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ポスト安倍レースかき乱す「二階幹事長」の思惑 石破氏に接近、岸田氏にエールの狙いとは

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2020/07/22 08:00 泉 宏
7月10日、安倍晋三首相との面会後、記者団の質問に答える自民党の二階俊博幹事長(写真:時事) © 東洋経済オンライン 7月10日、安倍晋三首相との面会後、記者団の質問に答える自民党の二階俊博幹事長(写真:時事)

 政界随一の「寝業師」と呼ばれる自民党の二階俊博幹事長の「生臭い動き」(自民幹部)が、コロナ禍と長梅雨でよどむ永田町の空気をかき乱している。

 二階氏は6月17日の国会閉幕前後から安倍晋三首相や自民党各実力者らとの個別会談を繰り返し、その変幻自在な言動でポスト安倍レースをにらむ自民党内に揣摩臆測を広げている。

 お盆明けから始まる見通しの「政局秋の陣」は、党・内閣人事とそれを受けての解散・総選挙の有無が焦点だ。ただ、「すべてはコロナ次第」(政府筋)で確たる見通しが立たず、それゆえに「二階劇場」が政界の耳目を集めている。

変わる「ポスト安倍レース」の展開

 二階氏の最初の仕掛けは、6月8日の石破茂元幹事長との会談だった。二階氏は、各種世論調査でポスト安倍候補の人気ナンバーワンとなっている石破氏を「さらに高みを目指して進んでいただきたい期待の星の1人」と持ち上げ、9月の石破派政治資金パーティーでの講師も快諾した。

 石破氏は党内実力者では唯一人、安倍首相の政権運営を厳しく批判し続け、安倍首相や麻生太郎副総理兼財務相から敵視されている。その石破氏が政権の支柱でもある二階氏と気脈を通じれば、ポスト安倍レースの展開も大きく変わるだけに首相周辺に疑心暗鬼が広がっている。

 7月2日には岸田文雄政調会長とも会談した。両氏が率いる二階、岸田両派の幹部も交えての懇親会で、二階、岸田両氏の親密な会食は約1年ぶり。同席者によると、両氏は思い出話に花を咲かせるなど和気あいあいで、終わり際に二階氏が「前途洋々、次に期待する」と岸田氏にエールを送った。

 二階、岸田両氏は2019年秋の党内閣人事で幹事長ポストをめぐって火花を散らし、安倍首相が秋口に断行するとみられる党人事でも、再び幹事長職の争奪戦を演じる可能性が指摘されている。岸田氏にとって次の人事で幹事長になれば、ポスト安倍への展望が開けるからだ。それだけに、このタイミングでの二階・岸田会談は自民党内に複雑な波紋を広げた。

 二階氏はかねてから「現政権が任期いっぱい、しっかり務めることを幹事長として補佐したい」と語るなど、幹事長続投への強い意欲を隠さない。9月8日まで幹事長を続ければ、通算在職日数で田中角栄氏(元首相)の1497日を抜いて最長記録保持者となる。そのため、「幹事長の座を死守する必要がある」(側近)。

 安倍首相はかねて自らの後継者に岸田氏を推す意向をにじませており、二階氏が岸田氏に接近することにも「複雑な思いを隠せない」(周辺)とされる。二階・石破会談で生じた二階氏への不信感も絡み、安倍首相が幹事長人事でどういう決断をするのか、強い風圧になっているのは間違いない。

二階・麻生がポスト安倍で手を組む?

 石破、岸田両氏との個別会談と並行して、二階氏は安倍首相や麻生氏を含む与党有力者とも相次いで会談している。国会閉幕直前の6月16日には麻生氏と会談。衆院解散のタイミングやポスト安倍をめぐり、互いに腹を探り合ったとされる。両氏は7月15日にも再会談しており、「2大実力者としてポスト安倍で手を組むのでは」(細田派幹部)との憶測も広がる。

 さらに、菅義偉官房長官とは6月17日と7月1日に会談している。前者は二階・麻生会談の翌日、後者は二階・岸田会談の前日という「まさに政局的なタイミング」(自民長老)での会談だ。

 菅氏は二階、麻生両氏とともに政権の3本柱の一角を占める。二階氏の幹事長続投で連携したとされる2019年夏以来、政権運営でも二階、菅両氏の連携が目立つ。こちらも「ポスト安倍をにらんだ二階流の戦略」(閣僚経験者)との指摘が多い。

 そうした一連の政局会談のさなかの6月24日に、二階氏は安倍首相と密談した。二階氏側近の林幹雄幹事長代理が介添え役として同席したが、安倍首相と二階氏が少人数で会食するのは2年3カ月ぶり。安倍首相は同日昼には公明党の山口那津男代表と首相官邸で昼食をともにしており、安倍首相と二階氏の会談は「与党内の政局モードを一気に加速させた」(自民幹部)結果となった。

 このトップ会談は、首相サイドが「お時間があれば」と持ち掛けたとされる。国会閉幕後も政府のコロナ対応への批判などから内閣支持率が低迷しており、安倍首相としても二階氏との連携をアピールすることで、求心力回復を狙う思惑もちらつく。

 会談内容は明らかにされていないが、 「党・内閣人事や今秋解散の是非について、お互いの腹の内を探った」(自民幹部)のは間違いなさそうだ。安倍首相は二階氏が自民党実力者との会談を繰り返す狙いを探り、幹事長続投を狙う二階氏は安倍首相の感触を探るという「生臭さ満載の会談」(同)とみられている。

「二階発言」で流れが変わる政局

 二階氏はこれまで、混戦模様のポスト安倍レースに絡めて安倍首相の4選にも言及するなど、「変幻自在な二階流」(側近)で真意をつかませないできた。二階氏は、安倍首相を筆頭とする世襲政治家とは対照的な「たたき上げの党人派」(自民長老)で、したたかな腹芸で「政界の絶滅危惧種」(同)とも呼ばれている。

 その一方、二階氏は野党出身議員を相次いで二階派に迎え入れることで派閥拡大も進めている。これらの野党出身議員は各派閥の現職と選挙区で競合するケースが多く、次期衆院選に向けて「激しい二階氏への反発」(岸田派幹部)にもつながっている。

 22日からのGoToトラベル事業でも、政府の迷走ぶりが国民の強い批判にさらされた。とくに、都知事選で圧勝した小池百合子知事と事業推進役の菅官房長官のあつれきが政権不信を拡大させている。

 その小池氏を都知事選で全面支援したのは二階氏で、小池氏も二階氏の幹事長続投に強い期待を示しているとされる。GoTo事業の混乱についても、安倍首相と二階氏がそろって沈黙を守り、政府は菅氏が、自民党は岸田氏らが全面に出てそれぞれの立場で発言しているのも「何やら意味ありげ」(閣僚経験者)ともみえる。

 二階氏はすでに81歳と高齢で、体調不安説もささやかれている。相次ぐ政局向け発言についても、「その場の思いつきでは」(政府筋)といぶかる声が少なくないが、「二階氏の発言が政局の流れを変えている」(二階派幹部)のは事実だ。

 東京でのコロナ感染再拡大が国民の不安をかき立て、「政局秋の陣もすべてはコロナ次第」(閣僚経験者)ではあるが、複雑なポスト安倍レースのカギを握るのは安倍、麻生、菅、二階の4実力者であることは間違いない。二階氏周辺からは「狙うはポスト安倍での最強のキングメーカー」(側近)との声も出る中、今回の二階劇場の結末はまだまだ見えてこない。

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