古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

東京五輪開催訴え仲間に勇気…内村は言葉でもリーダーシップを発揮する希有な選手【番記者コラム】

中日スポーツ のロゴ 中日スポーツ 2022/01/15 13:40
花束を手にする内村航平 © 中日スポーツ 提供 花束を手にする内村航平

 体操界の“絶対王者”が、競技生活に別れを告げた。体操男子で五輪4大会に出場し、個人総合2連覇、世界選手権でも前人未到の6連覇を遂げた内村航平(33)=ジョイカル=が14日、東京都内で引退会見に臨み「ただ『引退するんだな』みたいな感じ。実感は今のところない。実際はよく分かっていない、というのが今一番の心境」などと胸の内を語った。

   ◇   ◇

 体操界の「キング」として君臨した内村の言葉で忘れられないのは2020年11月、東京都内で開催された国際大会閉会式でのスピーチだ。この年の4月、新型コロナウイルス禍で東京五輪が史上初の1年延期に追い込まれ、その後も感染の収束が見込まれず、ちょうど翌年の東京五輪開催に反対論がうずまいていたころだった。

 世間からの非難を念頭に現役アスリートらが言いたいことも言えずに苦しんでいる中、内村は「五輪ができないと思わないで、どうやったらできるかという方向に考えを変えてほしい。どうかできないとは思わないでほしい」と訴えた。東京五輪への逆風を前にして沈黙を余儀なくされるムードが充満していただけに「キング」の発言に救われ、勇気を与えられたオリンピアンは少なくなかったと思う。

 内村はかつて、跳馬の大技「リ・シャオペン」に挑む際の心境を問われ「2015年からやっているんですが跳ぶ時は毎回怖い。この跳躍で自分は死ぬかもしれないって何回か思ったことがあります」と明かしたことがある。五輪の舞台に立つため、死をも覚悟する厳しい鍛錬を続けてきたに違いないアスリート仲間を思うと、ムードにのまれて沈黙を貫くことを許せなかったのだろう。まさに「キング」だからこそできた勇気ある発言。自らの演技だけでなく、自身の言葉でもリーダーシップを発揮する希有(けう)な選手がまた一人、現役生活を終えた。(2016年リオデジャネイロ五輪担当・千葉亨)

中日スポーツの関連リンク

image beaconimage beaconimage beacon