、『太陽節』の特別配給もなかった。

 前回の『苦難の行軍』の頃は、朝鮮戦争経験者が多く生存していたので、何とか耐えられた。だが、その時代に栄養失調で生まれ育った人たちが、いまの若者たちで、金正恩への忠誠心など皆無だ。

 彼らは、外国人である私にも、周囲に人がいないと金正恩のことをボロクソ言う。『トランプに会っても(2月27日、28日)、プーチンに会っても(4月25日)、何も変わっていないではないか』と。『最高人民会議(4月11日)で強調した経済建設は、絵に描いた餅ではないか』と。このように若い世代が最高指導者を貶めることは、金日成時代と金正日時代にはなかった」

 一言で言うと、2017年に強化された国連の経済制裁が、てきめんに効いているのだ。北朝鮮は「兵糧攻め」に遭って、もはや「陥落寸前」の状態だ。この中国人は、こう結論づけた。

「外国からの物資は、2016年までと比較して、わずか3%しか入っていないと聞いた。あと半年か1年は持つかもしれないが、それ以上は保証できない」

姿を消した「4人の側近」

 こうした経済悪化に加えて、私にはもう一つ、最近の北朝鮮で気になることがある。それは、金正恩委員長の周辺から、「4人の側近」が消えてしまったことだ。

 1人目は、昨年から「金委員長の最側近」と言われてきた金英哲である。朝鮮労働党副委員長と統一戦線部長を務め、昨年6月にシンガポールで開かれたトランプ大統領との米朝首脳会談、及び今年2月にハノイで行われた2回目の米朝首脳会談では、いずれも金正恩委員長の脇にピタリと寄り添っていた。

 だがいまや、忽然と消えてしまったのだ。少なくとも統一戦線部長は、最高人民会議が開かれた4月中旬以降、それまで無名だった張金哲朝鮮アジア太平洋平和委員会委員に代わっている。

 私は、2月28日の昼前、トランプ・金正恩会談が「決裂」した会議室から出てきた金英哲副委員長の呆然自失とした表情が、忘れられない。テレビ画面に映った金副委員長は、首から上はすでに死人のような状態だったのだ。

 だがそれでも、ベトナムから帰国後の金英哲が、同じナンバー2であっても、かつての李英浩総参謀長(2012年7月に処刑)や、張成沢党行政部長(2013年12月に処刑)のように辱められたとは思わない。1946年生まれの金英哲は、朝鮮人民軍が輩出した最大のエリート軍人の1人であり、彼を処刑することによる朝鮮人民軍の動揺は、計り知れないからだ。だから、そっと引退させたのではないか。

 2人目は、金革哲国務委員会アメリカ担当特別代表である。ハノイの米朝首脳会談で実務責任者を務めてきたエリート外務官僚だ。

 こちらは、すでに処刑されていると推測している。「ハノイの決裂」の責任は、朝鮮労働党で「総括」した後、幹部の誰かが負わねばならない。それが金英哲副委員長でないとすると、残りの「候補者」は3人しかいない。

 だがそのうち、李容浩外相と崔善姫第一外務次官は、その後も公の場に姿を見せている。また、この2人が金正恩委員長の「好み」であることは、これまでの様々な状況から感じ取れる。となると、消えた金革哲代表は、悲惨なことになっているに違いないのだ。

大物美女2人が表舞台から消えた理由

 消えた幹部の3人目は、金与正党宣伝扇動部副部長である。金正恩委員長の唯一の妹で、これまで主要な金委員長の首脳会談に同行し、「秘書役」を務めてきた。

 4人目は、金正恩委員長の「美人妻」李雪主夫人である。李夫人も、金委員長の外遊や国内視察に、たびたび同行してきたが、とんと顔を見せなくなった。

 この2人の「大物美女」は、まさか粛清されるはずもないから、行動を自粛しているのだろう。

 朝鮮半島には、「雌鶏鳴くと国滅ぶ」という諺がある。以前から、この2人に対しては、「表に出すぎだ」という批判の声があったと聞く。ただ金正恩委員長が、そうした声を無視してきただけのことだ。それが無視できなくなったところに、金委員長の苦しい立場を感じる。

 いずれにしても、金正恩委員長がいま一番、恐れているのは、トランプ大統領が豹変して、米朝関係が悪化することではない。120万朝鮮人民軍が反旗を翻すことである。だから突然、ミサイルを飛ばして、「私は軍を重視している」と示したのである。

 前出のような経済状況であれば、「100万トンの備蓄」が義務づけられている軍用備蓄米も、すでにかなり切り崩していることだろう。

 もしも今後、秋の収穫前に軍用備蓄米の倉庫が空になってしまったら、その時には本当の危機がやってくる。

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