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ヤクルト真中満の「軸回転打法」を八重樫幸雄が解説。独特の技術で「絶対に教えてもできない」

Sportiva のロゴ Sportiva 2021/10/14 10:50 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
© photo by Sankei Visual © Sportiva 提供

「オープン球話」連載第87回 第86回を読む>>

【プロ入り時から変わらぬ「とにかく明るい真中」】

――前回までの宮本慎也さんに続いて、今回からは宮本さんと同学年の真中満ヤクルト元監督について伺いたいと思います。真中さんがヤクルトに入団した1993(平成5)年は、八重樫さんにとって現役最後の1年となりました。真中さんの第一印象はいかがでしたか?

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明るい性格と、独特のバッティングフォームでファンから愛された真中満

八重樫 「とにかく明るい」というイメージです。ヤクルトに入団した時から、いつもしゃべっている印象ですね。クラブハウスでも、いつも真中のしゃべり声が響いていた。池山(隆寛)なども明るいキャラクターだったけど、スランプの時や悩んでいる時はやっぱり大人しいんです。でも、真中はずーーーーっと明るかった(笑)。

――現在も解説者として明るく楽しい解説をされていますが、入団当時からそのキャラはまったく変わっていないんですね(笑)。

八重樫 それで、すごく積極的なんです。練習にしても、パッパッパッと手際よく一気に終わらせる。最初は「練習熱心なヤツだな」と思って見ていたんだけど、ずっと見ているうちに、何となくホントのことが見えてきたんですよ。

――「ホントのこと」って何ですか?

八重樫 真中の場合は性格的に、じっくり、長く続けるのが苦手なんだと思うんです。よく言えば短期集中型で密度の濃い練習なんだけど、悪く言えば飽きっぽい(笑)。当時のヤクルトでは池山がそんなタイプでしたね。みんなでワーッと騒ぎながら一気に集中して取り組むタイプ。逆に、古田(敦也)はじっくりと腰を据えて練習に取り組むタイプでした。

――前回までの宮本慎也さんについても「じっくりと腰を据えて練習に取り組むタイプ」と言っていましたね。

八重樫 そうそう。だから、慎也は古田タイプ。真中は池山タイプ。正反対の性格なんですよ。古田はユニフォームを脱いでもずっと野球のことを考えている性格で、池山はユニフォームを脱いだら、野球のことは忘れてワーッと楽しむ性格。それぞれ正反対のタイプでしたね。

――古田さんに関しては、野村克也監督の下でのキャッチャーとして、ずっと野球のことを考えるのも仕方ないというか、当然のことのような気がします。

八重樫 そうですよね。あの頃の古田は本当に大変だったと思うし、偉かったと思いますよ。

【どんなに騒いでいても憎めない愛すべき男】

――先ほどの話に戻りますけど、大学を出たばかりのルーキーが、当時大ベテランだった八重樫さんや、杉浦享さんがいるクラブハウスで大声でずっとしゃべっていて、「うるせえな」って思ったりしなかったんですか?

八重樫 いやいや、そこはアイツの持ち前のキャラクターのおかげですね。ただうるさいだけじゃなくて、真中はいつも笑いながらしゃべっていた。そうすると、「うるせぇな」というよりも、「何がそんなに楽しいんだろ?」って気になるんです。だから腹が立つというよりは、「楽しそうでいいな」という感じなんだよ(笑)。

――真中さんにはこれまで何度もインタビューしていますが、確かにいつも楽しそうにお話してくれます(笑)。

八重樫 それは彼の長所ですよね。クラブハウスでは僕のロッカーと彼のロッカーはかなり離れていたんだけど、僕のところまで楽しさが伝わってくる感じだったから。さすがに僕の近くだったら、そこまで騒いだりはしなかったと思うけど、ある程度離れていたので僕も別に気にならなかった。「楽しそうでうらやましいな」って感じだけでした。

――愛嬌があって、どこか憎めないタイプの人って、必ずどこにでもいますよね。

八重樫 そうだね。真中は典型的なそういうタイプでした。だから、まさか彼がのちに監督を務めるとは思わなかったけど(笑)。

――1993年限りで八重樫さんは現役を引退。その後、ファームの指導者になります。この頃、真中さんとの接点はありましたか?

八重樫 あんまりないんだけど、一度彼が......ヘルニアかな、腰を痛めた時はずっとファームで一緒でした。あ、そういえば、横須賀でベイスターズのファームと試合があった時に真中がいたんです。腰の調子もよくなって動けるようになったんで、「満ちゃん、今日はマンツーマンしようか」と言って、セカンドの位置で彼にノックをしたんです。20分くらいかなぁ。あの時は、気を抜かないで最後までやりましたよ。長くじっくりやるのが苦手なタイプだったけど、僕につかまったので逃げられなかったんだろうね(笑)。

【独自の軸回転から生まれる驚異のスイングスピード】

――当時、センターには不動のレギュラーだった飯田哲也さんがいました。なかなかレギュラー奪取はならなかったけど、当時から打撃センスの評判は高かったですよね。

八重樫 彼の最大の特徴はスイングの速さですね。腕を伸ばして打つんじゃなくて、自分の軸をしっかり保った上でボールをとらえる。それは真中にしかできないバッティングでした。だから、高めのストレートを叩いても打球が切れない。腕で打っていたらファールになるんですが、真中の場合は軸回転で打っているからボールが切れないんです。ライト線のポール際のファールになりそうな当たりもみんなホームランになる。彼にしかできないバッティングですよ。

――腕でとらえたら、打球が切れてファールになるんですか?

八重樫 腕で打つと、バットとボールが当たる時にバットのヘッドがブレちゃうんで、その分ファールになる。でも、バットのヘッドを遅らせながら軸回転でボールをとらえると、ボールがスライスして切れないんです。バットが外から出ても打球がフックになってファールになるんだけど、真中はそれに関しては何も問題がない選手でした。

――真中さんはコマのように軸回転で打つバッターでしたが、ああいう打ち方は天性のものなんですか? 教えてできるものなんですか?

八重樫 絶対に教えてもできません。足の使い方がとっても独特ですから。真中は(左バッターの)軸足である左足のかかとを中心にしてくるっと回るんです。普通はかかとを右足にぶつけるような感じで回転するんですが、真中の場合はその場で回転できる。バットも外回りしない。それは教えてできるものではないし、真中ならではの技術なんです。彼の場合、ボールをぐっと引きつけて体の近くで打つ。そんなイメージがないですか?

――あります、あります。体のすぐ近くで、一瞬でボールをとらえていたイメージです。

八重樫 そうでしょ。体の前でボールをさばくイメージはないですよね。前で打つ時は調子の悪い時なんです。でも、真中はスイングスピードが速いから、体にぶつかるぐらいまでボールを引きつけることができる。あれは真中が高校、大学時代につかんだ、自分の一番のポイントなんでしょうね。

――真中さんの打撃技術エピソードが続きました。次回は、ぜひ人となりについて伺いたいと思います。

八重樫 次回は、飯田とのレギュラー争いを経て、今度は青木宣親との競争になったこととか、ドラフト会議で髙山俊を外したのにガッツポーズをしたことなど、真中の野球人生についてお話ししましょうか。

(第88回につづく>>)

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