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苦しむ高梨沙羅が、シーズン終盤に掴んだ一勝は「本物」なのか?

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2020/04/03 17:00
苦しむ中でシーズン終盤に勝利を掴んだ高梨沙羅 (c)朝日新聞社 © AERA dot. 提供 苦しむ中でシーズン終盤に勝利を掴んだ高梨沙羅 (c)朝日新聞社

 3月12日のW杯第17戦トロンハイム大会が前日の予選を行われた後で中止となり、その後のニジニ・タギル大会とチャイコフスキー大会を含めた残りの試合がキャンセルとなってシーズンを終えた女子ジャンプ。高梨沙羅は帰国後の19日に、以下のコメントを発表した。

「コロナウイルスの影響で残りの試合がすべてキャンセルになったため、今シーズンが終了しました。まだまだ試したいことはありましたが、世界の状況が大変な中で、ギリギリまで試合をさせていただいて幸せに思います。2019-2020も厳しいシーズンでしたが、その中から学んだことを来シーズンにつなげていきたいです。たくさんの応援、ありがとうございました」

 平昌五輪明けの昨季は道具も含めて新しい取り組みを始め、「まっさらな状態から始めたので、何が正解なのか自分でもよくわからないまま飛んでいた」と話していた。そんな状態ながらもW杯24戦中優勝1回、2位4回、3位5回で総合は4位と、平昌五輪優勝のマーレン・ルンビー(ノルウェー)や2位のカタリナ・アルトハウス(ドイツ)、一躍力を発揮し始めてユリアネ・ザイファルト(ドイツ)に食らいつく戦いをしていた。

 そして助走の滑り出しから飛び出しのカンテまでの流れをしっかり作ることを目標にしてシーズンインした今季は、ラージヒルの試合が多くなったことも影響してか、開幕からの3戦は、第2戦で3位になった以外は9位と4位という滑り出しとなった。

 それでも第3戦クリゲンタール大会から第4戦札幌大会まで1カ月間空いた中の練習で、「助走のスタートの切り出し方を変え、それが上手くハマりつつあるかなという感触を持てた」と、札幌大会では飛び出しまではスムーズな流れになっていた。それが第6戦蔵王大会2位という結果になってあらわれたのだ。

 だが「助走は安定してきているので、滑り出しから飛び出しまではまとまってテイクオフでの迷いはなくなってきた」と話していたが、ジャンプ台にしっかりパワーを伝えて力強く飛び出すルンビーやアルトハウスに対抗するために昨季から意識していた取り組みの方は、まだもう少しという状態。「ジャンプはまとまってきたがまだ自信を持って踏み切ることが出来ていないので、空中に出た時もそれが出てしまってスキーが不安定になる。もう少し力強いジャンプになっていけたらいいと思う」と不満の表情を見せていたのだ。

 それもあってその後の1月から2月にかけてのヨーロッパ遠征では、4位が最高で16位に沈む試合もあるなど力をうまく出し切れず、蔵王大会で王手をかけたW杯女子最高の100回目の表彰台もなかなか達成できなかったのだ。

 だが3月に入ってから男子と同じ会場で行われた北欧シリーズでは、悪天候でキャンセルとなったオスロ大会の代替えで行われた9日のリレハンメル大会では、1本目に追い風2・56mの悪条件の中で120・5mを飛んでトップに立つと、2本目は2位となるジャンプでルンビーの追撃を振り切ってシーズン初勝利を挙げ、男子のヤンネ・アホネン(フィンランド)の108回に次ぐ史上2位の100回目の表彰台達成に花を添えた。

 ただこの日は、秒速1・59mから3・54mまでの追い風が吹く悪条件の中の戦いで、ほとんどの選手が空中で安定せず、着地でしっかりテレマークを入れられない悪条件の戦いだった。また1本目4位だったルンビーが追い風が1・64mと弱まった中でヒルサイズ(140m)に迫る139mを飛んだことでゲートが1段下げられ、127・5mに止まった高梨がそのゲートファクター6点のアドバンテージを利して1・5点差で逃げ切れたという幸運もあった。

 翌日の第2戦は、前日とは変わって向かい風の戦いになった。だが札幌大会で「追い風の方が空中でスキーをうまく操れる感じだが、まだ向かい風になると逆にそれが抵抗になってしまい、浮力をうまく捕まえられない」と言う弱点が出てしまったのか、2本とも110m台で8位に止まるという結果になった。

 まだ試したいことがあったという言葉は、久しぶりの勝利で得た感触をしっかり自分のものにしてシーズンを終わりたかったという思いだろう。

 だがシーズン終盤になっての1勝は、高梨自身にとってはモヤモヤしていた気持ちを晴らし、勇気を与えられるものになった。さらに海外のライバル勢にとっても、その存在感を印象付けるものになった。

 今季は表彰台3回での総合4位だっただけに、終盤の1勝は彼女にとって、来季へ向かう大きな力になったはずだ。(文・折山淑美)

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