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盛り上がったW杯から1年…コロナ禍の中、ラグビー界では何が起こっていたのか

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2020/11/21 16:00
自国開催で大いに盛り上がった昨年のラグビーW杯 (c)朝日新聞社 © AERA dot. 提供 自国開催で大いに盛り上がった昨年のラグビーW杯 (c)朝日新聞社

「本当だったら、ここにジャパン(日本代表チーム)がいたはずなのに……」。多くのラグビーファンがそう嘆いたに違いない。

 11月13日に開幕し、21、22日(現地時間)には第2節が行われた国際大会「オータム・ネーションズカップ」。イングランドなどシックスネーションズの強豪すべてを含む8チームが参加する国際大会で、日本にも参加の打診があった。しかし、国内外の新型コロナウイルスの感染状況から事前合宿などの準備が難しく、海外遠征後の待機期間といった制約も大きいことで出場を断念。14日にラグビーワールドカップ2019準優勝のイングランド、21日には同4位のウェールズと対戦する機会を得たジョージアは、いわば日本の代役だった。

 そもそも、このオータム・ネーションズカップ自体が、新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大で今年の国際交流予定が大きく影響を受けたため、急きょ設けられた代替大会。日本代表も6月、7月のウェールズ代表とイングランド代表の来日と11月の敵地でのスコットランド代表戦、アイルランド代表戦がすべて中止となっている。代替大会への出場に加えて独自の試合開催も叶わず、2020年は何とテストマッチだけでなく代表活動そのものが全く行われない1年になってしまった。

 日本代表の躍進で盛り上がったラグビーワールドカップ2019が南アフリカの優勝で幕を閉じてから、わずか1年あまり。新型コロナウイルスは世界のラグビー界、日本ラグビー界をすっかり変えてしまった。

 今年7~9月に開かれるはずだった東京オリンピック・パラリンピックを史上初の1年延期に追い込んだ新型コロナウイルス。ラグビー界もその猛威からは逃れられなかった。

 1月12日に開幕したジャパンラグビートップリーグ2020は2月22、23日の第6節を最後に中断、再開することなく中止に追い込まれた。

 緊急事態宣言が出た春は各都道府県の高校総体や地区大会が軒並み中止。大学進学に向けて自分の実力を示す舞台を失った高校生らのために、みずからのプレー動画をソーシャルメディアに投稿、進路開拓に繋げるよう促す取り組み「ラグビーを止めるな」が生まれた。このムーブメントは他競技にも広がった。

 夏になっても大会の中止が続き、昨年度の大学王者、早稲田大学が例年長野県・菅平高原で行ってきた夏合宿を大学の方針に沿って取りやめるなど各チームの強化にも大きな影響を与えた。同時に世界有数のラグビー合宿地である菅平高原の旅館は、続出したキャンセルで大打撃。旅館組合への支援を求めるクラウドファンディング「WE ARE スガダイラーズ PROJECT」が行われ、4千人を超える支援により6億円の目標を達成した。

 秋のラグビーシーズンになり、関東大学は通常の総当たり制で開幕したが、約半数の試合は無観客に。関西大学は各校の試合数が少ない変則フォーマットで行われている。第100回の記念大会となる全国高校大会の予選も決勝まで無観客の地区が多く、東京地区は準決勝、決勝のみ公開されたが、準々決勝までは会場や開始時刻も公表しない厳戒態勢だった。

 一方、シニアレベルでは、トップリーグは越年してからの開幕。プロ野球やJリーグは観客数を制限しながらも試合を開催しているだけに、ラグビーの試合がない空虚感を抱いているラグビーファンも多いことだろう。

 そんな中でも、2021年に向けて明るい話題も出始めている。最大のニュースは、ブリティッシュ・アンド・アイリッシュライオンズとの対戦が決まったことだ。

 ライオンズとはイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド4協会による選抜チーム。いずれの代表も強豪揃いで、その中からさらに選りすぐられた選手たちで構成される。ライオンズが編成されるのは4年に一度だけ。来年は南アに遠征する。日本代表は遠征出発前のウォーミングマッチの相手に選ばれた。

 また、トップリーグに変わって2022年にスタートする新リーグに参入するチームの動きも活発化。キヤノンイーグルスはラグビーワールドカップ2019の決勝などの会場になった日産スタジアムのある横浜市をホストエリア、同じく昨年のワールドカップ開催地の一つだった大分市をセカンドホストエリアとすることを発表した。

 2021年は日本のラグビー界にとって、どのような年になるのであろうか。

 最後のシーズンとなるトップリーグは、1月16日に開幕する。開幕戦と位置づけられている東芝ブレイブルーパスとNTTコミュニケーションズシャイニングアークスの試合は、東京オリンピックの主会場である国立競技場で行われることになった。

 6月26日には、前述のブリティッシュ・アンド・アイリッシュライオンズ戦がスコットランド代表の本拠、エジンバラのマレーフィールド競技場で行われる。

 国際オリンピック協会のバッハ会長が今月来日し、観客を受け入れてのオリンピック開催に「非常に自信をもっている」と述べた。もしその思惑通りに物事が進んだなら、7月23日は東京オリンピックの開幕日となる。男子のセブンズ代表は、4年前のリオデジャネイロオリンピックの初戦でニュージーランドを破り、シニアの全カテゴリーを通じて最高位となる世界4位という成績を残している。そして、「サクラセブンズ」と呼ばれる女子代表も出場する。

 また、忘れてはならないのが、8月24日開幕予定の東京パラリンピックで行われる車いすラグビーだ。日本は2018年の世界選手権で発優勝した世界王者。リオでの銅メダルを上回る金メダルの期待がかかっている。

 さらに、オリンピック、パラリンピックの熱気も冷めやらない9月18日にはニュージーランドでラグビーワールドカップ2021が開幕する。世界12カ国・地域の代表チームが参加する女子15人制の最高峰の世界大会だ。ジェンダー格差の解消に取り組むワールドラグビーの方針に沿って大会名称に性別を付けない最初のワールドカップとなる。

「サクラフィフティーン」の愛称を持つ女子日本代表は2大会連続の出場を目指す。11月20日にプール組分け抽選が行われ、来年に延期されたアジア予選を勝ち抜けば、カナダ、アメリカ、ヨーロッパ予選勝者と同じプールBに入ることが決まった。

 つまり、2021年は、男女の15人制と7人制の日本代表、そして、車いすラグビーの日本代表と、最大でシニアの「ラグビー日本代表」5チームすべてが、4年に一度開催される世界大会に出場するか、あるいは、4年に一度編成される世界トップクラスのチームと対戦するという、後にも先にも例のない年になる。

 そんな極めて特別な2021年に繋がる重要なイベントが、今月29日に熊谷ラグビー場で開催される。男女のセブンズ日本代表と女子15人制日本代表それぞれの候補選手による選考試合が行われる「JAPAN RUGBY CHALLENGE 2020」だ。日本代表カテゴリーの選手が出場する公式戦は、実にラグビーワールドカップ2019準々決勝の南アフリカ代表戦以来となる。

 新型コロナウイルスという厚い暗雲にいまだ覆われている日本ラグビー界。しかし、その雲の向こうには青空が広がっているはずだ。明るい日差しが差し込む予感を持てるような、夢をつなぐ試合が期待される。

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