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北朝鮮情勢に隠された真の安全保障問題

JBpress のロゴ JBpress 2017/11/05 松村 五郎
北朝鮮の国旗。マレーシアの首都クアラルンプールで(2017年3月27日撮影)。 © AFP/MANAN VATSYAYANA〔AFPBB News〕 北朝鮮の国旗。マレーシアの首都クアラルンプールで(2017年3月27日撮影)。

北朝鮮問題はなぜ分かりにくいのか?

 NHKが今年9月上旬に行った世論調査によると、ミサイル発射や核実験を繰り返している北朝鮮の行動に、「大いに不安を感じる」が52%、「ある程度不安を感じる」が35%だったという。

 国民の9割近くが不安を感じ、テレビや新聞でも連日取り上げられている北朝鮮による核兵器および弾道ミサイル開発問題であるが、何をするか分からない恐い国であるという感情的反応を超えて、この問題をどのように受け止めたらよいのかがよく分からないという声も耳にする。

 今まであまり指摘されていないが、この問題を分かり難くしている大きな要因の1つが、米国における北朝鮮対応の基本的考え方に関する「ねじれ現象」である。

 安全保障に関する考え方のベースとして両極端にあるのが、「現実主義」と「理想主義」であるが、北朝鮮の核・ミサイル問題に関しては、それぞれの立場からこの問題を見た時の結論がねじれているように見える。

 ドナルド・トランプ大統領がその基盤としている米国の保守思想においては、国家主権を重視する立場から、各国の政府は国家主権を代表して他国との外交や、場合によっては戦争を行い、国民のためにその国家の利益を最大化することが責務であるとされている。

 これは安全保障分野における「現実主義」と親和性が高い考え方であり、その観点から北朝鮮問題を見た場合、まずは米国自身、そして次には同盟国である日本や韓国の安全保障を確実にすることが、対応の基本方針となると考えられる。

 そして、後に詳しく述べるが、この観点からは、北朝鮮が核兵器やICBMを持つことを阻止することは、必ずしも至上命題ではないのである。

 これに対して、大量破壊兵器の拡散は国際社会にとって共通の害悪であり、これを阻止するためには、場合により北朝鮮という国家の主権を侵してでもこれに介入する必要があるとするのは、安全保障における「理想主義」に依拠した考え方であり、トランプ大統領の一国主義とは反対の国際主義との親和性が高い。

 一般に「理想主義」というとハト派的なイメージであるが、その「理想」を実現するためには戦争も辞さないという強硬な考え方も存在する。

 そのような考え方に基づいて、介入的な戦争を行った例としては、2003年以来のイラク戦争が記憶に新しく、その思想的基盤となり積極的な推進力となったのが、いわゆるネオコンと呼ばれる人たちである。

 トランプ大統領の考え方が、一般論としてネオコンのような考え方とは逆の、米国第一主義にあるとされていることからすると、本来トランプ大統領は北朝鮮への軍事的介入に慎重であって然るべきである。

 ところが今表面的に報道されているトランプ大統領の姿は、レックス・ティラーソン国務長官が模索している北朝鮮との対話の動きに否定的な態度を示し、むしろ軍事的介入に積極的だと思わせるものなのである。

 これは「現実主義者」はタカ派、「理想主義者」はハト派という、何となく一般に思われているイメージとは一見整合しているように見えるが、現在の状況をよく掘り下げて考えてみると、理論的には「現実主義的」であれば実利重視、「理想主義的」であれば介入的となるべきところ、その間にねじれが生じているように思われる。

 この点こそが、北朝鮮の核・ミサイル問題にどう対応すべきか考える際に、私たちの思考を混乱させる元になっていると考えられるので、以下、このような観点から、込み入った考え方を整理し、日本としてこれにどのように対応すべきなのかのヒントを明らかにしていきたいと思う。

「現実主義」の視点から見た北朝鮮問題

 朝鮮半島が現状に至ったのは、その歴史的経緯を見れば、大きくは東西冷戦、直接的には朝鮮戦争という国家間の戦争に端を発している。

 1953年7月に、中朝両国と米英を主体とする国連軍の間で休戦協定が結ばれて以来、北朝鮮と韓国は非武装地帯を挟んで国家間の戦争が継続する状態のまま対峙してきた。

 この戦争が再び火を噴くとすれば、北朝鮮が武力統一を目指して南侵するというシナリオになると考えられてきた。これを抑止し対処するためにこそ、米国は今に至るまで、約3万人の在韓米軍を展開させ続けているわけである。

 しかし、今起きている危機は、このような北朝鮮による南侵の脅威が切迫した事態というわけではない。

 確かに、北朝鮮が米国本土に到達可能なICBMとそれに搭載可能な核兵器を保有することは、朝鮮半島における韓国の安全保障の様相を大きく変える一大事ではある。北朝鮮が南侵した場合に、北朝鮮の核恫喝により米国が韓国防衛から手を引くということが、理論的には考えられるからである。

 しかし、今直ちにそれが起きる危機が迫っているのかと言うと、そうではない。今直ちに南北間で戦争が勃発した場合、在韓米軍は確実にこれに反撃し、戦争は米韓側の圧倒的な勝利で終わるというのは、軍事専門家の衆目が一致するところである。

 「現実主義」の視点から見た場合、問題は今ではなく、将来にある。

 北朝鮮の核抑止が米国に対して機能するようになった場合、北東アジアの戦略環境が様々な要因で揺れ動いていく中の何らかの時点で、米国が韓国の防衛から手を引くという可能性がその分高まることになる。

 これは、韓国にとって国家の存亡にかかわる一大事であると同時に、日本にとっても、対馬海峡の北岸に敵対的な国を抱えるかもしれないという安全保障上極めて憂慮すべき事態を招くことに繋がる。

 この問題は、冷戦間にヨーロッパで憂慮されていた「デカップリング」という概念と同じ理屈である。

 ソ連をはじめとするワルシャワ条約機構軍が、鉄のカーテンを超えて西ドイツなどの西欧諸国に侵攻した場合、米ソが戦略核兵器の分野で相互抑止状態にあることから、米国が欧州防衛にコミットすることをためらうのではないか、という問題が当時懸念されたのである。

 日本語的に分かりやすく言えば、ヨーロッパと米国というカップルが引き離されてしまうということで、「デカップリング」ということになる。

 このような懸念を払拭するために、当時ヨーロッパの戦略家や政府当局者は様々な知恵を絞った。

 北朝鮮の核・ミサイル問題を「現実主義」という観点から見た場合、当時のヨーロッパ諸国の経験を参考に、日本や韓国としても、様々な方策を考えていかなくてはならないであろう。

 米国の視点からこの状況を見ると、たとえ北朝鮮が米本土に届く核搭載ICBMを保持したとしても、朝鮮半島における戦争と関係なく、北朝鮮が破滅覚悟で米国をいきなり攻撃してくることは想定しがたい。

 要はこの新しい戦略状況下で、いかにして朝鮮半島における戦争抑止の態勢を維持し、日本と韓国への安心感を提供していけばよいかを考えることになる。

 すなわち、北朝鮮側からの南侵攻撃が、即北朝鮮の破滅となる態勢を維持するための方策を考えればよいわけである。

 対立国が新しい兵器を開発するということは、それぞれの国家主権を不可侵のものとして考える「現実主義」の視点からは、当然起こり得る。

 その中で各国が自国の安全保障を達成していくためには、それを見越した長期的視点で戦略を練って対抗していかなくてはならないということになる。冷戦間、米国はソ連との間で、ずっとこれを続けてきたのである。

 極端な議論ではあるが、「現実主義」の立場に立つ国際政治学者として有名なケネス・ウォルツなどは、核兵器の拡散は国家間の相互抑止を促進し、通常兵器による戦争を起こりにくくするとともに、その烈度を低く抑える働きがあるので、歓迎すべき事態だとさえ論じている。

 そこまではいかなくとも、「現実主義」の考え方に立てば、核兵器の拡散を阻止すること自体が目的なのではなく、自国の安全保障上どのような影響があるかが問題なのである。

 次に日本の立場からこの問題を考える場合、勘違いしてはならないのは、北朝鮮による核・ミサイル能力が米本土攻撃可能なレベルに達することにより、韓国防衛に当たって米韓両国間の「デカップリング」が生じるのではないかという懸念はもっともであるとしても、自動的に同じように日米間の「デカップリング」が生じるわけではなく、そこにはさらに複雑な要素が絡んでくるという点である。

 朝鮮半島における戦争に当たっての日本の地位を考えてみると、それは韓国防衛のために作戦行動を行う米軍にとっての出撃および後方支援基地である。

 万が一、米韓間に「デカップリング」が生じて米軍が韓国防衛から手を引いた場合、日本が単独で韓国を支援することは想定しがたく、その意味で日米間の「デカップリング」が生じるとは考えられない。

 米国が手を引いた後、北朝鮮にとって日本を攻撃するインセンティブはなく、あえて米軍の一大拠点である日本を叩いて、もう一度米国を参戦させるメリットはないからである。

 米国にとっても、日本からまでも一気に引き揚げて、アジアにおけるプレゼンスをゼロにしてしまうメリットはなく、韓国から引いたとしても、在日米軍を維持してアジアにおけるプレゼンスを確保しようとするはずである。

 日本にとって問題となるのは、米韓の「デカップリング」が起きていない状態で、北朝鮮が韓国攻略のために、日米離間を図って日本に対して核恫喝をかけてくるというシナリオである。

 北朝鮮が米国本土に届くICBMと核弾頭を保有することにより、日本国内に「米国は北朝鮮による日本への核攻撃があったとしても核報復には踏み切らないのではないか、北朝鮮はその点を見透かして本当に日本を核攻撃するのではないか」という疑心暗鬼が生じるということが、この場合の問題なのである。

 すなわち、この場合の「デカップリング」問題は、韓国の場合のように、米国が手を引くという危惧ではなく、日本が戦闘中の米韓陣営から離脱する危惧として現れる。

 したがって、この問題にあたって日本としての焦点は、日本が米国とともに韓国防衛にコミットし続ける意義は何か、そしてその際、日本はどこまで米国を信じ切れるのかということになる。

 まずは日本国内において、日本が韓国防衛にコミットすることの意義をしっかり議論して、国民的コンセンサスを得ておくことが重要である。

 その共通認識があって初めて、その共通目的を達成するうえでの日米間の信頼関係を維持していくために、この場合にも米国の「核の傘」がきちんと日本に及んでいることを日本の国民が実感できるような施策を日米間で築いていくことに意味が生まれる。

 むろん、そのように日本が韓国防衛にコミットすることを決意するからには、その際に日本が自国の領域をしっかりと防衛できることが重要となる。

 特に、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に対する弾道ミサイル防衛能力の充実や、武装工作員の潜入に対処する対ゲリラ・コマンドウ戦闘能力の向上が、日本の安全保障のみならず、日米間が一体となった韓国防衛、ひいては北東アジアの安定のために重要だということになる。

大量破壊兵器不拡散の視点から見た

北朝鮮の核・ミサイル問題

 国際主義的な、すなわち一定程度「理想主義的」とも言える視点から見た場合、大量破壊兵器やミサイル技術が多様な勢力に拡散することは、その勢力がそれを直接使用する懸念以上に、これを恫喝手段として様々な目的達成の道具として用いるのではないかという重大な懸念を惹起させる。

 現在の世界秩序は、核5大国が安全保障理事会の常任理事国として大きな均衡を成立させることで、曲がりなりにも安定が保たれており、核拡散防止条約に加盟することによってほとんどの国がこの秩序を追認している。

 この秩序に反して、現在核兵器を保有しているのは、インド、パキスタン、イスラエルの3か国である。

 インドは中国およびパキスタン、パキスタンはインド、イスラエルは周辺アラブ諸国からの自国防衛を主目的として核を保有しているのであり、それを超えて現在の国際秩序に挑戦する意図を示していないことから、実質的には国際社会で核保有が黙認される状況となっている。

 北朝鮮も、自国の核保有は米国からの自国防衛のためであるとして、主観的にはこれらの国に倣おうとしているのであろうが、客観的には状況が異なる。

 核を含む大量破壊兵器が、独裁者等が国を支配するいわゆる「ならず者国家」や過激な非国家暴力組織の手に渡った場合、それらの勢力がそれを恫喝手段として用い、現存の世界秩序に挑んでくるという事態を防ぐことは、現在の国際社会共通の利益だとの認識が共有されているのである。

 したがって、北朝鮮が核とミサイルの開発を進展させている今、国際社会にとって喫緊の安全保障上の課題は、まずその開発を阻止し、兵器としての保有を許さないことであり、次には、北朝鮮から他の国や勢力にその技術が流出することを阻止することである。

 このような観点からこの問題を見た場合、一番重要なことは、北朝鮮の金正恩政権自身に、核不拡散体制という現存国際秩序に挑戦することのデメリットと、それに従った場合のメリットを、しっかりと認識させることである。

 これは米国と北朝鮮の間の問題ではなく、国際社会全体としてどう向き合うべきかという問題なのである。

 であるからこそ、北朝鮮の核およびミサイル開発を非難する累次の国連安全保障会議決議が可決されてきたわけであるが、日本のメディアの中には、これを米朝間の二国間問題であるかのごとく論じているものもあり、違和感を覚えるところである。

 日本としては、周辺国の1つとして、金正恩政権に拡散の非を認識させるべく、世界各国に働きかけていくことが重要なのであり、米国が中南米諸国に働きかけ、北朝鮮に対する外交関係を再考させているのは、そのよい範となろう。

 トランプ大統領の米国一国主義的な物言いとは裏腹に、米国の中にも、この問題を正しくとらえて、国際的な外交的圧力をかけていくことに意義を見出している当局者がいるということである。

 そしてこの動きの中で、今後の帰趨を制するのが中ロ両国である。

 この両国には、いまだに不拡散の意義について、心底共鳴しているとは見えない動きが感じられる。

 両国が国際社会において責任ある指導的な国として今後認められていくための試金石としても、北朝鮮に断固たる措置を取っていくことが必要なのだという点を、本音で理解させる外交努力こそ、今喫緊に求められていることだと言えよう。

 北朝鮮への働きかけが一向に功を奏さない場合に、国連安保理で武力行使決議を成立させ、多国籍軍による何らかの武力行使によって核・ミサイル能力を無力化するという方策があり得るかという問題に関してはどうだろうか。

 韓国への被害を避けつつこれを達成する見込みが全く立たないことに加え、そもそも中ロ両国がこの決議に賛成するくらいなら、それ以前に北朝鮮に対して武力行使以外の厳しい措置を取ってこれが功を奏すはずであり、その可能性は非常に小さいと言ってよいであろう。

 したがって米国が北朝鮮に対して武力行使するケースがあるとすれば、それは安保理決議に基づく大量破壊兵器拡散防止のための国際的措置としてではなく、自国の自衛を名目にした先制的な武力行使として行われるケースであろう。

 これは前節で述べたような「現実主義的」な考え方に基づいたうえで、北朝鮮からISなどのテロリスト集団に核兵器が拡散するおそれがあること自体が、米国の安全を脅かすものであり、自衛のための武力行使が正当化されるというロジックに依拠したものである。

 しかし、2003年のイラク戦争の時にも問題になったように、北朝鮮が具体的な攻撃行動を発動する兆候がない段階で、このような先制的な武力行使を行うことに対して国際的な支持が得られるかどうかは微妙である。

 ましてイラクの場合と異なり、北朝鮮を攻撃すれば韓国において、場合によっては日本においても、大きな損害が予想される以上、そのハードルはかなり高い。

 ただし、今後トランプ政権が内政的な考慮から強硬策を採ることが得策だと判断する可能性については、考慮しておく必要があろう。

 以上の状況を全体として考慮すると、今後国際社会としての現実的な目標は、引き続き中ロを含めた国際的外交圧力を強めて北朝鮮を孤立させ、その核およびミサイル開発を凍結、中止させるとともに、既存の能力を廃棄させるまで粘り強く対応することしかない。

 この際、それと同時に不拡散の観点から重要なのは、北朝鮮から他の「ならず者国家」や非国家暴力組織に、核やミサイルの技術が流出しないような措置をしっかり取っていくことである。

 拡散を物理的に阻止する措置を可能とするため、これまでに米国を中心として105か国が参加するPSI(proliferation Security Initiative 、 拡散に対する安全保障構想)という国際的な取り組みが行われてきている。

 日本も2003年以降ほぼ毎年行われる海上・航空阻止訓練に自衛隊、海保、警察、税関などのチームを参加させてきた。

 今後北朝鮮からの兵器や部品の流出に際しては、海路での運搬が予想され、日本としても対馬海峡をはじめとする周辺海域において、これを阻止するための取り組みにどのようにかかわっていくかが問われることとなるだろう。

 いずれにせよ、これらはあくまでも国際秩序維持のために重要な問題であり、決して北朝鮮対米国という構図での問題ではないということは、正しく認識する必要がある。

 もちろん各種の取り組みの中で、世界一の軍事外交大国である米国が果たす役割は極めて大きい。

 しかし日本としては、単に日米関係の文脈のみならず、国際的な文脈で中ロも含む各国にどのような働きかけを行っていくかが重要なのである。

核・ミサイル問題だけではない北朝鮮の脅威

 さてここまでは、北朝鮮の核およびミサイル開発の進展という問題について、考察してきた。

 しかし、北朝鮮問題を見た場合、核およびミサイルの開発以外にも、日本として今すぐ対応を考えておかなくてはならない2つの問題がある。

 その1つ目は、北朝鮮国内の不安定化にどう対処するかである。不安定化のシナリオとしては、今の状況が続く中で、北朝鮮国内で農村の貧困が激化し、クーデターなどによって金正恩体制が崩壊して内乱状態となる場合がまず考えられる。

 そして次に核・ミサイル問題を巡ってのチキンゲームが誤算などにより戦争へと発展し、米韓軍によって金正恩体制が打倒される場合が考えられる。

 いずれの場合にも、金正恩を失くした北朝鮮国民が、素直にそのまま韓国国民となることを希望して帰順すると考えるのは、ナイーブに過ぎよう。

 70年間にわたり主体思想を叩き込まれてきた北朝鮮国民が、そのような事態にあってどう行動するのか。

 これには、中国やロシアの思惑も働いて、最悪の場合にはイラクやシリアと同様、複数の武装勢力が抗争を続ける内戦状態となることも覚悟しておかなくてはならない。

 万が一そのような状態に陥った場合、日本を含む周辺諸国にとっての深刻な安全保障問題となるとともに、韓国経済や中国経済が深刻な打撃を受けることで、日本はもとより世界規模で経済的に大きなマイナス要因が発生することとなろう。

 それに加えて、日本や中ロには大量の難民が押し寄せることが想定され、これにどのように対応するかも大きな課題となる。

 このような北朝鮮の不安定化に際して、各国が協調して適切な対応をしていくためには、そのような事態に陥る前から、朝鮮半島のあるべき未来像について、日米韓中ロの5か国が、共通の認識を持つべく協議しておく必要がある。

 現在の北朝鮮の領域が、国際秩序を乱すことがないような形で新しい国家あるいは準国家として再編成され、ひいては半島の南北統一につながっていくというシナリオと、その際の各周辺国の役割分担について、認識が共有できるか否かが重要である。

 このような協議は、今の金正恩政権にとっては、それが持たれること自体不快なものであろうが、政府間が難しくとも、各国民間シンクタンクの会議などを通じて、その道筋を示すことにより、北朝鮮の潜在的な改革勢力に、強硬路線ではないソフトランディングによる国家の未来像をイメージさせることに繋がっていくと考えられる。

 北朝鮮を安全保障上の脅威として見た場合のもう1つの問題は、北朝鮮が今既に行っている、サイバー攻撃やテロ行為など、多様な手段による反国際社会的行為に、どう対応するかということである。

 サイバー攻撃については、韓国に対する各種のサイバー攻撃や、金正恩に関するパロディー映画を作成したソニーピクチャーエンタテイメントに対する攻撃が北朝鮮政府によるものであると確認されているほか、いわゆるランサムウェアによる各国企業などへの身代金攻撃も、北朝鮮の関与が濃厚だと報じられている。

 このような国家による犯罪とも言える手段での攻撃は、国際社会が対応していかなくてはならない喫緊の課題である。

 日本としても、対サイバー攻撃能力を急速に向上させるとともに、各国と協力しての国際的対策の枠組み作りに積極的に取り組んでいく必要があろう。

 また、テロ行為については、マレーシアにおける金正男暗殺事件が記憶に新しいところであるが、日本人拉致問題でも見られるように、北朝鮮はこれまで高い能力を有する工作員を多数育成してきており、その自由な活動を許さないような国際的取り組みも重要である。

 各国の治安機関による情報交換・協力のほか、軍も含めた対テロ能力向上について、有効な国際協力が求められる。

 この際、電磁パルス兵器のようにテロ手段として核を用いることにも、予め警戒して情報を収集するとともに、対策を立てておくことが必要となる。

 ここまで見てきたように、北朝鮮の核およびミサイル開発の問題への対応を考える場合には、様々な異なる視点から見えてくる問題を整理して考えることが必要である。

 このように問題を解きほぐしていくことにより、隠れた数々の課題が明確になる。

 日本として事態の進展に対応していくに当たり、場当たり的に短絡的な対応をして、自ら危機を招いてしまうことを回避するためには、このような冷静な分析が不可欠なのである。

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