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抗議デモはなぜ暴徒化したのか。NY在住者が明かす「報じられない真実」

Forbes JAPAN のロゴ Forbes JAPAN 2020/06/02 20:00 YUKA(吉田優華子)

© Forbes JAPAN 提供 アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス市で5月25日、白人警官が拘束していた黒人男性の首を膝で抑えつけ圧迫死させた事件がきっかけとなり、アメリカ各地で黒人を中心に人種差別に対する抗議(プロテスト)が活発化している。

事件で死亡したのはジョージ・フロイド氏。同氏は白人警官に圧迫されている間「I cant breathe(息ができない)」と訴え続け、助けを求めた。この一部始終を捉えた動画は、ソーシャルメディアで拡散された。

今回に限らず、これまでの白人警官による度重なる黒人への不祥事に、人々は怒りを抑えきれない。大規模な抗議集会はニューヨーク市でも行われ、日に日に過激さが増している。「BlackLivesMatter」「I cant breathe」など、さまざまなメッセージが書かれたプラカードを持った人々が街を行進して黒人差別を訴えているのだ。

しかし、昼間の抗議から一転、プロテスター(抗議参加者)は夜になると暴徒と化す。2日目の抗議集会では、警察車両に火炎瓶を投げ込んだ殺人未遂も含め、約200人が拘束された。3日目は過激さを増し、約350人拘束。ユニオンスクエアにプロテスターが集結し、ゴミ箱が燃やされ、警察車両が次々と放火され、洋服店や家電店では、窓が割られ商品が強奪された。警察官とプロテスターの衝突は、深夜過ぎまで続いた。

4日目の本日の午後5時現在。公式には抗議が行われる予定はないはずだが、マンハッタンのブライアントパーク付近で抗議集会が自然発生している。

© Forbes JAPAN 提供

(筆者友人撮影)

「やはり」と「どうしてここまで」複雑な想い

私は朝のニュースで目にした暴徒と化したプロテスターの姿に、なぜか心が苦しくなった。私もニューヨークに住む有色人種だ。また、黒人系やアジア系の知り合いも多く、平時から「人種差別」は身近な話題だった。

そのため、今回の抗議のニュースを見て、「やはり」という想いと「どうしてそこまで」という複雑な想いになった。

新型コロナウイルスを乗り越えるため、ニューヨークはここ3カ月間ひとつになって取り組んでいる、そんな風に思える映像が連日ニュースで報道されていた。毎日夜7時にはエッセンシャルワーカーを応援するための拍手で街が包まれ、道路やお店の壁などいたるところにサンキューメッセージが掲示され、毎日行われているクオモ州知事による会見では「ニューヨーカーが一丸となり協力してきた結果が出てきた」という労いのメッセージもあった。

そんな中、突如、筆者の目に飛び込んできたのは、ニューヨークの街がバイオレンスによる悲鳴と怒号に包まれた様子だった。

何が、彼らをここまで過激にしてしまったのか。

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プロテスターに取材をする筆者(撮影:Brian R. Moore)

参加者はどんな想いで参加しているのか

思わずカメラを持って取材した。彼らは今何を想い、プロテストに参加しているのか。その質問に対するプロテスターの回答をいくつか紹介したい。

「もっと私たちが戦えば、もっと私たちの声が届くと思う。でも、平等を得るために、私たちが戦わなければいけないのは悲しいこと、恐ろしいこと。同時に、何度も立ち上がるたびに、私たちは強くなる。戦うことをやめて欲しくない、なぜなら戦い続けることで変化が生まれるから。変化をさせることが未来の子供達のために重要なこと。私は妹や大事な人のためにここにきた」

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(写真:筆者撮影)

「正義を訴えているだけだ。もう、うんざりなんだ。肌の色で不正に扱われるのは」

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(写真:筆者撮影)

「黒人の命も大事だ。僕自身の命も大事だ。僕たちみんなの命が大事だ」

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(写真:筆者撮影)

「あれは許されるべきではない。ずっと昔から人が殺されてきた。人々は怒っている。私たちは声を上げる権利がある」

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(写真:筆者撮影)

「僕は警察の残忍な行動が許せない。黒人に限らず、有色人種すべてに対して差別をしてきた」

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(写真:筆者撮影)

「警察官による殺人は実際に起きていて、いますぐにやめるべきだ」

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(写真:筆者撮影)

「立ち上がることが大事だ。みんなで痛みを共有するんだ。それが1番のサポートだから」

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(写真:筆者撮影)

過激化の裏。ニュースでは報道されない事実

また、取材を通して多くのプロテスターが口にしてたのは、過激化した要素として、「ニュースでは語られない警官の行いがある」というのだ。警官の行いだけでなく、プロテスターとして全うに活動している姿もあまり報道されない。暴徒のみがニュースで取り上げられていることに憤りを感じている。

例えば、警察官が乗車した車両が道路を封鎖するプロテスターをひきながら突破する様子など、SNSを通じて多く報告されている。

I am heartbroken and disgusted to see one of my family members a young black man w/his hands up peacefully protesting and an NYPD officer pulls down his mask and pepper sprays him. @NYCSpeakerCoJo @BPEricAdams @FarahNLouis @JumaaneWilliams @NewYorkStateAG @NYPDShea cc: @EOsyd pic.twitter.com/tGK5XWS0bt — Ms. Anju J. Rupchandani (@AJRupchandani) May 31, 2020

他にも、必要以上にプロテスターを殴りつけたり、両手をあげた無防備のプロテスターのマスクを取り、催涙スプレーを至近距離で顔面に吹きかけるなど、警官の不当な対応が瞬く間にSNSに報告されている。

ジョージ・フロイド氏が死亡したことが発端で各地で広がった抗議活動だが、警察による黒人への不当な暴力は以前から長年起きていたことで、ふつふつと溜まっていた不満が一気に爆発し、プロテスターを暴徒へと変化させたという。

これだけの警察の残忍な対応がSNSで報告があるにも関わらず、テレビニュースではあまり報道されない。また、プロテスターの中には、平和的に抗議活動を行う人々もいるが、テレビニュースでは過激化したシーンが目立つ。

窓を破り強盗を試みるプロテスターから大型雑貨スーパーを守るプロテストのリーダーたちの姿。リーダーたちはこのような暴徒を望んでいないのだ。

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(SNS @AndrewSolender)

また、隊から孤立してしまった警察官を暴徒から守るべく、プロテスター達が腕を組み壁を作り守る姿もあった。さもないと警察官は集団リンチにあっていたかもしれない。このような勇敢な黒人プロテスターの姿は残念ながらテレビニュースでは報道されていない。

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(SNS @Positive_News4u)

コロナ疲れで加速する人種差別への人々の怒り

人種差別について取材をしている中で、こう話してくれた人もいた。

「黒人だからと、体もデカイし怖がられる。黒人が後ろを歩いているだけで怯えているアジア人も俺らを差別している」

新型コロナウイルスの最初の感染者が3月にニューヨークで発見されて以降、アジア人への差別発言やヘイトクライムが増えた。街を歩けば、アジア人に対して「コロナ!」と叫ぶ人がいたり、電車の中で突然消臭スプレーを吹きかけたり、暴力事件まで発生していた。悲しい事実は、その加害者の多くが黒人なのだ。

お互いが差別しあっていることで負の連鎖がこれまで続いてきた。米国に深く根を張る人種差別の問題である。5月31日の会見でクオモ州知事はこう発言している。

「社会を変えられることは、新型コロナウイルスとの戦いでも証明してきた。この変化は、政府ではなく州民一人一人の努力が引き起こしたのである。

ほとんどの米国人は公平で勤勉で愛すべき人々だ。もちろん、今回の事件で怒りを覚えて良い。同時に賢明である必要がある。コミュニティを傷つけるのではなく助けなくてはいけない。ジョージ・フロイド氏の死を無駄にしてはいけない。米国は、今後より良い国になるため彼の死から学ばなければならないが、私たちにはそれが可能である」

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