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五輪サッカーをスタジアムの外で“観戦” お膝元の横浜は「恩恵ゼロ」と嘆き

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2021/07/29 09:16
試合中の日産スタジアム。20人ほどのファンが、おもにゲートの前の階段に座って応援していた(撮影/上田耕司) © AERA dot. 提供 試合中の日産スタジアム。20人ほどのファンが、おもにゲートの前の階段に座って応援していた(撮影/上田耕司)

 東京五輪のサッカー男子日本対フランス戦は、4―0で日本が勝ち、準々決勝に駒を進めた。2大会ぶりのベスト8をかけた注目の戦い。会場となった横浜市の横浜国際総合競技場(日産スタジアム)周辺は本当なら多くの人でにぎわうはずだったが、無観客試合で閑散としていた。28日、試合前後の横浜を歩いた。

*  *  *

 午後10時頃、薄暗い日産スタジアムの外には、階段に座り、応援する人影がまばらにあった。スタジアムの表と裏では総勢30人くらいの人たちが、中から聞こえてくる音だけで「観戦」していた。

 日本代表がゴールを決めると、「ジャパンゴール!」という興奮気味のアナウンスが会場の外まで響いてきた。誰がゴールを決めたのかは全くわからない。音を聞きながら、みなスマートフォンで試合の様子を確認するのだ。

 頑丈そうな鉄のゲートの前のコンクリートの階段に座っていた、男性1人、女性2人の3人組に話しかけた。20代の女性は、ゴールと同時に全身で歓喜のダンスを踊っていた。

「今、前田大然がゴールを決めたんです。3人とも近所に住んでいて、きょうは散歩がてらに来ました」

 試合の前半から来ていたという男女はこう話す。

「会社の同期でたまたま家が近いので2人で来ました。ここにいると、アナウンスとかが聞こえるし、みんなバラバラで観戦しているんだけど、やっぱり人と共有している感がある」

 暗闇に目をこらすと、一人でやって来て記念写真だけ撮って帰って行く人、サッカーのユニフォームを着ているカップル、子どもを連れてきて建物だけ見せている親子など、滞在時間は人それぞれだ。

 神奈川県内から来たという男子大学生4人組は、ドライブがてらに立ち寄ったという。

「聞こえて来るのはアナウンスとホイッスルの音だけです。これで選手の声が聞こえてくればいいけど、さすがに聞こえないですね」

 高校1年生の2人組は、自転車で来たという。

「一生に一回だからきょうは来ました。生の観戦はできないにしても、雰囲気だけは味わいたくて。特別な時間でした」

 千葉県から車で来た3人組は、全員19歳の大学1年生。10年以上サッカーをやっているという。

「テレビの応援だけでは、気持ちが抑え切れなくなって来ました。ここにいるだけで、日本代表と気持ちがつながっている気がするんです。日本代表の強さの秘密はミーハーみたいなことしか言えないけど、久保建英の得点力と守備陣の安定感。遠藤航、酒井宏樹、吉田麻也はもうヤバイ、ガチ凄い」

 試合が終わったのは午後10時半頃。青いユニフォームを着た大会関係者の3人組の女性に話しかけると、「私たちも中に入れなかったので、全然、試合を見てないんです。微妙に音は聞こえてきました。日本が勝ったので嬉しいです」 

 スタジアムの最寄り駅は横浜線の「小机」駅だ。試合前の夕方、駅前の商店街をまわってみると、シャッターが閉まっている店が半分ほど。盛り上がりは感じられない。

「個々のお店のオーナーの高齢化、それに飲食店はコロナで店を閉めているところが多いんです。小机には居酒屋もあるんですが、無観客では試合が終わった後にお客さんも来ない。オリンピックの恩恵はありませんね」 (40代の女性店主)

 小机商店街共同組合の理事長は、「横浜市から送られてきた」という東京オリンピックのポスターを店の外に貼りながらこう話す。

「スタジアムのお膝元なんだけど、オリンピックムードはゼロ。横浜市からオリンピックのポスターを数十枚送ってきたからそれを組合員に配ったくらい。特にイベントもやらないよ」

 一方、横浜市内の繁華街。「まん延防止等重点措置」が出され、緊急事態宣言へも切り替えが検討されるなか、多くの飲食店が試合開始前には店を閉めていた。ホームページで「無観客試合とは言わせない!熱い応援をしよう!」と掲げていたスポーツバーを訪ねてみると、試合開始時には20人の客。次々にサッカー好きの客が集まってきた。

「日本代表が1点を取ると、テキーラが売れて盛り上がりました」(女性店員)

 店には7台のテレビがあり、営業時間中はオリンピック競技を流しっぱなし。5人で応援していた24歳の男性は「この店にはよく来ます。サッカーはみんなで盛り上がるから最高」とはしゃいでいた。

(文/AERA dot.編集部・上田耕司)

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